臨床試験推進センターは、品質の高い臨床試験を効率的に行うことで高いエビデンスを構築し、有望な医療技術をより速く医療現場に届けることで循環器疾患の究明と制圧に資する使命をもつ新しい組織として2016年4月に病院内に設置されました。前身の先進医療・治験推進部から引き継いだ治験推進室とCRC室に加え、新たに普及啓発・相談支援室が設置され、3室構成です。同じく2016年4月に研究開発基盤センターに新たに設置されたデータサイエンス部とも協力して、国立循環器病研究センターの臨床研究をさらに活発にすべく日々活動しています。臨床試験推進センターの理念とミッションは以下の通りです。
【理念】
国循の理念である「循環器疾患の究明と制圧」を、新規医療技術開発と既存医療技術の最適化に資する臨床試験の実施を通して実現する。
【ミッション】
- 基礎研究から橋渡し研究、さらに臨床研究・治験への切れ目のない開発支援を行うことにより、国循の研究成果の実用化を目指す。
- 臨床研究中核病院の選定を獲得し、理念とミッションを実現するための環境を整備する。
- 臨床試験の実施を通じて、医療における質の高い科学的根拠を発信することに寄与し、社会からの揺るぎない信頼を確立する。
- 高度の専門性と実行力、高い倫理観、リサーチマインドをもつ人材を養成し、質の高い臨床試験の実施に貢献する。
CRC室には、治験・臨床試験を支援するCRC 8名(常勤2名、非常勤6名)と製造販売後調査を担当する診療情報管理士2名(非常勤)が勤務しています。また、治験事務局である治験推進室には、2名(常勤1名、非常勤1名)が勤務しています。治験推進室では、治験事務局業務並びに治験審査委員会事務局業務も行っており、治験関連事務手続き、契約ならびに研究者や院内関連部署に対するインセンティブの付与等を担当しています。2015年度以降、IRBをペーパーレス化して事務手続きの効率化や迅速化を図っています。治験(企業治験や医師主導治験)並びに循環器病における希少疾患や医療機器などの臨床試験に対し、特に質の高い治験・臨床研究の実施を目指し支援しています。また、医薬品・医療機器の製造販売後調査支援も継続的に行ってきました。
国立循環器病研究センターは、2011-2015年度に早期・探索的臨床試験拠点施設として活動し、様々な循環器領域の治療機器を開発してきました。2016年からは脳動脈瘤治療用脳血管内ステントのファーストインヒューマン医師主導治験について支援を開始しました。また、治験以外の臨床試験の支援に関しても、主として先進医療Bや高リスクの介入研究に対し、支援を行っています。また、2016年6月には、脳卒中の臨床試験に関する日米共同ワークショップを東京で開催するなど、国際共同臨床研究支援を精力的に行っています。
さらに治験中核施設の使命である治験・臨床研究の啓発活動の一環として、当センターの市民公開講座などでの啓発ブースの出展に積極的に参画してきました。
企業治験 25件(医薬品:20件 医療機器:5件)
医師主導治験 6件(3件は国循主導治験) (医薬品:2件 医療機器:4件)
臨床研究 37件(介入研究:8件)
製造販売後調査 51件
- Qureshi AI, Palesch YY, Barsan WG, Hanley DF, Hsu CY, Martin RL, Moy CS, Silbergleit R, Steiner T, Suarez JI, Toyoda K, Wang YJ, Yamamoto H, Yoon BW. Intensive Blood-Pressure Lowering in Patients with Acute Cerebral Hemorrhage. New England Journal of Medicine. 375, 1033-1043, 2016.
- Yamamoto H. Use of personal information in medical research in Japan. Lancet. 388, 1981-1982, 2016.
- Toyoda K, Yamamoto H, Koga M. Network for Clinical Stroke Trials (NeCST) for the Next Stroke Researchers in Japan. Stroke. 47, 304-305, 2016.
- 平瀬 佳苗, 福田 真弓, 岡崎 周平, 魚谷 美保子, 大原 博美, 古川 あけみ, 豊田 一則, 山本 晴子. 研究者主導型臨床試験における限られた資源を効率的に用いたモニタリング手法の検討. 薬理と治療. 44, s150-s154, 2016.