近年の医療において薬物療法の果たす役割は大きく、特に医薬品の適正使用は、治療に影響を与える重要な要因である。このような中、薬剤部では、医薬品の適正使用の推進を目的とし、調剤、製剤、医薬品管理等の基本的な薬剤業務に加え、薬剤管理指導、医薬品情報管理、副作用モニタリング、薬物血中濃度モニタリング等の業務を行ってきた。当センターの基本方針に従い、薬剤部における研究活動は、医薬品の適正使用や薬剤管理指導に加え、循環器用薬等の薬物動態や薬剤疫学に焦点を合わせた研究を中心に行っている。また、最近では、薬物代謝の遺伝子情報に関する研究も行っている。
具体的には以下のテーマに基づいた研究を実施している。
- 抗不整脈薬、免疫抑制剤、抗菌薬の薬物動態に関する研究
- 薬物血中濃度モニタリング(TDM)の臨床的有用性に関する研究
- 循環器疾患患者に対する抗菌薬・抗真菌薬等に関する薬剤疫学研究
- 副作用や相互作用に関する調査研究
- 薬剤業務に関連する調査研究
アミオダロンは難治性不整脈に対し高い有効性が報告されているが、副作用の発現頻度が高く、その副作用は致命的であることが多い。そのため、検査値や臨床症状、血中薬物濃度等を指標にTherapeutic Drug Monitoringが行われる。近年、血中トリグリセリド濃度とアミオダロン濃度は、有意な正の相関を示すことが報告されたが、この関連性がアミオダロンの有効性や安全性に与える影響は十分に調査されていない。そこで、高トリグリセリド血症患者2名を対象に、アミオダロンの有効性および安全性に関して調査を行った。既報と同様に、血中トリグリセリド濃度とアミオダロン濃度は、有意な正の相関を示した。一方、血中トリグリセリド濃度の変動に伴い、アミオダロン濃度も変動したが、この治療域内の血中濃度の変動は、アミオダロンの有効性や安全性に影響しないことが示唆された。したがって、高トリグリセリド血症患者では、アミオダロン濃度が変動することを考慮した上で、検査値や臨床症状に注意を払い、アミオダロンのTherapeutic Drug Monitoringを行う必要があると考えられた。