研究推進支援部
支援業務概要・研究活動の概要

【支援業務概要】

    動物実験管理室

  • 5月24日および25日に、一般財団法人日本医薬情報センターによる動物実験実施施設外部認証調査を受け、適合施設としての評価を受けた。
  • 新規動物実験実施者教育訓練講習会を17回開催した。
  • 実験管理委員会事務業務を遂行した。また、研究者からの相談内容に関する資料を委員長の指示により作成した。
  • 分子生物学部発生工学研究室の全面協力のもと、遺伝子組み換え動物の作成で研究支援を実施した。
  • 研究情報基盤管理室

  • 情報統括部・医療情報部と協力し、センターにおける研究開発や診療業務に不可欠な情報基盤の整備および情報システム・機器の仕様策定・導入開発・運用管理を行った。
  • 情報統括部・医療情報部と協力し、NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)による情報セキュリティ監査に対応し、問題点の洗い出しやその対策を行った。また、それに伴い、センターの情報セキュリティポリシーの改定や手順書の整備を行った。
  • 情報統括部・医療情報部と協力し、種々の情報セキュリティインシデント発生時には、厚生労働省やNISCと連携しながら速やかに対応できる体制(CSIRT)を整備し活動している。
  • 情報統括部・医療情報部と協力し、職員の情報セキュリティ教育のためのコンテンツの作成、講習会の開催などを行った。
  • 論文関連データを適切なアクセス権限の下で安全に中央管理し、保管されたデータに対するアクセスログを収集することで、誰がいつどのデータに何をしたかを確認できるシステムを研究者および研究所のために開発し、2019年度から運用開始している。2022年1月現在、254件の論文および関連するデータが保管されている。
  • 医療情報の抽出・匿名化・セキュアな管理・適切な解析方法などの技術的なコンサルテーションを行い、医療情報関連の様々な研究に関する研究計画立案や研究実施の支援を行った。
  • 研究所における研究ノートの電子化について検討を行い、できるだけ研究者の負担にならない運用をコンサルテーションした。
  • 脂質基準分析室

  • 年間を通して全国の臨床検査室からの標準化依頼(44件)及び試薬メーカーから値付けの依頼があった40検体(管理血清)の処理と、臨床検査会社2社および試薬メーカー5社に対する中性脂肪(TG)測定試薬の認証試験を実施した。
  • 研究企画調整室

  • 国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)横断的研究課題として、6NC連携による医療政策研究等を目的としたNDB研究体制構築を行っている。将来的には、医療政策研究を継続的に行う在り方について提言を行う予定である。
  • 「脳卒中・循環器病対策基本法」に基づく循環器病の診療情報収集・活用のための登録に関して、循環器病疾患登録試行システム仕様書策定や項目定義書策定等を行った。
  • 研究開発の推進に必要となる公的研究資金等の外部研究資金、特に国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(AMED)からの外部資金獲得増に向けて、研究計画書等の作成支援、研究班構築調整、臨床研究の推進等を行った。
  • 研究安全管理室

  • 有害薬品とアイソトープ(RI)を用いた研究活動を支援するために、研究者に対して法令に基づいた教育訓練と安全管理業務、さらには分析機器の保守点検等を通して、研究の質の向上に努めた。
  • 「放射性同位元素等の規制に関する法律」に基づき、病院放射線部と連携し登録検査機関による定期検査・定期確認を令和4年3月3日に受けた。
  • 「電離放射線障害防止規則」に基づき『エックス線装置使用の手引き』を新たに作成し、様式を整えた。
  • 先端医療技術開発部と連携して7T-MRIの利活用を推進している。
  • RI管理区域内の施設有効利用のため、以前より設置の7T-MRI、大動物CTの他、今年度より先端医療技術開発部の多光子顕微鏡、血管生理学部のノトバイオート実験設備の設置に協力している。
  • RI使用者とnon-RI使用者とがより安全にRI管理区域内の施設・設備を利用出来るよう従来の『RI利用の手引き』を大幅に改訂し、新たに『RI実験施設利用の手引き』とした。
  • 「消防法」に基づき整えた様式を用い、防火区画単位で貯蔵量を指定数量内にて管理している。

