脳神経内科では、①脳血管障害の病態解明、②診断技術の向上、③治療成績の向上、④後遺症の予防を目指し、基礎・臨床の両面から様々な研究活動に取り組んでおります。特に治療研究に関しては、脳血管障害に関係する細胞実験 (iPS細胞)、げっ歯類モデル、非人類霊長類モデル、臨床研究、医師主導治験というすべてのステージの研究に取り組んでいる、世界でも非常に珍しい研究グループです。国立循環器病研究センター内では、臨床研究に関しては脳血管内科と、基礎研究では研究所・再生医療部と深く連携し、脳血管障害の制圧を目指し、日々の研究に取り組んでおります。
- 1.脳血管障害の病態に迫る研究
- (1)若年性脳梗塞患者におけるもやもや病感受性遺伝子多型の解析
- (2)う蝕原性細菌感染と脳卒中 (特に脳出血) との関連の解明
- 2.脳血管障害の診断の向上を目指す研究
- (1)非侵襲的脳血流測定法 (3D-ASL) を用い神経救急疾患の新たな診断・治療法の開発
- (2)超音波を用いた脳血管障害の新たな診断・治療法の開発
- ①脳血管症が頚動脈不安定プラークの超音波診断
- ②定常流型補助人工心臓装着患者における経頭蓋ドップラー検査を用いた微小塞栓検出
- ③頚部回旋および嚥下運動による頚動脈走行変化に関する研究
- ④Rolling stones signの報告
- (3)脳卒中の予後予測研究
- 3.脳卒中の治療成績の向上を目指した研究
- (1)循環器用薬の薬物動態と遺伝子多型に関する臨床研究
- (2)再開通療法後の頭蓋内出血の予測する危険因子の同定を目指した臨床研究
- (3)急性期脳梗塞へのアドレノメデュリンの臨床応用
- (4)Virtual Reality技術を応用したリハビリテーションプログラムの開発
- 4.脳卒中後てんかんに関係する研究
脳血管障害の発症は、血管の危険因子のみでは説明できないことが既に明らかになっております。脳神経内科では遺伝子や感染、炎症に注目し、脳血管障害の病態の本質に迫る研究に取り組んでいます。
若年者の脳血管障害は、高齢者と異なり発症機序が明らかではない場合が多く、適切な治療やリスクの評価が難しい疾患です。若年性脳梗塞についてはこれまでにも遺伝的素因の検討がされてきましたが、いまだ明らかな感受性遺伝子は同定されていません。脳神経内科では、もやもや病感受性遺伝子であるRNF213 p.R4810K多型に注目し、この遺伝子多型がアジア地域においては、もやもや病と診断されていない若年性脳梗塞患者においても危険因子となっている可能性があると考え、京都大学と協力して研究を進めています。
大阪大学歯学研究科との共同研究で、う蝕原性細菌(通称、虫歯菌)が脳出血の強い危険因子となることが明らかになりました。高血圧の管理によって減少はしているものの、外国に比べて我が国に依然多いとされる脳出血の予防法開発につなげたいと考えています。この研究で、脳血管障害の少壮研究者1名のみが毎年選ばれる第41回日本心臓財団草野賞を筆頭著者殿村が受賞しました。
👉プレスリリース:『口腔内のむし歯菌』と『微小脳出血』との関連を解明
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/post_17.html
👉Nature Japanおすすめのコンテンツ:
http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/abstracts/74294
脳神経内科では、脳血管障害の診断精度の向上、新たな画像診断法の開発を目指し、様々な研究に取り組んでおります。
脳神経内科では放射線部や画像診断医学部と協力し、MRIを用いた3次元Arterial Spin Labeling (3D-ASL)潅流画像と呼ばれる新しい非侵襲的な脳血流測定法を用いて、神経救急疾患の急性期に局所脳血流量や側副血流の程度を評価し、診断や治療につなげる試みを行っています。平成29年度は3D-ASLで認められる局所過灌流が術後の出血性梗塞の発症と有意に関連することを明らかにし(Okazaki, et al. J Cereb Blood Flow Metab. 2017;37:3087-3090.)、また前兆を伴う片頭痛の診断にも有用であることを示しました(Wolf ME and Okazaki S, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018 in press)。現在はこれらの研究成果をもとに、3D-ASLを用いた側副血流の定量的評価法の開発やてんかんなどのStroke mimicsの鑑別についても取り組んでいます。
