佐田 誠 医師

国立循環器病研究センター健康サポートセンターでの役割

睡眠専門医として、循環器病の予防・治療のために、睡眠時無呼吸症候群に関する的確な診療を提供します。

佐田 誠医師のプロフィール

1989年山形大学医学部卒業。1993年山形大学医学博士取得後、国立がんセンター研究所研修医、山形大学医学部第一内科助手等を経て、1997年米国国立衛生研究所 (NIH) に客員研究員として留学。帰国後、山形大学医学部講師を経て、2006年国立循環器病センター医長、2008年感染対策室室長。日本内科学会、日本呼吸器学会、日本睡眠学会、日本感染症学会、日本環境感染学会などに所属。循環器領域に精通する呼吸器専門医、睡眠専門医、感染管理医を目指すとともに、良き夫・父として(?)日々奮闘している。趣味は愛犬(コーギー)との散歩、乗馬(2017年4級ライセンス取得)、ゴルフ(のつもりですが、ここ10年クラブを握っていません!)。座右の銘は「Que Sera, Sera」。

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ぐっすり (Good sleep) で循環器病を制圧する

睡眠時無呼吸症候群 (SAS) は 1970年代あたりから世界的に認識されるようになりました。本邦で SAS という疾患名が広く一般に知られるきっかけになったのが 2003年の山陽新幹線運転士の居眠り事件でしょう。SASに対する考え方はここ20年の間に大きく変化しています。当初は無呼吸による睡眠障害に大きくスポットが当てられていましたが、最近では様々な疾患、特に循環器病との関連が強く指摘されるようになってきました。SAS があると循環器病に罹患しやすいのです。またすでに循環器病を持っている場合、SAS の存在がその循環器病にさらに負担をかけることもわかってきました。まさに「寝ている間に病気は作られる」のです。米国での 18 年間の追跡研究では、SASがあると、循環器病による死亡リスクが 5.2 倍になることがわかっています。SASの治療は循環器病の病態を改善させると同時に、循環器病の予防にもつながる可能性があります。
考えてみれば、長い人生の中で約3分の1は寝ているのです。最近ようやくこの睡眠の重要性が指摘されてきましたが、私たちはこれまで以上にこの人生の3分の1の送り方に注意をはらうべきでしょう。

経歴

1989年  3月  山形大学医学部 卒業
1993年  3月  山形大学大学院医学研究科修了(医学博士)
1994年  5月  国立がんセンター研究所 薬効試験部
1995年  11月  山形大学医学部第一内科 助手
1997年  7月  米国国立衛生研究所 (NIH) 客員研究員
2002年  5月  山形大学医学部第一内科 講師
2006年  4月  国立循環器病センター 臨床検査部細菌免疫検査室 医長
2008年  8月  国立循環器病センター 感染対策室 室長
2012年  4月  国立循環器病研究センター 呼吸器・感染症診療部 医長

専門医・認定医

日本呼吸器学会指導医、専門医
日本内科学会認定内科医
日本睡眠学会専門医
日本感染症学会評議員、ICD認定医
日本環境感染学会評議員
日本肺高血圧・肺循環学会評議員
循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(2010年)研究協力員

テレビ、雑誌等で取り上げられた取材内容


MBS毎日放送【医のココロ】

加齢と健康長寿「肺〜COPD〜」 2015年6月27日放送.https://www.mbs.jp/inokokoro/archive13.shtml


高齢者の肺炎「高齢者の肺炎とは?」 2015年12月12日放送.https://www.mbs.jp/inokokoro/archive18.shtml


高齢者の感染症「菌とウイルス」 2017年12月16日放送.
高齢者の感染症「結核」 2018年1月13日放送. https://www.mbs.jp/inokokoro/archive37.shtml


ラジオNIKKEI【心臓財団 虚血性心疾患セミナー】
  「心血管疾患に合併した呼吸器疾患の治療」 2015年11月24日放送.

http://medical.radionikkei.jp/kyoketsusei/ondemand/kyoketsusei-151124.html


プレジデントFamily
お父さんの健康は家族の支え「その眠気、いびきは危険信号!? —睡眠時無呼吸症候群—」 2010年11月号.

