産学連携本部
研究活動の概要
革新的な医療技術の実現と普及には企業・大学等との連携が必須なので、産学連携本部では最先端の医療に直結した臨床ニーズと逐次アップデートされる研究成果にもとづく技術シーズをさらに展開し、企業・大学等とのアライアンスを活かしつつ次世代の医療機器、医薬品、ヘルスケア事業の創出へとつなげることを目指している。臨床現場から得られた課題解決策や、研究活動から得られた成果を知的財産として適正に保護・管理するとともに、新しい医療・ヘルスケアとして社会に適切に還元されるよう事業化を促し、循環器病の究明と制圧に資する産学連携を進めている。
産学連携本部は事業化推進室と知財戦略室の2室から構成されている。事業化推進室では、産学連携を企画・構築し、新たな研究プラットフォームを開拓しつつ事業化を推進することで、研究成果の社会への還元を図っている。また、知財戦略室では、研究成果や技術成果等の知的資産を適正に知的財産権として保護・管理するとともに、効果的・効率的な運用を図っている。具体的には導出戦略を立案し、技術移転の促進、共同研究・ライセンス契約等のアライアンスを実行している。
当研究センターの健都への移転とともに開設されたオープンイノベーションラボ(OIL)では、企業・大学等との一つ屋根の下での共同研究拠点として、多彩なプロジェクトが推進されている。さらに、産学官の交流の場となるサイエンスカフェでは、様々なイベントの企画・開催によりオープンイノベーションの概念に基づき新たな研究の探索・共同研究の推進に注力している。
2020年の主な研究成果
-産学連携の成果として-
- OILを研究拠点とする企業等は2020年末までに17社に増え、OILの占有率は82%に至っている。国循の医師・研究者らと密接な連携を伴う研究拠点化の形成が促進されている。
- 当研究センターが代表機関として15参画機関と共同で応募した産学官民連携の大型プロジェクトである、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム(バイオ分野・本格型)」(10年:総額約31億円)に採択された。本プログラムでは、産学連携本部が支援組織の中心を担う形で国循のある北大阪健康医療都市(健都)エリアを拠点とした産学共創システムを立ち上げる。産官学民の多数の連携からなる研究成果を創出し住民に還元する、未来型総合医療産業都市拠点づくりに向けて稼働し始めた。
- サイエンスカフェを拠点として、優れた技術、研究シーズや現場でのニーズ等をお互いに紹介し合うことで、新たな連携や共同研究につながる出逢い、マッチング創出の機会を設けるなど交流促進を図るため、オンラインも活用した様々なイベントを2020年は計6件開催した。サイエンスカフェクラブには2020年末までに178名に登録会員数も増え、交流の輪が拡大している。
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)との連携協定のもと、同機構の審査官らに当研究センターでの臨床・非臨床試験体験型の教育研修を実施した。また、同機構から講師を招き、企業人材への医療機器の研究開発と承認プロセスに関するセミナーを実施した。これらによりPMDAとの人材交流・人材育成が図られるとともに、医療機器等の薬事に関する規制と産学連携の推進との総合的な連携が図られた。
- みずほ銀行との連携・協力の推進に関する協定書の締結をはじめとして、ビジネスマッチングによる共同研究の推進、研究成果の事業化に向けた経営支援を通じ、医療や健康づくりに関わる研究、人材育成、地域連携等を進めている。
- 発明ヒアリング、発明評価、出願対応、中間対応、国際出願戦略、期限管理、導出活動までの全てを産学連携本部が効果的かつ効率的にシームレスに担う体制を構築した。発明者の一存によることなく発明を客観的な視点より評価し、導出活動・出口を見据えた知財出願戦略を構築する体制を整えた。特許出願を行うだけでなく、活用・実用化を見据えて、マッチング・共同研究立案・研究費申請を企画するに至っている。
- 医療従事者のアイデアを特許として保護したうえで開発着手から半年という短期間で製品化が見込まれる高機能マスク、意匠を確保したうえで治験の必要症例数を含めたガイドライン策定など総合的な製品化が推進され医師主導治験でも高評が得られているBridge to Decisionの超小型補助循環デバイス・ポータブルECMOなどの開発に至った。すなわち、知財戦略室と事業化推進室とが連動して機能することで、研究開発の現場と密接に連携しながら知財保護を行うことができ、効果的な知的財産の活用に寄与している。また、両室に跨って活動できる人材を本部長直下に配置することで、上記の機能を高めた。
- 医療研究連携推進本部の知財・法務課とも連携し、6NCの知財・法務の実務担当者と定期的に意見交換できる運用体制を構築した。これまで他NCとで知財等に関する情報交換や知見の共有が少なかったが、医療研究連携推進本部の設置に伴う他NCとの連携により今後の知財等の活用強化が期待できる。
- 日露経済協力に基づき「かるしおレシピ」のクックブックレットのディストリビューションや病院食への試験導入など海外展開も進めている。また、「かるしお」の認定企業とともに、中国での認定商品の販売に至った。これに伴い商標の海外登録も行い権利保護も図られている。減塩のノウハウという知的資産を、商標権(認定マーク)という形でグローバルに保護し、当該知的財産権を企業に使用許諾することで収益化し、国循の減塩事業の新たな活動経費とする好循環を実現している。
研究業績
- 浅野 滋啓 他(共著). 医薬・バイオ分野のライセンス契約実務と交渉のポイント. 共同研究開発の進め方・契約のポイント. 495-507, 2020.