薬剤部
研究活動の概要

 近年の医療において薬物療法の果たす役割は大きく、特に医薬品の適正使用は、治療に影響を与える重要な要因である。このような中、薬剤部では、医薬品の適正使用の推進を目的とし、調剤、製剤、医薬品管理等の基本的な薬剤業務に加え、薬剤管理指導、医薬品情報管理、副作用モニタリング、薬物血中濃度モニタリング等の業務を行ってきた。当センターの基本方針に従い、薬剤部における研究活動は、医薬品の適正使用や薬剤管理指導に加え、循環器用薬等の薬物動態や薬剤疫学に焦点を合わせた研究を中心に行っている。また、最近では、薬物代謝の遺伝子情報に関する研究も行っている。

具体的には以下のテーマに基づいた研究を実施している。

  1. 抗不整脈薬、免疫抑制剤、抗菌薬の薬物動態に関する研究
  2. 薬物血中濃度モニタリング(TDM)の臨床的有用性に関する研究
  3. 循環器用薬に関する薬剤疫学研究
  4. 副作用や相互作用に関する調査研究
  5. 薬剤業務に関連する調査研究

2016年の主な研究成果

抗凝固薬のワルファリンと抗菌薬のリネゾリドの相互作用に関する文献は現在まで一報のみである。今回、左室補助人工心臓患者でワルファリンとリネゾリドの相互作用を後ろ向きに調査し、相互作用があることを明らかにした。

抗不整脈薬のアミオダロンは、様々な心外副作用を有する薬剤である。今回、アミオダロンの副作用の一つである甲状腺機能障害の危険因子についての後ろ向き調査を行った。その結果、拡張型心筋症と心サルコイド-シスが甲状腺機能亢進症の危険因子であることを明らかにした。逆に甲状腺機能低下症の危険因子は、TSHが高値、フリーT4が低値群であることを明らかにした。

抗不整脈であるシベンゾリンの血中濃度モニタリング(TDM)を行うことで副作用である高血糖を軽減できるかどうかについての後ろ向き調査を行った。その結果、継続的なTDMを行うことで高血糖の副作用を減少させることが明らかになった。また、肥大型心筋症の治療にシベンゾリンを使用している場合は高血糖リスクが高いことを明らにした。

研究業績
  1. Kinoshita S, Wada K, Matsuda S, Kuwahara T, Sunami H, Sato T, Seguchi O, Yanase M, Nakatani T, Takada M. Interaction between Warfarin and Linezolid in Patients with Left Ventricular Assist System in Japan. Internal Medicine. 55, 719-724, 2016.
  2. Kinoshita S, Hayashi T, Wada K, Yamato M, Kuwahara T, Anzai T, Fujimoto M, Hosomi K, Takada M. Risk factors for amiodarone-induced thyroid dysfunction in Japan. Journal of Arrhythmia. 32, 474-480, 2016.
  3. Mukai Y, Wada K, Fujimoto M, Hosomi K, Kuwahara T, Takada M. Long-term impact of therapeutic drug monitoring on the risk of hypoglycemia in HOCM patients on cibenzoline therapy. International Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics. 54, 795-803, 2016.
  4. 和田 恭一. 虚血性心疾患治療薬. 薬局. 67, 33-37, 2016.
  5. 島本 裕子. SIRS患者における薬物動態の考え方について教えてください. 月刊薬事. 58, 731-733, 2016.
  6. 和田 恭一. 薬物投与管理. 新 心臓血管外科管理ハンドブック 改訂第2版. 102-119, 2016.
  7. 和田 恭一. 治療薬の薬理と薬学管理上の注意点. 病気とくすり 2016 基礎と実践Expert’s Guide 薬局 2016年増刊号. 67, 381-390, 2016.
  8. 島本 裕子. 臨床現場で役立つ!実例から学ぶTDMのエッセンス. じほう. 2016.
  9. 和田 恭一. SCUでの薬剤管理. SCUグリーンノート. 48-55, 2016.
  10. 和田 恭一. 心不全の薬物治療と薬学的ケアの実際. 病態と薬理を理解して薬学的ケアを実践する 心不全. 58, 15-28, 2016.