超音波検査は、術者によって検査結果が大きく変動しうる難しい検査ですが、非侵襲的で非常に多くの情報を得ることができるため、脳神経内科では積極的に様々な臨床研究を展開しております。
動脈硬化による粥状硬化性病変(プラーク)はその進展により血管狭窄を引き起こすだけでなく、破綻によって粥腫や血栓が塞栓となって脳梗塞を引き起こすため、このようなリスクの高いプラークは不安定プラークとよばれています。頚動脈エコー検査でプラークが安定したものなのか、不安定で脳梗塞を起こしそうなのかを調べることができれば脳梗塞発症予防に大きく貢献できると考え、我々は超音波造影剤を用いてプラークの不安定性を評価する研究を行っています。プラーク内部の新生血管を描出し、新生血管の多いプラークで脳梗塞発症例が多いことや、通常のエコー検査ではわからないようなごく小さな潰瘍を早期にみつけられることもわかり、さらにプラークの質的診断向上を目指して研究を行っています。
人工心臓装着患者では、血栓ができないように抗凝固療法を行い、塞栓性合併症を予防することが重要です。経頭蓋ドップラー検査は非侵襲に脳血管へ微小塞栓が飛来しているかどうを調べることができる検査です。これを利用して、脳神経内科は移植部と共同研究を行っております。平成29年度は、定常流型補助人工心臓装着例のなかで溶血や血栓塞栓イベントおこした患者で、微小栓子の信号が検出され、経頭蓋ドップラー検査が塞栓リスクの評価に有用である可能性を報告しました (Fukuma, et. al. ASAIO J. in press) 。
頚部を回旋し嚥下動作を行うと舌骨が頚動脈分岐部などにはまり込み頚動脈の走行が変化するという現象を超音波検査でリアルタイムにとらえることができ、この繰り返しが虚血性脳血管障害の原因となっていると考えられた症例を報告しました (Kinoshita, et. al. Neurology. 2017;89:1643-1644)。現在この現象が頚動脈プラーク形成や脳梗塞のリスクになりうる可能性を考え研究を行っています。
石灰化を伴う可動性構造物が総頸動脈へ接着し、その後の分離移動したことを頸動脈超音波で捉えて、脳塞栓症の原因と判断した症例を報告しました。欧文雑誌に報告し、近日受理となる見込みです。
脳卒中急性期に電気生理学的手法や特殊なMRI撮影方法を用いて患者さんの予後を予測できるアルゴリズムを開発する研究を行っています。その方法を将来の脳卒中の臨床研究のデザインに組み込むことで、より質の高い臨床研究、治療開発研究を目指しています。
rt-PA静注療法、血管内治療法といった脳梗塞急性期治療の進歩により、脳梗塞による死亡率は減少したが、脳梗塞は依然として寝たきりや認知症の主要因であり、更なる治療成績の向上が望まれています。
近年、DOAC(経口抗凝固薬)として、用量調節が不要な抗血栓薬の使用が可能となってきているが、実際の血中濃度には個人差があり、それらが予防効果に影響をもたらしている可能性があります。また、それらの血中濃度の差が遺伝子多型によって規定されている可能性があります。
これらについて、当院薬剤部、検査部の協力のもと、LCMS-8030、GTS-7000(島津製作所)を用いて血中濃度、遺伝子多型を測定し、その関連について検討を行っており、新規抗凝固薬であるダビガトラン32例 、リバーロキサバン89例、アピキサバン149例、エドキサバン94例を服薬中の脳卒中例の血中濃度(トラフ値)を測定した先行研究を現在行い、中間解析では、新規抗凝固薬の血中濃度には最大7倍程度の個体 差があり、特にアピキサバン2.5mg投与群では特定のスコアに相関して血中濃度が上昇することが判明しています。
内頚動脈や中大脳動脈近位部などの前方循環系脳主幹動脈の閉塞を原因とした脳梗塞は、症状が重く、tPA静注療法を行っても再開通が得られにくいことが知られています。近年、このような症例に対して,特定の条件下で,tPA静注療法に加えて,カテーテルを用いた血管内治療を行うことで,tPA静注療法を含めた内科治療に優る有効性を発揮し、後遺症が軽減することが証明されました。当院でも、急性期脳梗塞に対する血管内治療を積極的に行っています。一方で,血管内治療における重篤な合併症として,症候性頭蓋内出血が知られています。tPA静注療法や血管内治療といった、再開通療法後の症候性頭蓋内出血が脳梗塞後の予後に与える影響は大きく,頭蓋内出血の予測因子を同定する事が重要となります。
現在脳神経内科では、治療前の血液検査や画像検査の結果と頭蓋内出血発症との関連性を検証しており、これらのバイオマーカーが、術後の頭蓋内出血の予測の一助となると期待しております。
