不整脈科
研究活動の概要

不整脈科では、種々の頻脈性・致死性不整脈の病態及び機序の解明、並びに新たな診断・治療法の開発に加え、近年増加している心房細動に関連した抗凝固療法や新しいアブレーション法を臨床研究のテーマとし難治性の不整脈疾患において種々の研究活動を行っている。

隠れた心房細動を見つけ出すAIを用いた独自の心電図診断装置の開発を、オープンイノベーションセンター(OIC)にてJSR社との共同研究で行い、成果を2022年日本循環器学会で発表した。

心臓サルコイドーシスに関して、全国調査の結果を用い、日本独自の臨床診断群の妥当性や、心臓再同期療法効果の性差による違いについて英文論文の報告を行った。さらに全国調査をJACSレジストリとして継続している。

遺伝性不整脈疾患に関しては遺伝性不整脈外来創設による効果で、昨年も500名近い遺伝子診断紹介を受け、次世代シーケンサーを使った診断を随時行っている。これらの結果を元にQT延長症候群、Brugada症候群、カテコラミン依存性多形性心室頻拍などの治療や予後に関して種々の国際学会・英文論文等でその成果を報告した。

ビッグデータを使った研究として、今年も循環器疾患診療実態調査(JROAD-DPC)データを用い、わが国における皮下植込み型除細動器(S-ICD)植込み現状に関する報告を英文論文で発表した。また、吹田コホート研究のデータを用い、心房細動の新規発生に関する新たな心電図指標や生活習慣について報告した。さらに前向き介入研究を積極的に推し進め、心房細動に対するカテーテルアブレーションの有効性・安全性に関して、持続性心房細動、低心機能症例、無症状例をそれぞれ対象とした多施設共同前向き研究や、アブレーション法の違いによる周術期脳梗塞発生に関する研究を継続している。

デバイス(植込み型除細動器、心室再同期機能付き除細動器、ペースメーカ)治療としては、日本代表として心臓再同期治療に関する国際共同治験(AdaptResponse試験)、アジアを対象としたMidQ Response試験を継続している。
皮下植込み型除細動器(S-ICD)、リードレスペースメーカ、刺激伝導系ペーシング法が臨床に導入され負担の少ない治療が可能となってきており、従来治療と比較したこれらの治療の経済効果や有用性について英文論文に報告、さらに新しいアルゴリズムを利用した抗頻拍ペーシング(iATP)の効果について報告した。
デバイス遠隔モニタリングは800名を超える除細動器患者を含んで2400名以上に行い、デバイス植込み数とともに単施設の遠隔モニタリング数としては日本最大である。当科だけで年間1700名以上の入院患者を受け入れ診断・治療を行っている。

不整脈心電学会と共同研究を進め、アブレーション全例登録事業(J-AB)、リード抜去全例登録事業(J-LEX)、左心耳閉鎖デバイスの全例登録事業(J-LAAO)を引き続いて行っている。J-ABは月間7000例を超える登録が安定して行われており、登録数は35万件に達し世界一となっている。

今後もあらゆる方面から難治性心不全や不整脈の治療・管理・研究に取り組む予定である。

2022年の主な研究成果
  • JROAD-DPCデータを用いた、わが国の皮下植込み型除細動器(S-ICD)の実際について報告
  • カテコラミン依存性多形性心室頻拍の遺伝子異常と予後との関連報告
  • 新しいアルゴリズムを利用した抗頻拍ペーシング(iATP)の臨床効果について報告
  • 国際多施設共同治験(日本PI)として、Adapt- Response試験、MidQ Response試験に参加中
  • 不整脈心電学会との共同研究でアブレーション全例登録レジストリー事業(J-AB)、リード抜去全例登録事業(J-LEX)を継続、日本循環器学会との共同研究で左心耳閉鎖デバイス全例登録事業(J-LAAO)の継続
  • 持続性、低心機能例、無症候例に対する心房細動カテーテルアブレーションの有効性をみる多施設前向き研究(CRRF-PeAF試験、CRABL-HF試験、ASYM試験)、安全性をみる前向き研究(Embo試験)の開始
  • 心臓再同期療法と刺激伝導系ペーシング法の有用性の比較検討(His-CRT研究)や、新しいアルゴリズムをもった心臓再同期療法の効果に関する研究(PPAP-CRT試験)の継続