教育推進部・トレーニングセンター
教育推進部における研究活動の概要

平成29年に新しく設置された教育推進部では、国立循環器病研究センターにおける病院、オープンイノベーションーションセンター(OIC)、研究所の枠を超えた、教育および研究活動を推進する役割を担っている。

主な活動としては、

  • 1) 臨床研究セミナー開催による臨床研究教育の推進
  • 2) 特定臨床研究課題の管理と病院長への報告
  • 3) 看護師による特定行為研修の管理と研修活動の実践

などを担当している。

  1. 「臨床研究中核病院」の認定取得に向けた臨床研究セミナーの開催
  2. 医療法に基づく臨床研究中核病院は、日本発の革新的医薬品や医療機器、医療技術の開発に必要な国際水準の臨床研究や医師主導治験を担う病院として位置づけられており、認定には介入研究を中心とした臨床研究、その論文数、診療科数・病床数・安全管理体制といった施設要件などの厳しい条件がある。国立循環器病研究センターにおいても、認定取得を目指して、職員が一丸となって取り組んできた。
    本セミナーは、臨床研究中核病院の認定取得の基礎となるものであり、医師全員、臨床研究に関係する看護師、薬剤師、検査技師、臨床工学士、臨床研究に関わる予定の職員、事務職員を対象として開催している。6ヶ月間に18回の開催を1クールとして、年2クール36回のセミナーを開催している。勤務の関係で聴講できなかった職員向けに、e-learningでの受講も可能としている。
    臨床研究を主導する臨床研究者(PI)は、本臨床研究セミナーの修了書が必要となる可能性があるため、全てを受講(もしくはe-learning受講)した職員には、「臨床研究セミナー修了書」を授与することとしている。

  3. 特定臨床研究課題の管理と病院長への報告
  4. 新しい臨床研究法(平成29年4月交付)では、1) 薬機法における未承認・適応外の医薬品等の臨床研究、および、2) 製薬企業等から資金提供を受けて実施される当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究、は全て特定臨床研究の対象となり、様々な基準遵守義務が定められている。
    教育推進部では、特定臨床研究として厚生労働省が認定した「認定倫理審査委員会」において承認が得られた各研究課題を、臨床研究開発部と一緒に内容を確認し、管理するとともに、病院長への報告作業を担っている。

トレーニングセンターにおける教育活動の概要
  1. 「日本で唯一の循環器医療に特化したトレーニングセンター」として
  2. 近年の医療技術の進歩により、数多くの重症患者を救命できるようになったが、医療技術が進めば進むほど、また医療機器や手技が複雑になればなるほど、基礎的な知識とそれに基づいた訓練の重要性が増す。同時に、高度な医療機器を使いこなすだけの高いレベルの知識と応用力も必要になる。とりわけ的確な診断と迅速な治療が求められる循環器診療では、これらの基礎と応用のバランスは、より良い人材育成とより良い医療を実践するための不可欠な両輪となる。新しい国立循環器病研究センターOICトレーニングセンターは、循環器診療の修練に特化した、日本で唯一のトレーニングセンターである。

    新しくなったOICトレーニングセンターでは、このコンセプトを基に、基礎的な医療行為の修練から、最新の医療機器を使った検査や医療行為のシミュレーションができるよう、新たに様々な機器を取り備えて、多職種にわたる医療従事者のニーズに応える努力を継続して行っている。
    また各種民間企業の方々にも、有効な医療現場の体験および機器開発のためのシミュレーションが可能なように配慮し、広く門戸を開いている。これらの民間企業への広報活動は、産学連携本部とともに実施している。さらには、OICの一員として、医療機器開発にも取り組んでいる。

  3. トレーニングセンターの内容
  4. OICトレーニングセンターでは、新人看護師の教育研修、検査技師および臨床工学士のトレーニング、看護師の特定行為研修のための各種行為のシミュレーション、医師のための新しい医療機器のシミュレーション、医療機器開発をめざす企業の方々のための各種講習会などが開催可能である。
    医療関係者への教育を通じて、医療レベルの向上、医療均てん化の実現、新しい医療機器の開発などに役立てるよう、常に進化してゆきたいと考えている。

  5. 研究実績
  6. ・「心臓レプリカ」の開発
    小児循環器内科および小児心臓外科との共同で、産学連携による「超軟質精密心臓レプリカ」の開発を行っている。対象となる小児の心臓が小さく複雑なため、患者のMSCTによる3次元画像データから、術前に手術リハーサルが可能な実物大の精密レプリカをあらかじめ作成し、心臓外科医が円滑、迅速、かつ安全に手術を行えるようにするものである。
    工業製品の試作品製作を専門とするベンチャー企業であるクロスエフェクト社との共同開発で、レーザ光線を利用した精密3Dプリンターである「光造形法」と新しく開発された「真空注型法」と組み合わせて、心臓の内部構造を詳細に再現した「超軟質精密心臓レプリカ」を世界に先駆けて開発した。本製品は2019年に一般医療機器に認可され、現在保険償還を目指して治験を開始している。さらに製作コストと時間を短縮する目的で、スクリーンホールディング社および共栄社化学社の協力を得て、臓器レプリカに特化した新しい紫外線硬化式インクジェットプリンターを開発し、よりリアルなアクリル系樹脂からなるウエットタイプの心臓レプリカの生産を開始している。
    3Dプリンタによる臓器模型全般は、2018年10月には厚生労働省により一般医療機器「立体臓器模型」として認可され、2019年2月には本製品も医療機器としての申請が受理された。さらに本製品が保険償還されるよう、現在治験を開始している。

