現代医療では、疾患の診断、治療方針の決定、治療効果判定において画像診断の役割は大きい。放射線部では、高度な循環器病画像診断と低侵襲治療を目指し、放射線機器を用いた臨床と研究開発を行っている。また、心臓血管内科、心臓血管外科、脳内科、脳血管外科をはじめとした診療科と連携し、最先端の診断、治療の開発と臨床評価を行っている。
(心臓:2,499件/冠動脈:1,611件/脳灌流:710件/脳血管3D:709件)
CT部門においては、最適なタイミングで迅速な画像や検査結果の提供を目指してCT検査の生産性を高めるために、人工知能(AI)を含めた新技術の実臨床への応用に関して、放射線科医と診療放射線技師のチームで実証実験を行っている。まず、深層学習を用いた画像処理支援システムの自動計測の精度および時間短縮効果を国際学会で報告した。さらに通常の胸部CTの読影補助AIの計測結果の精度検証に加え、その計測結果を用いた冠動脈狭窄の有無の推定により冠動脈CTの検査前確率の上昇の可能性は国内学会で報告している。撮影補助システムであるCT機器に付属の3Dカメラの特性検証と頭部CTでのリアルワールドでの応用に関する報告も行っている。
さらに共同研究で開発した画像処理AIによるノイズ低減法により、実際の臨床画像で冠動脈CTや心筋遅延造影CTの精度向上は海外学会で報告し、さらに複数本の論文発表を行っている。
多機関共同研究として、医師主導の冠動脈CT撮影法の前向き介入試験に参加し、臨床情報・画像収集をおこなった。
(心臓:1,218件/冠動脈:233件/脳灌流:738件/脳血管3D:13,297件)
MRI部門においては、高分解能撮像法の最適化の他、ディープラーニングを用いた解析法を心筋評価に応用し、画質向上のための撮像法最適化、病変検出能の向上についての研究を行い、国内、国際学会等での報告及び誌上公表を行い、臨床応用にむけて調整を行った。
希少疾患の診断及び治療経過評価のためのMRスペクトロスコピーを用いた基礎検討および臨床例での評価を行い、国際学会にて報告した。心筋の定量評価法に対する体動補正による自由呼吸下での撮像の有用性に関して検討を行い、国際学会で報告を行った。
冠動脈プラークイメージングに関しては、多施設共同研究のための標準化プロトコル案を作成・提案し、一次予防における有用性について症例の蓄積を継続している。
さらに冠動脈プラークの画質に対する心拍等患者要因の影響を調べ、撮像法最適化の検討も行っている。
脳血管、腹部血管領域では非造影MRパフュージョンの撮影最適化や解析法の検討、短時間での脳血管高分解能撮像を行い、脳血管疾患、てんかんの評価、腎臓の灌流評価に積極的な応用を行った。頸動脈の形態、組織同時撮像法を考案し、国内、国際学会で報告した。
基礎的な検討としては、心臓3D動画撮像、4D血流画像の撮像条件設定に関する検討、圧縮センシングを用いた拡散強調画像の従来法との比較、心筋テンソル画像、MRスペクトロスコピーによるプラーク評価に新たな心筋Mapping技術、Ultrashort echo time MRA、超時短Cineなど関する実験を行い、国内学会、国際学会で研究報告した。
多施設共同研究として、MRIの検査時間の短縮を目的とした機械学習手法による超解像技術の応用に関する研究結果は基礎的な内容に関しては、論文報告をおこない、次のステップとしてリアルワールドでの実証実験を開始している。
(心臓PET(18F-FDG):203件/血管炎PET(18F-FDG): 59件/
心臓PET(13N-アンモニア):207件/脳PET(15O-GAS):218件/
地域連携核医学検査:788件)
RI部門では、地域に根ざした医療を目指し画像診断地域連携の強化を継続している。検査室直通で核医学検査の他院からの依頼を受け付け、翌診療日には検査結果を返送する体制を整えた。地域医療を担う核医学検査室として周辺の医療施設と定期的に交流し、web研究会などを通じて核医学検査の有用性や新たな知見などの情報発信を行った。また企業との定期的なミーティングを通して撮像技術向上や北米放射線学会への研究課題提出を行っている。
SPECT検査では、診断精度向上に関わる研究や新たな撮像技術の考案を積極的に行っている。心筋血流SPECTでは下壁偽陽性と左室容積との関係について研究し、左室容積が大きい症例では下壁偽陽性が生じやすいことを国内学会で発表した。また心臓の大きさだけでなく、心臓の位置と周辺臓器との関係性にも着目し、左室の容積や心臓と横隔膜(または消化管)との接地角度を自由に変更できるFlexible Phantomの作成と実用化を目指している。近年件数が急増している心アミロイドーシスの診断におけるPYPシンチグラフィでは、核種投与後から撮像までの待機時間を従来の1時間または3時間より短縮するための撮像技術の考案および超早期像における99mTc‐PYP集積の評価法の開発を企業と連携して行っている。
PET検査では新たに半導体PET/CT装置1台が導入され、より低被ばくかつ短時間での撮像が可能となった。感度と分解能の向上に伴い腫瘍18F-FDG PETでは微小病変の検出が期待され、企業と協力して直径2mmの微小球ファントムを作成し至適撮像条件の検証を行った(次年度に国内学会で発表予定)。その他、半導体PET/CT装置で撮像した心筋血流13N-アンモニア PETは心筋血流量の定量評価だけでなく、左室のストレイン解析や右室機能の評価にも応用できる可能性があり、他施設と共同で右室解析ソフトウェアの臨床研究を行っている。また当センターで開発された世界初の迅速O15ガスを用いた腎機能イメージングを目指して腎疾患患者の患者登録を開始している。
(胸部大動脈ステントグラフト内挿術:81件/腹部大動脈ステントグラフト内挿術:77件/
バルーン肺動脈形成術:183件/肺動静脈瘻塞栓術:3件/経皮的血管形成術:7件/
経動脈的止血術:24 件(緊急:12件))
カテーテル部門においては、大動脈瘤、大動脈解離に対するステントグラフト治療についての短期的技術的成功率の向上に関わる研究および長期成績向上に関わる治療技術の考案、治療成績向上につながる画像診断についての研究、臨床を行っている。また、血管外科と共同で慢性大動脈解離について「大動脈解離術後の偽腔拡大に対する血管内治療の中長期成績と安全性に関する臨床研究」が進行中である。
また、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する、肺動脈バルーン拡張術および治療に効果的な画像診断についても研究、臨床を引き続き行っている。企業と連携しBPA後の治療予後、再治療適応基準を確立するために人工知能を用いた画像データ遡及的解析についても進行している。周産期医療における産褥期危機的出血をはじめとする緊急止血術にも積極的に対応している。
塞栓技術や血管造影技術の向上のため、基礎的研究に取り組み、バスキュラープラグを用いた塞栓効率についての研究結果を国内学会で報告した。また、血管造影検査における新たな定量的評価法についての研究成果を国内学会で報告予定である。