研究推進支援部
支援業務概要・研究活動の概要
【支援業務概要】
- 移転に向け新規施設に関して情報収集するとともに、研究者のニーズに応えるべく施設の設計・施工に関与した。
- 年間を通じ建設現場に赴き、詳細を確認し続けた。引き渡し時には現地の施設の詳細を点検し、不具合については早急な対応を求め、より良い施設機能を担保するために尽力した。引き渡し後も早期の施設開始に努めた。
- 移転に向けた施設・動物について移動計画を立て、スムーズな移行が行えるよう準備し実行した。
- 移転後の速やかな実験開始に向けて、運用計画を構築し対応した。これにより7月1日の実験開始が可能であった。
- 大動物の移動については一部外部施設との併用を考慮し、速やかに費用を抑えた方法で実施することができた。
- 移転後速やかに新施設利用に関する講習会を開催した。
- センターで実施される動物実験について、実験動物の福祉向上・研究の透明性の確保・研究の信頼性の向上に努め、適正な動物実験の実施を心掛け、研究者が安全に安心して研究に没頭できるよう基盤整備を行い、また適宜、指導を行った。
- 法令対応のため「動物の保護及び管理に関する法律」改正に伴う情報収集、実験動物・動物実験に関わる他組織との情報交換を行い、施設の今後について検討した。
- 動物実験の社会的理解を得るため、情報発信のあり方について調べ報告した。
- 施設規模だけでなく、研究実施内容についても誇れるセンターであるための支援をハード・ソフトの両面から実施している。
- 発表論文に対して疑義照会があった際に、研究者や所属組織が発表論文の検証をできるように、論文関連データを適切なアクセス権限の下で中央管理し、保管されたファイルに対するアクセス・ログを収集することで、誰がいつどのファイルに何をしたかを確認できるファイルサーバを開発し、運用管理を行った。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、センターにおける研究開発や、診療業務に不可欠な情報基盤の整備および移転開発事業に関連した情報システム・機器の仕様策定・導入開発・運用管理を行った。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)による情報セキュリティ監査に対応し、問題点の洗い出しやその対策を行い、よりセキュアで利便性の高い情報通信基盤となるよう継続的な改善を実施した。また、それに伴い、センターの情報セキュリティポリシーの改定や手順書の整備を行った。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、職員の情報セキュリティ教育のためのコンテンツの作成、講習会の開催などを行った。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、センターに対する標的型攻撃などの種々の情報セキュリティインシデント発生時には、厚生労働省やNISCと連携しながら事実確認および対策を行った。
- 医療情報の抽出・匿名化・セキュアな管理・適切な解析方法などの技術的なコンサルテーションを行い、医療情報関連の様々な研究に関する研究計画立案や研究実施の支援を行った。
- 情報統括部と協力し、岸部新センターにおける研究所共用会議室のプロジェクタ、スクリーン、大型モニタ等の機器整備を行った。
- 6NC共同で政策提言機能の充実を図る班研究に携わっている。
- 6NC横断的研究推進組織の設立に中心的役割を果たした。
- 「脳卒中・循環器病対策基本法」に基づく循環器病の診療情報収集・活用のための登録様式に関して、定義書策定等の作業を開始した。
- 昨年度に引き続き研究開発の推進に必要となる公的研究資金等の外部研究資金、特に国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(AMED)からの外部資金獲得増に向けて、研究計画書等の作成支援、研究班構築調整、臨床研究の推進等を行った。
- 臨床研究を計画的かつ効果的・効率的に実施するため、臨床研究セミナーや倫理研修等を臨床研究部、先進医療・治験推進部や医学倫理研究室と共同で開催した。
- 岸部移転後速やかに有害薬品やアイソトープを用いた研究活動が再開できるように、早い時期から新施設の運用・管理およびその説明会を開催した。
- 年間を通じて全国の臨床検査室からの標準化依頼(53件)の処理と試薬メーカー(6社)および臨床検査受託会社(2社)に対して、米国CDCの脂質標準化プログラムに基づいたT-CHO、HDL-C及びLDL-C測定試薬の認証試験を実施した。
動物実験管理室
研究情報基盤管理室
研究企画調整室
研究安全管理室
脂質基準分析室
【研究概要】
- 研究情報基盤管理室では、先制医療の実現に向けて、これまで健康データを統一的に表現するICF(国際生活機能分類)の利用の可能性を検討してきた。一昨年度より商業施設で定期的に健康データ収集を行っているため、本年度は主にそれらのデータをICFで意味づけ、蓄積するためのシステム構築と参加パターンの分析および検査結果のデータ分析を行った。
- 研究情報基盤管理室では情報統括部・医療情報部と協力し、臨床研究に資するための病院情報管理システムの全情報を収集・管理する統合DBの開発を行った。統合DBの基盤構築およびDBの開発を行い、対象情報の収集・蓄積を開始した。現在、過去情報を含めてほぼすべての情報の蓄積が完了している。今後、任意の期間や条件での情報の検索・抽出が可能か評価していく。
