病理部 病理診断科
研究活動の概要

病理部門は、循環器疾患の診療に必要な組織病理診断情報を臨床に提供するために、病理解剖と外科手術検体や心筋などの生検材料の病理組織診断を主要な業務としている。これらの検体を活用した広い分野にわたる臨床研究を他科と協力して行っており、循環器系および病理系、一部呼吸器系の学会および学術誌に発表している。病理解剖は今日、世界的にその数は著明に減少している。NCVCにおいても剖検数は10数年前と比べると激減してきた。2022年1月~12月は剖検率が13.6%(年間総数32体)と少ないながらも、その件数は全国では常に上位にランクされている。組織診断件数は数年前から増加傾向にあり、特に心筋生検の数は2022年の1年間で590件と増加傾向を維持している。
また、心・血管を専門とする病理部門は全国的に少なく、この特殊性を生かすため、これまで随時全国の医療機関から循環器系疾患の病理診断のコンサルテーションを受け入れてきた。2022年の1年間で502件と例年に比し著増している。外部施設からの病理検体の作製依頼および診断の有料のコンサルテーションの受け入れ体制を整え、ホームページに公開し、現在30施設以上と契約している。さらに、2020年4月から引き続きアミロイドーシスに関する調査研究に参加しており、心筋生検におけるアミロイド診断についてのコンサルテーション体制を構築している。病理解剖に関しては近隣施設からの病理解剖を受け入れるようにした。

研究については病理部門のスタッフの専門性を生かしつつ、他科と多数の共同研究を行っている。
現在進行中の主な研究テーマは、

  1. 慢性心筋炎の診断基準確立と予後予測因子の探索
  2. 肺高血圧症の病理
  3. 中性脂肪蓄積性心筋血管症の検討
  4. 抗ガン剤投与後の心筋障害に関する病理学的検討
  5. 血栓症の病理
  6. 粥状動脈硬化症の病理

などである。また、他科のレジデントの学術発表や論文の指導も行っている。定期的な心筋生検や病理解剖(全剖検例でCPCを施行)のカンファレンスでは臨床科とのディスカッションが活発に行われている。

その他、NCVCバイオバンク保存のため、病理部門はバイオバンクと協力し病理解剖、周産期検体、移植摘出心などの組織の収集保存を行っている。