心臓外科
研究活動の概要

心臓外科は、主として虚血性心疾患、弁膜疾患、不整脈外科、重症心不全外科などの成人後天性心疾患を担当している。また、経カテーテル的弁膜症手術や小開胸による心臓手術に代表される低侵襲手術を開発してきた。末期的心不全に対する外科治療や重症弁膜症については移植部や循環器内科と連携して「ハートチーム」として治療・研究を行っている。さらに、外科治療成績の解析や新しい術式開発に関連した臨床研究を行うとともに、循環器内科、移植部、麻酔科、当センター研究所の各部門などと連携し、トランスレーショナル・リサーチに積極的に取り組んでいる。本邦での様々な治験も積極的に受託している。

具体的なテーマとしては、以下のテーマの研究を行った。

  1. 虚血性心疾患
    • 冠動脈バイパス術手術の遠隔成績と短期及び長期にわたるリスク因子の抽出
    • 急性心筋梗塞機械的合併症に対するアプローチの検討
  2. 心臓弁膜症
    • ロボット補助下低侵襲手術の推進と均てん化に関する検討
    • 心房性僧帽弁閉鎖不全に対する僧帽弁手術の成績の検討
    • 経カテーテル的弁膜症手術における新規アプローチの開発、リスク解析
  3. 心不全外科
    • 急性心不全に対する体外設置型補助人工心臓の新規アプローチの開発
    • 植込み型補助人工心臓の成績の検討
    • 心臓移植の長期遠隔成績に与える因子の抽出
  4. 不整脈外科
    • メイズ手術遠隔成績の検討
    • 右小開胸によるメイズ手術の成績の検討
  5. 治験・特定臨床研究
    • 癒着防止剤BAX602医師主導治験を完了した
    • 羊膜間葉系幹細胞を用いた心臓再生医療に関する前臨床研究
2022年の主な研究成果
  1. 虚血性心疾患
    • 20年前に実施されたオフポンプ vs オンポンプ冠動脈バイパス術の多施設共同ランダム化比較試験の遠隔成績を報告した。
    • 両側内胸動脈使用が、片側内胸動脈と比較して、遠隔期生存率を向上させることを示した。
    • 経カテーテル大動脈弁置換術と同時に施行するオフポンプ冠動脈バイパス術の成績を示した。
  2. 心臓弁膜症
    • 経上行大動脈的経カテーテル大動脈弁置換術の成績を示した。
    • 心房性僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁手術の中期成績を示した。
    • Rapid Deployment弁を用いた大動脈弁置換術の短期成績を報告した。
    • 僧帽弁閉鎖不全に対するロボット補助下僧帽弁形成術の有用性を示した。
  3. 心不全外科
    • 植込み型補助人工心臓装着において、Central SupportからのBridgeがリスクになることを示した。
    • HeartMate 3植込み型補助人工心臓が、小体型患者にも可能であることを示した。
    • 末期拡張型心筋症における免疫担当細胞の分布を検証した。
  4. その他
    • 収縮性心膜炎に対する心膜剥皮術の成績を検討した。