- 研究情報基盤管理室では、医療文書中の用語が医療用語か判別し、辞書ファイルを自動的にチューニングする仕組みについて検討を行った。医療文書中の対象用語の出現頻度と、対象用語をWeb検索した際のヒット数およびヒットしたWeb Site内での用語の出現頻度を指標に医療用語の判別を行った結果、高頻度で出現する用語は高確率で医療用語と推定できることが分かったが、低頻度で出現する用語にも医療用語が含まれていた。今後、低頻度の医療用語の判別精度を向上させるために、用語の出現頻度だけではなく、文脈や用例などを用いた判別方法の検討を行っていく。
- 研究企画調整室では、主に心不全における病態生理の解明及びその病態生理に基づいた治療に関する研究を行っている。病態生理の解明には、複雑系の機能解析に必要な工学的手法を用い、また、治療には独自に開発したデバイスの臨床応用を目指した基礎研究を行っている。
- 研究企画調整室では、心磁図を用いた不整脈起源の同定法を開発しており、現在、論文投稿を準備している。
- 動物実験管理室では、動物福祉に立脚した実験動物の麻酔法の確立や、研究者に対して講習会等を通してその動物実験実施手順などの指導を行った。また、実験動物飼養施設をいかに運営していくかが最大の研究テーマそのものでもあり、支援業務と切っても切り離せない関係にあり、結果としてセンターから多くの業績が生まれることが、研究成果であると考えている。
2019年の主な研究成果
- 6NC共同で政策提言機能について議論を行い、現在、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いた研究を6NC共同で計画中である。
- 心不全の予後予測モデルの低い予測能の原因について、システマティックレビューの手法を応用し、網羅的に研究に関わる因子を定量評価し比較を行った結果、各心不全研究におけるサンプリングバイアス、とりわけ心不全の定義の曖昧さが問題となっていることを示唆する研究成果を得た(J Clin Epidemiol, in press)。
ここで用いた新たな手法は各医学領域におけるボトルネックを定量的に明らかにするのに有効で、Evidence-base policy makingの観点からも重要であると考えられ、レビューを作成した(Circ Reports. 2020;2:10-15)。 - 早期再分極症候群の心磁図検査を用いたリスク層別化手法を開発した(Ann Noninvasive Electrocardiol. 2020 Jan 19:e12741)。
- ICF(国際生活機能分類)を用いた、個人健康記録管理システムの構築および定期的な健康イベント実施による健康データ収集の試みおよびデータ分析を行った。
- 病院で発生しているほとんどすべてのリアルワールドデータを集約し管理する統合データベースを開発し、臨床研究への2次利用を可能とする仕組みを構築した。
- 医療辞書自動作成システムの構築に向けたパイロットスタディとして、カルテ(SOAP)記載データから複合語を抽出し、SOAP記載における頻度、および実際のWEB上の情報を利用して、複合語の用語性の判定の可能性を評価した。
2019年の主な研究推進支援の活動成果
- 臨床研究セミナー「臨床研究のテーマ選び ~AMEDの経験から~」という題で、競争的研究資金を戦略的に獲得するための背景知識について情報提供を行った。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、センターにおける研究開発や診療業務に不可欠な情報基盤の整備および移転開発事業に関連した情報システム・機器の仕様策定・導入開発・運用管理を行った。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)による情報セキュリティ監査に対応した。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、セキュリティ上の問題点の洗い出しやその対策を行い、よりセキュアで利便性の高い情報通信基盤となるよう継続的な改善を実施した。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、センターの情報セキュリティポリシーの改定や手順書の整備を行った。
- 情報統括部と協力し、発表論文に対して疑義照会があった際に、研究者や所属組織が発表論文の検証を行うためのファイルサーバを開発し運用管理を行った。
- 情報統括部と協力し、岸部新センターにおける研究所共用会議室のプロジェクタ、スクリーン、大型モニタ等の機器整備を行った。
- 倫理委員会申請等に関する相談業務を行った。
- センター内部ホームページを活用して、積極的に競争的研究資金の公募情報を提供した。
同様に、民間からの助成金に関する情報提供を行った。
研究業績
- Kawada T, Akiyama T, Sonobe T, Shimizu S, Hayama Y, Pearson JT, Shishido T, Sugimachi M. Central activation of cardiac vagal nerve by α2-adrenergic stimulation is impaired in streptozotocin-induced type 3 diabetic rats. Autonomic Neuroscience-Basic & Clinical. 216, 39-45, 2019.