    ・「先天性心疾患診断および外科治療補助のためのシミュレーションシステム」の開発
     (東京大学工学部、芝浦工大との共同研究)
    複雑な先天性心疾患の3次元イメージを外来やベッドサイドで表現可能な「心血管構造の立体CGモデル作成システム」の開発、患者説明用の「先天性心疾患の3次元表示システム」の開発、手術室でも使用可能な「タッチパネル操作で心臓手術シミュレーションを行う多機能携帯端末ソフト」の実用化に向けた開発を進めている。

研究業績
  1. Nunoda S, Sasaoka T, Sakata Y, Ono M, Sawa Y, Isobe M; Heart Transplantation Committee of the Japanese Circulation Society. Survival of Heart Transplant Candidates in Japan. Circulation Journal. 83, 681-683, 2019.
  2. Ochiai R, Kato H, Misaki Y, Kaneko M, Ikeda Y, Niwa K, Shiraishi I. Preferences Regarding Transfer of Patients With Congenital Heart Disease Who Attend Children's Hospital. Circulation Journal. 83, 824-830, 2019.
  3. Ohuchi H, Negishi J, Miike H, Toyoshima Y, Morimoto H, Fukuyama M, Iwasa T, Sakaguchi H, Miyazaki A, Shiraishi I, Kurosaki K, Nakai M. Positive pediatric exercise capacity trajectory predicts better adult Fontan physiology rationale for early establishment of exercise habits. International Journal of Cardiology. 274, 80-87, 2019.
  4. Shimizu W, Makimoto H, Yamagata K, Kamakura T, Wada M, Miyamoto K, Inoue-Yamada Y, Okamura H, Ishibashi K, Noda T, Nagase S, Miyazaki A, Sakaguchi H, Shiraishi I, Makiyama T, Ohno S, Itoh H, Watanabe H, Hayashi K, Yamagishi M, Morita H, Yoshinaga M, Aizawa Y, Kusano K, Miyamoto Y, Kamakura S, Yasuda S, Ogawa H, Tanaka T, Sumitomo N, Hagiwara N, Fukuda K, Ogawa S, Aizawa Y, Makita N, Ohe T, Horie M, Aiba T. Association of Genetic and Clinical Aspects of Congenital Long QT Syndrome With Life-Threatening Arrhythmias in Japanese Patients. JAMA Cardiology. 4, 246-254, 2019.
  5. Ide T, Miyoshi T, Katsuragi S, Neki R, Kurosaki K, Shiraishi I, Yoshimatsu J, Ikeda T. Prediction of postnatal arrhythmia in fetuses with cardiac rhabdomyoma. The Journal of Maternal-Fetal & Neonatal Medicine. 32, 2463-2468, 2019.
  6. Miyoshi T, Katsuragi S, Neki R, Kurosaki KI, Shiraishi I, Nakai M, Nishimura K, Yoshimatsu J, Ikeda T. Cardiovascular profile and biophysical profile scores predict short-term prognosis in infants with congenital heart defect. Journal of Obstetrics and Gynaecology Research. 45, 1268-1276, 2019.
  7. Miyoshi T, Maeno Y, Hamasaki T, Inamura N, Yasukochi S, Kawataki M, Horigome H, Yoda H, Taketazu M, Nii M, Hagiwara A, Kato H, Shimizu W, Shiraishi I, Sakaguchi H, Ueda K, Katsuragi S, Yamamoto H, Sago H, Ikeda T. Antenatal Therapy for Fetal Supraventricular Tachyarrhythmias Multicenter Trial. Journal of the American College of Cardiology. 74, 874-885, 2019.
  8. Yokouchi-Konishi T, Yoshimatsu J, Sawada M, Shionoiri T, Nakanishi A, Horiuchi C, Tsuritani M, Iwanaga N, Kamiya CA, Neki R, Miyake A, Kurosaki K, Shiraishi I. Recurrent Congenital Heart Diseases Among Neonates Born to Mothers with Congenital Heart Diseases. Pediatric Cardiology. 40, 865-870, 2019.
  9. 白石 公. 心房・心室の発生と循環器疾患. Heart View. 23, 160-166, 2019.
  10. 白石 公. 大血管系および周辺心血管系の発生と循環器疾患. Heart View. 23, 180-186, 2019.