【研究概要】

  • 研究企画調整室では、主に心不全における病態生理の解明及びその病態生理に基づいた治療に関する研究を行っている。病態生理の解明には、複雑系の機能解析に必要な工学的手法を用い、また、治療には独自に開発したデバイスの臨床応用を目指した基礎研究を行っている。
  • 研究情報基盤管理室では、情報統括部・医療情報部と協力して、様々な医療情報システムのデータを一元的に管理するデータベース(統合DB)を開発し、複数のシステムに分散している情報を横断的に検索・抽出できる環境を整備した。試行的に臨床研究などで必要な情報の抽出を行った結果、作業の効率化が確認できた。一方で 、データの収集漏れやデータ形式の不整合、膨大な統合DBから必要な情報を見つけることが困難な場合なども確認されたため、その都度、データの追加・修正や分かりやすいデータ定義書の整備を行うことで、統合DBの精度や利便性の向上を図った。
  • 病院情報管理システムにおける汎用的な入力ツールであるダイナミックテンプレート(DT)から入力された種々の膨大な診療情報を簡便に検索・抽出し2次利用可能にするために、約600個のDTのデータマート化を行い自動的に統合DBに取り込み保管できるようにした。
  • 循環器を中心とした一生涯を通した生理現象と病態解明から、疾患治療および予防と健康寿命延長を目指して研究を進めている。「生体内のエネルギー代謝動態(特にATP動態)が疾患メカニズムやその治療法評価のベンチマークになり得る」という仮説の下に生理現象・病態メカニズム・治療薬投与時のATP動態計測とメカニズム解明を行っている。これまでに、マウスおよびラット生体内の細胞レベルでATP代謝動態を正確に計測し、操作する研究手法開発を行っている。これにより、特に腎臓が急性腎傷害から慢性腎不全に移行する過程を抑制する事に成功しつつある。
2021年の主な研究成果
  • 6NC共同で国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)の横断的研究推進費課題として政策提言機能について研究を実施し、6NC共通データベースとしてのNDB利用は承認されなかったが、各NCの所掌疾患に関しては利用が認められ、今後解析を開始する。
  • 統合DBにおけるデータの追加・修正や分かりやすいデータ定義書の整備を継続的に行うことで、統合DBの精度や利便性の向上を図った。
  • 私達が開発した細胞質内ATP動態をマウス生体内で細胞レベルかつ定量的に計測できる技術を利用して、心筋梗塞時・各種肝障害誘導薬物投与時における肝臓のATP動態と肝障害マーカーおよび組織解析を行うことでATP変動が臓器機能変容の初期マーカーとして有用である可能性を見出した。
  • 腎臓の急性腎傷害から慢性腎不全へ至る過程をATP操作により制御できる可能性を見出し、そのメカニズムを解明している。
  • 単離成熟心筋細胞が収縮するときに面積変化とATP動態を計測することで心筋細胞毎のエネルギー効率を計測できる技術を利用して、エネルギー効率を向上させる薬剤スクリーニングを行っている。
  • アルツハイマー病モデルマウス(J20)では、超初期(2ヶ月齢)に脳海馬のCA1、CA3、DG領域にてATP量が低下することと神経発火量が増加する事象を利用して、様々な物質の認知症に対する効果を検証し、複数の物質で効果を確認した。また、これらの物質は行動試験でも有意に行動異常を抑制することを見出した。
研究業績
  1. He J, Yamamoto M, Sumiyama K, Konagaya Y, Terai K, Matsuda M, Sato S. Two-photon AMPK and ATP imaging reveals the bias between rods and cones in glycolysis utility. FASEB Journal. 35, e21880, 2021.
  2. Kawada T, Yamamoto H, Uemura K, Hayama Y, Nishikawa T, Zheng C, Li MH, Miyamoto T, Sugimachi M. Ivabradine augments high-frequency dynamic gain of the heart rate response to low- and moderate-intensity vagal nerve stimulation under β-blockade. American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology. 320, H2201-H2210, 2021.
  3. Nishikawa T, Aiba T, Ueda N, Nakajima K, Yamada-Inoue Y, Kamakura T, Wada M, Yamagata K, Ishibashi K, Tateishi E, Kiso K, Ikeda Y, Ishibashi-Ueda H, Miyamoto K, Nagase S, Noda T, Kusano K. Unusual Overlapping Cardiac Sarcoidosis and Long-QT Type 3 Induced Ventricular Fibrillation. Internal Medicine. 60, 85-89, 2021.
  4. Kawada T, Nishikawa T, Suehara S, Sawada S, Tanaka T, Uenohara M, Yamamoto H, Sugimachi M. Open-loop analysis on sympathetically mediated arterial pressure and urine output responses in spontaneously hypertensive rats: effect of renal denervation. Journal of Physiological Sciences. 71, 13, 2021.
  5. Kobayashi K, Iwai M, Ono Y, Sun W, Sugimachi M, Kusano K, Shishido T. Magnetocardiography Current Source Estimation using Multiple Spatial Filters. Journal of the Magnetics Society of Japan. 45, 131-135, 2021.
  6. Ohnishi Y, Yamamoto M, Sugiura Y, Setoyama D, Kishima H. Rostro-caudal different energy metabolism leading to differences in degeneration in spinal cord injury. Brain Communications. 3, fcab058, 2021.
  7. Nishikawa K, Seno S, Yoshihara T, Narazaki A, Sugiura Y, Shimizu R, Kikuta J, Sakaguchi R, Suzuki N, Takeda N, Semba H, Yamamoto M, Okuzaki D, Motooka D, Kobayashi Y, Suematsu M, Koseki H, Matsuda H, Yamamoto M, Tobita S, Mori Y, Ishii M. Osteoclasts adapt to physioxia perturbation through DNA demethylation. EMBO Reports. 22, e53035, 2021.
  8. Kawada T, Nishikawa T, Hayama Y, Li M, Zheng C, Uemura K, Saku K, Miyamoto T, Sugimachi M. Quantitative assessment of the central versus peripheral effect of intravenous clonidine using baroreflex equilibrium diagrams. The Journal of Physiological Sciences. 31, 39, 2021.
  9. Hiraoka A, Saku K, Nishikawa T, Sunagawa K. A case report of unexpected right-to-left shunt under mechanical support for post-infarction ventricular septal defect: evaluation with haemodynamic simulator. European Heart Journal - Case Reports. 5, ytab209, 2021.