- Nakano H, Omote K, Nagai T, Nakai M, Nishimura K, Honda Y, Honda S, Iwakami N, Sugano Y, Asaumi Y, Aiba T, Noguchi T, Kusano K, Yokoyama H, Yasuda S, Ogawa H, Chikamori T, Anzai T; NaDEF Investigators. Comparison of Mortality Prediction Models on Long-Term Mortality in Hospitalized Patients With Acute Heart Failure - The Importance of Accounting for Nutritional Status -. Circulation Journal. 83, 614-621, 2019.
- Nagai T, Iwakami N, Nakai M, Nishimura K, Sumita Y, Mizuno A, Tsutsui H, Ogawa H, Anzai T. Effect of intravenous carperitide versus nitrates as first-line vasodilators on in-hospital outcomes in hospitalized patients with acute heart failure: Insight from a nationwide claim-based database. International Journal of Cardiology. 280, 104-109, 2019.
- Yamamoto H, Kawada T, Shimizu S, Hayama Y, Shishido T, Iwanaga Y, Fukuda K, Miyazaki S, Sugimachi M. Acute effects of intravenous carvedilol versus metoprolol on baroreflex-mediated sympathetic circulatory regulation in rats. International Journal of Cardiology. 285, 65-71, 2019.
- Kawada T, Shimizu S, Uemura K, Hayama Y, Yamamoto H, Shishido T, Nishikawa T, Sugimachi M. Ivabradine preserves dynamic sympathetic control of heart rate despite inducing significant bradycardia in rats. Journal of Physiological Sciences. 69, 211-222, 2019.
- Nakao K, Yasuda S, Nishimura K, Noguchi T, Nakai M, Miyamoto Y, Sumita Y, Shishido T, Anzai T, Ito H, Tsutsui H, Saito Y, Komuro I, Ogawa H. Prescription Rates of Guideline-Directed Medications Are Associated With In-Hospital Mortality Among Japanese Patients With Acute Myocardial Infarction: A Report From JROAD-DPC Study. Journal of the American Heart Association. 8, e009692, 2019.
- Tada M, Azuma H, Yamada N, Kano K, Nagai H, Maeda S, Ishida H, Aoyama T, Okada R, Kawano T, Kobuchi T, Uzui H, Matano H, Iwasaki H, Maeno K, Shimada Y, Yoshida H, Ando M, Murakami Y, Iwakami N, Kishimoto S, Iwami T, Tada H, Chapman A, Mills N, Hayashi H, Furukawa AT, Watanabe N. A comprehensive validation of very early rule-out strategies for non-STsegment elevation myocardial infarction in emergency departments: protocol for a multicentre prospective cohort study. BMJ Open. 9, e026985, 2019.