教育推進部
研究活動の概要
2017年の主な研究成果

平成29年3月より始動した教育推進部では、現在では以下の点について重点的に活動を開始している。

  1. 日本で唯一の循環器医療に特化した「クラスター棟トレーニングセンター」と一体化した医療人の教育推進と医療技術の向上
  2. クラスター棟トレーニングセンターを存分に活用することにより、若手医師、看護師、検査技師、臨床工学士の診療手技の教育、技術向上、シミュレーションを実践し、年々高度になる循環器医療技術を確実に修得し、世界最高レベルの診療技術の実現し維持することを目標とする。そのために、トレーニング機器の管理を行うだけでなく、新しいトレーニング機器の導入を行い、クラスター棟トレーニングセンターをNCVC内だけの財産とすることにとどまらず、広く全国レベルでの若手医療人の教育推進に役立てる活動を展開する。各方面の学会と合同する形で、日本国内の様々な施設から医師、看護師、検査技師がシミュレーションやレーニングやセミナーを開催できる施設として機能するよう、現在準備を進めている。手始めとして、平成29年度には、日本小児循環器学会の「若手育成プロジェクト」の一環としての広域での利用を推し進めている。平成30年度には、日本循環器学会、日本心臓病学会、日本心臓血管外科学会、日本循環器看護学会にも働きかける予定である。

  3. 新たな教育機器、シミュレーションツール、医療機器の開発推進
  4. 教育推進部では、トレーニングセンターの管理と利用推進にとどまらず、新しいシミュレーターの開発、新しい医療機器の開発研究にも取り組んでいる。

    • 「立体構造が極めて複雑な先天性心疾患患者への3Dモデル診断による術時間削減を実現する、オーダーメイド型超軟質3D精密心臓モデルの開発・事業化」(AMED研究、(株)クロスメディカルとの共同研究)
      以前から行っている「超軟質精密心臓レプリカ」の開発を終え、平成30年度は医療機器承認に向けた治験を開始する。
    • 「先天性心疾患診断および外科治療補助のためのシミュレーションシステムの開発」(東京大学工学部、芝浦工大との共同研究)
      複雑な先天性心疾患の3次元イメージを外来やベッドサイドで表現可能な「心血管構造の立体CGモデル作成システム」の開発、患者説明用の「先天性心疾患の3次元表示システム」の開発、手術室でも使用可能な「タッチパネル操作で心臓手術シミュレーションを行う多機能携帯端末ソフト」の開発を実施し、実用化に向けた成果を出している。
    • 「2波長レーザー光音響計測を応用した心臓大血管酸素飽和度の無侵襲測定装置の臨床研究」(文部科研申請中:防衛医科大学との共同研究)
    • 先天性心疾患の診断には心臓カテーテル検査は必須であるが、新生児乳児には侵襲が大きく、体外から心血管内の酸素飽和度を計測できる機器の開発が長年望まれていた。新しい「光音響計測」技術を応用すると、1波長レーザー光では微小血管など組織の詳細なイメージングが、また2波長レーザー光では吸収特性の差から組織内の様々な物質を体外から非侵襲的に計測することが可能となる。我々は体外から心血管内の血液酸素飽和度を測定する機器を開発し、安全性に関する基礎研究を行うとともに、その有効性を評価する研究を開始している。

  5. 「臨床研究中核病院」の取得に向けた介入を伴う臨床研究、治験の推進
  6. 日本発の革新的医薬品・医療機器の開発などに必要となる質の高い臨床研究や治験を推進するため、国際 水準の臨床研究や医師主導治験の中心的な役割を担う病院として、臨床研究中核病院が医療法上位置づけられ、全国で12施設が既に指定を受けているが、国の循環器政策医療を担うNCVCは未だ取得にいたっていない。平成30年度は、臨床研究推進センターとともに「臨床研究中核病院」資格取得に向けた臨床研究および治験の推進に務める予定である。

平成30年度にはこれらの教育推進および研究活動を、さらに広く、深く、全国レベルで推し進める予定である。

研究業績
  1. 白石 公. 3Dプリンターによる先天性心疾患手術シミュレーションへの応用. 心臓. 49, 1114-1119, 2017.