内因性循環調節ペプチドのアドレノメデュリンは、血管拡張作用や血管新生作用、NO産生作用、血管内皮細胞や血管内皮前駆細胞のアポトーシス抑制作用など、多彩な作用を有することが知られています。現在国立循環器病研究センターでは、センター全体が一丸となり、造影剤腎症と急性期脳梗塞の治療のためのアドレノメデュリンの臨床応用を目指した研究に取り組んでおります。脳神経内科では、研究所・再生医療部と共同で、この急性期脳梗塞患者へのアドレノメデュリンの投与を目指した前臨床研究および臨床研究を先導しております。
tPA静注療法や血管内治療法の普及によって閉塞血管の再開通方法は確立しました。しかし、①急性虚血の組織障害に対する治療と②亜急性期以降の再生医療を実現できなければ、これ以上の家庭復帰率の向上は 期待できません。アドレノメデュリンは、一剤でこの①と②の両方の目的を達成できうる、安全性の高いペプチドホルモンであると考えております。脳神経内科のこの取り組みは、AMED循環器疾患・糖尿病等生 活習慣病対策実用化研究事業に採択されました。現在、非臨床試験においてアドレノメデュリンとtPA併用の安全性を検証しつつ、脳梗塞患者のアドレノメデュリン濃度の測定を行っております。
これまでのリハビリテーションプログラムは、完遂できれば運動機能の改善につながることが過去の研究からも明らかですが、単調なリハビリ運動を継続することは誰にとっても難しいことです。近年VR技術の進歩により、3次元空間映像の様々な分野での応用が研究されていますが、リハビリテーションにおける有用性を検討した報告は少なく、現在VRプログラムを用いたリハビリ加療の研究に向けて、検討を行っています。
脳卒中後てんかんは脳卒中の後遺症として重要であり、約10%の脳卒中生存者に合併する疾患とされています。過去の報告ではさらに脳卒中後てんかんはADL低下や死亡率上昇をもたらし、再発率も高いとされています。我々の報告でも約1年の間に30%の症例が再発していることが分かりました。
👉プレスリリース:「日本人における脳卒中後てんかんの再発に関する因子の解明」
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/post_10.html
👉平成28年度「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業」
http://www.amed.go.jp/koubo/010520151113-02_kettei.html
*脳卒中後てんかんの診断・予防・治療指針の策定(AMED代表研究者:猪原匡史)
脳卒中後てんかん症例の脳波所見について脳波所見読影会(毎週金曜日)を検査技師の先生方と開催し、また、月に1回京都大学のてんかん専門医の先生方との遠隔カンファレンスシステムを 用いた合同脳波読影会(計19回開催)を行い、脳波読影のスキルアップを図っています。さらにはその他の検査として脳SPECT検査や脳MRI(ASL)法、脳波持続モニタリングシステム等を用いて診断法の確立を目指しています。また、AMED研究データを用いて、抗てんかん薬とてんかん発作再発についての検討が欧州脳卒中学会にて若手優秀演題候補に選出され、同年の神経治療学会総会(埼玉)では脳波所見と予後の関連についての検討が優秀演題に選ばれております。現在270例以上の脳卒中後てんかん症例の登録が進んでおり、本邦で最大規模のデータとして期待されています。
脳卒中後認知症を代表とする血管性認知症は病型の多様であり、研究が困難です。そこで脳神経内科では、様々な手法を用いて、脳血管性認知症の病態研究に取り組んでおります。
- (1)脳卒中後認知症の早期診断に関する臨床研究
- (2)孤発性血管性認知症の動物モデルの開発
- (3)遺伝性脳小血管病に焦点をあてた病態研究
- ①CADASIL患者由来のiPS細胞を用いたCADASILの病態研究
- ②CADSILおよびCARASILモデルマウスを用いた病態研究
- ③多施設共同CADASIL患者登録研究
脳神経内科では脳卒中後認知症の早期診断・早期治療のための臨床研究に取り組んでおり、脳塞栓症リスクスコアであるCHADS2スコアが脳塞栓症のリスク評価だけでなく、脳梗塞後認知機能障害の早期発見にも有用であることを報告しました。
マウス、ラット、非人類霊長類を用いて、孤発性血管性認知症の動物モデルを開発し、ヒトの血管性認知症に応用できる薬剤の有効性試験を行っています。最近確立した動物モデルの仕事 (Hattori Y, et al. J Neurosci 2015)では、脳血管障害の少壮研究者1名のみが毎年選ばれる第40回日本心臓財団草野賞を筆頭著者の服部が受賞しました。また、血管性認知症の代表的な病型である脳小血管病の総説がStroke誌の表紙を飾りました(Ihara M, Yamamoto Y. Stroke 2016)。
