バイオバンク
バイオバンク事業の概要

国循バイオバンクは医学臨床研究に貢献するために、2011年4月に国立循環器病研究センターの事業として設立され、2012年6月より臨床研究の基盤整備の一環として、主に脳血管疾患を含む循環器疾患、周産期疾患を有する、原則として国循登録患者の医療情報と生体試料を収集保管する活動が始まった。
それら試料を研究活用に分配することで、新しい検査法・治療法・予防法などの医学研究、および医学教育を推進させることを使命としている。研究倫理と個人情報の保護への体制も万全に取り組んでいる。
これまでバイオバンク事業は理事長直轄事業であったが、6年目を迎えた2019年4月より国循オープンイノベーションセンター(OIC)下に編成された。

2019年の部門別活動内容
  1. バイオリソース管理室
    • 2019年中のバイオバンクの協力者は3,743人(累計19,270人)、そのうち3,208人(累計16,460人)から生体試料を採取し、保管した。
    • 患者へのバイオバンク事業の説明は従来の外来、病棟、入院センターに加え、説明動画を複数人で供覧する取り組みを始めたことで同意取得を効率的に行うことができ、協力者数は大幅に増加した。また、初診外来では患者ほぼ全員にバイオバンクの意思確認を行っている。
    • 国循内研究者が保管するヒト試料についての調査を6月までに行い、移転時にバイオバンクへの委託および委譲を完了させた。
    • バイオバンク同意のある病理検体の保管は、匿名化・ラベル発行システムの導入により効率的に行っている。
    • 2019年は院内の臨床研究に対し19件の保管試料の払い出しを実施した。その内アカデミアとの共同研究は14件、企業との共同研究は1件となっている。
    • OICにおいて定期的に企業との交流会が設けられ、共同研究に向けた情報交換を行っている。
    • 試薬キットの標準化、臨床検査の標準化に寄与するため、バイオバンク試料を用いた脂質基準分析を実施した(隔年)。
    • ISO取得に向けISO20387に見合うSOPを整えるべく、準備している。
    • 日本医療研究開発機構(AMED)が主導する「バイオバンク連絡会」において多施設のバイオバンク間、企業等との情報交換を行っている。
    • ナショナルバイオバンクネットワークグループ(NCBN)において、『疾患別コホート統合データベース事業』を日本製薬工業協会と共同で取り組んでいる。

  2. データリソース管理室
    • 病名登録システムの修正と登録ルールの改定を随時行い、新規協力者の主病名・併存病名登録の作業ペースのアップを図ることにより研究利用を促進している。
    • 研究者が研究目的に合致するバイオバンク保管試料の情報を検索するシステム(バイオバンク保管検体検索システム)を構築したことで、研究の事前調整から倫理審査申請までの時間を短縮した。また、バイオバンク・ヒト試料等審査委員会で行う事前審査も承認までの時間短縮に努めている。
    • NCBNへ、保管試料および附随する情報を隔月に提出している。NCBNカタログデータベースの外部からの検索数が増加しているが、該当の場合の問い合わせに順次対応している。

  3. 個人情報管理室
    • 事業内の倫理的配慮を必要とする事項について、医学倫理研究部と連携し、対応している。とくに同意書の記載の不備や同意の手順についてバイオバンク内のチェック機能を重要視している。

学会発表
  • 第5回クリニカルバイオバンク学会シンポジウム(2019年7月5日-7日/福岡市)
    「国立循環器病研究センターバイオバンクの取り組み」
  • 第73回国立病院総合医学会(2019年11月8日-9日/名古屋市)において「国立循環器病研究センターでのバイオバンク事業と共同したゲノム医療の取り組み-遺伝子検査用外部検体受け入れ1年での実績と課題-」を冨田 努(バイオリソース管理室長)が発表した。
研究業績

バイオバンク試料を用いた研究

  1. Miyoshi T, Maruyama K, Oku H, Asahara S, Hanada H, Neki R, Yoshimatsu J, Kokame K, Miyata T. Predictive value of protein S-specific activity and ELISA testing in patients with the protein S K196E mutation. Thrombosis Research. Epub, 2019.
  2. Miyoshi T, Hosoda H, Nakai M, Nishimura K, Miyazato M, Kangawa K, Ikeda T, Yoshimatsu J, Minamino N. Maternal biomarkers for fetal heart failure in fetuses with congenital heart defects or arrhythmias. American Journal of Obstetrics and Gynecology. 220, 104.e1-104.e15, 2019.