遺伝性の血管性認知症および脳梗塞を呈する疾患では、CADASIL (cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)とCARASIL (cerebral autosomal recessive arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy) が代表的です。そこで脳神経内科では、単一遺伝子疾患CADASIL、CARASILを突破口に血管性認知症の病態を解明することを目標としたさまざまな研究を進めております。
脳神経内科では、研究所・再生医療部、京都大学と共同で、世界に先駆けてCADASIL患者由来のiPS細胞から壁細胞を分化誘導し、病態研究を行ってきました。iPS細胞を使用することで、200以上存在するNOTCH3遺伝子変異型間の誤差を最小にし、均一な条件で実験を長期間行うことができます。現在、3人のCADASILの患者からiPS細胞を作成済みであり、さらにサンプル数を増やすべく現在新たなiPS細胞の樹立と並行して患者さんのリクルートを行っています。
in vitroで得られた結果を直ちに in vivoで検証するため、脳神経内科では、研究所・再生医療部、新潟大学と共同で、CADSILおよびCARASILモデルマウスの開発を行っております。またこれらのマウスを利用した新規治療開発研究も行っております。本研究は、新潟大学脳研究所の共同利用共同研究課題として採択されております。
三重大学、京都府立医科大学、熊本大学、新潟大学などの施設と共同で、アジア初の全国規模のCADASILレジストリーを構築しました。本レジストリーを利用して、現在本邦におけるCADASILの診断基準の作成を進めております。また、本研究グループによって構築されたオールジャパンの研究体制によって、基礎研究も様々展開を見ております。本プロジェクトはAMED難治性疾患実用化研究事業にも採択されております。本レジストリーで得られるCADASILの様々な臨床情報は、将来のCADASIL患者への治験デザインにとって極めて重要な情報であり、更なる飛躍が期待されています。
脳神経内科では、認知症など様々な病態の研究にも取り組んでおります。
- (1)アルツハイマー病に対するNeurovascular treatmentの開発
- ①シロスタゾールを用いた軽度認知障害に対する医師主導治験(COMCID研究)
- ②タキシフォリンによる脳アミロイド血管症に対する新規治療法の開発
- (2)指タップ試験による認知機能評価
高齢者の認知症においては、複数の原因が関与することがしばしばです。認知症の筆頭疾患であるアルツハイマー病にも高血圧や糖尿病などの生活習慣病に基づく血管病が深く関与しているということが知られています。そこで、私たちは、βアミロイドやタウを過剰発現する動物モデルを用いてその病態を検証し、血管病の視点からアルツハイマー病の治療法を開発する研究を行っています。
シロスタゾールがアミロイドβタンパク質高発現マウスにおいてアミロイドβの排泄を促進することを明らかにし(Maki T, et al. Ann Clin Trans Neurol 2014)、さらにシロスタゾールが軽症認知症患者の認知機能障害の進展を遅延させることを明らかにしたことから(Ihara M, et al. PLOS ONE 2014)、PMDAの対面助言を経て、医師主導治験を開始することとなった (Saito S, et al. Alzheimers Dement (N Y) 2016)。センター内に治験調整事務局を設置し、平成27年5月に治験届を提出した。平成30年3月に登録終了となる予定である。
👉COMCID研究に関するホームページ:
http://www.ncvc.go.jp/hospital/pro/info/neurovascular/comcid.html
カテコール型フラボノイドであるタキシフォリンが、アミロイド血管症モデルマウスにおいてアミロイドβのオリゴマー化を抑制し、血中へのクリアランスを亢進することを見出した (Saito S, et al. Acta Neuropathol Commun. 2017)。本研究結果は平成29年の国立循環器病研究センター研究所セミナー賞を受賞し、各種マスメディアでも取り上げられた。
👉プレスリリース:脳内の老廃物蓄積を抑制する物質が判明アルツハイマー病の新規治療薬開発へ
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/20170404_press.html
👉卓越する国循:国循で認知症予防!?
http://www.ncvc.go.jp/about/excellence/11.html
高齢化社会の進行に伴い認知症患者数は増大すると予測されその対策が喫緊の課題です。適切な服薬指導や生活支援によりある程度の進行抑制が期待されるため、認知症を早期に発見するためのスクリーニング検査が重要です。現在、長谷川式スケールやMinimental State Examination等の質問式認知機能検査が知られ、その簡便性と有用性はよく知られていますが、巧緻運動機能を含む遂行機能の評価は不十分です。そこで、脳神経内科では、運動機能のスクリーニング検査法として、磁気センサー型指タッピング計測装置(日立コンピューター製UB-1)を用いて手指の運動機能計測を行っています。実際、遂行機能障害が見られる患者では、タッピングのパターンが明らかに乱れています。今後、症例を蓄積して解析を進める方針です。
- 埋込型人工心臓装着患者の塞栓症リスク評価における経頭蓋超音波検査の有用性について、欧米誌(ASAIO Journal)に報告した。
- 虚血性脳血管障害の原因となり得る、頚部を回旋し嚥下動作を行うと舌骨が頚動脈分岐部などにはまり込み頚動脈の走行が変化するという現象(Flip-flop phenomenon)を超音波で診断した症例を報告した。
- 第35回神経治療学会(埼玉)にて脳卒中後てんかんにおける脳波所見と予後の関連を報告し、神経治療学会優秀演題に選出された。また、脳卒中後てんかんにおける抗てんかん薬と発作再発の関連について第3回欧州脳卒中学会で発表し、優秀演題候補に選出された。さらには脳卒中後てんかんの総説を欧米誌(Neurochemistry International)に、脳卒中後早期発作と晩期発作の予後に関するリスクについて欧米誌(Seizure)に報告した。
- ASLで認められる局所過灌流が出血性梗塞の発症と有意に関連することを明らかにし欧米誌 (JCBFM) に発表した。
- むし歯の原因菌として知られている細菌(いわゆるミュータンス菌)のうち、cnm遺伝子保有株が、脳内で炎症を引き起こし脳出血の発症に関与することを明らかにし英文誌上で発表した。同論文は2017年の日本心臓財団草野賞を受賞した。また、同研究成果は、2017年の脳卒中学会賞を受賞した。
- アドレノメデュリンの臨床応用を目指した脳神経内科主導の研究が、AMED循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業に採択された (2017年)。
- 生薬由来の成分がアミロイド血管症に基づく認知症を改善することを突き止め、英文誌上で発表した。同研究成果は、脳アミロイド血管症国際会議の若手奨励賞 (2016年)、研究所セミナー奨励賞、脳卒中学会賞、VasCog-J最優秀賞を受賞した (2017年)。
- 脳血管にβアミロイドが蓄積する脳アミロイド血管症が、タウのリン酸化や神経細胞脱落を促進させることを見出し、2017年に脳循環代謝学会で発表し、優秀ポスター賞を受賞した。
- 認知症リスク減!続々国循のかるしおレシピの監修を行った(2017年3月1日に書籍が発刊された)。認知症リスクの低減を目指した食事療法はNHK総合テレビ「ガッテン!」でも取り上げられ (2017年5月17日放送)、大きく注目された。循環器疾患予防と認知症予防の密接な関係を国民に広く伝え、循環器病予防から始まる認知症の先制医療を目指す先駆的試みである。
- 当科の脳卒中診療および研究活動は、NHK総合テレビ「ガッテン!」でも取り上げられた (2018年3月7日放送)。
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- Kitamura A, Manso Y, Duncombe J, Searcy J, Koudelka J, Binnie M, Webster S, Lennen R, Jansen M, Marshall I, Ihara M, Kalaria RN, Horsburgh K. Long-term cilostazol treatment reduces gliovascular damage and memory impairment in a mouse model of chronic cerebral hypoperfusion. Scientific Reports. 7, 4299, 2017.
- Kuriyama N, Ihara M, Mizuno T, Ozaki E, Matsui D, Watanabe I, Koyama T, Kondo M, Tokuda T, Tamura A, Yamada K, Akazawa K, Takeda K, Takada A, Mizuno S, Nakagawa M, Watanabe Y. Association between Mid-Regional Proadrenomedullin Levels and Progression of Deep White Matter Lesions in the Brain Accompanying Cognitive Decline. Journal of Alzheimers Disease. 56, 1253-1262, 2017.
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