コラム1  医師としての原点

 今好きな歌がある。その歌には、若い頃に亡くなった自分の親に対しての想いが綴られている。認めてくれる言葉もないまま亡くなった親に対して、大人になった自分が問いかける。
「これまでの自分の生き方を認めてくれますか」
本当に認めてもらいたい人がもうこの世にいないというのは寂しいものである。しかしきっと見守ってくれているという確かな想いもそこにはあると思う。
 自分が医師になったのは、開業医であった母方の祖父の影響が大きい。私が小学生の頃、祖父は和歌山県の御坊という所で開業医として働いていた。夏休みになると祖父の家に行くのが年中行事の1つで、毎年とても楽しみにしていた。庭にある井戸水を汲んだり、海釣りに行ったり、アイスクリーム売りのアルバイトをしていた叔父さんから売れ残ったアイスをもらったり、生まれて初めて人魂を見たり、とにかく思い出いっぱいである。そして診察室という場所を子供心に初めて知ったのもこの時である。初めは楽しいというより、未知の世界に足を踏み入れるような不思議な感覚があったのを今もはっきりと覚えている。ある時、町内の夏祭りで足にケガをした若者が運ばれてきた。足じゅう血だらけであったが、祖父はいつもどおり淡々と診察し、手際よく処置をした。初めはこわばっていた若者の顔も最後には笑顔になっていた。「先生、本当にありがとうございます。」患者であるその若者だけでなく、周りの人みんなが祖父に向かって何回も頭を下げていた。小学2年生の自分は憧れにも似た気持ちでその光景をずっと眺めていた。  私が小学3年生の時、当時まだ大学院生であった叔父さん(祖父の長男)が実家に帰省中に急に亡くなった。心臓死だったようだ。自分がいながら助けられなかったと、祖父の落ち込みようといったらなかった。小学3年生は何を思ったか、「おじいちゃん、ぼくお医者さんになるよ。」と言っていた。祖父はとても喜んでくれた。その頃、学校で将来なりたいものというテーマの作文を書く機会があったが、タイトルは「お医者さん」だった。
 医学部に入るのは難しいのだということがわかったのはだいぶ経ってからだった。でも志望変更はしなかった。祖父に会うたびに医師という職業についていろいろ聞いた。祖父はいつもうれしそうに話してくれた。1回目の受験で失敗し、浪人が決まった時も、笑顔で「来年また挑戦すればいい」と言ってくれた。その姿を見て何かとても申し訳なく思った。来年は絶対に合格するんだと心に誓った。合格した時も、一番リアクションが大きかったのは祖父だった。受話器を耳から1メートルくらい離しても充分聞こえるような大きな声で「おー、そうか!おめでとう!よかったなあ。」と言ってくれた。しかし医学部に入学し5年程経った時、祖父は膵臓がんで倒れた。かなり進行していて、ほとんど口も聞けない状況だった。見舞う時間がなかなか取れなかったので、白衣姿の自分の写真を送った。年末年始の休みを利用してお見舞いに行った。状況から考えて会えるのはこれが最後だと思っていた。帰り際に、「僕、おじいちゃんのような医者に必ずなるから。」と祖父の耳元で伝えた。今まで全く声など出せなかった祖父が「おー、頼むぞ」と、合格を知らせたあの時のような大きな声で応えてくれた。それが最後の会話だった。
 医者になって20年以上が経過した。これまで決断を迫られるようないくつかの分岐点があったが、そのたびに医師としての自分の原点を思い出して、進む道を決めてきた。誰にでも今の自分の原点があると思う。自分にとっての医師としての原点は、小学生の頃に何度も足を踏み入れた、祖父のあの診察室にあるような気がしている。そして現在、祖父が眠る京都に近い大阪で働いている。  医師としての、これまでの自分の生き方を、祖父は認めてくれるだろうか。日々そう自分に問いかけながら、これからも精進していこうと思っている。
(2013年7月 呼吸器ケア:FRONT ESSAYより)

コラム2  睡眠時無呼吸症候群 (SAS) と循環器病〜そのいびきが危ない!〜

 睡眠時無呼吸症候群は、文字通り寝ている間に何回も呼吸が止まる病気です。英語では Sleep Apnea Syndrome といって、頭文字をとって SAS(サスと読みます)と呼ばれています。睡眠中、平均して 1 時間に 5 回以上、それぞれ10 秒以上呼吸が止まる場合は、この症候群の可能性があります。
 国立循環器病研究センターでは年間約 500人の方が検査を受け、うち約80%がこの症候群の疑いがあると診断されています。  この症候群は単に呼吸が止まるだけ(の病気)ではありません。心臓、脳、血管に負担をかけるのです。実は、睡眠時無呼吸症候群があるだけで高血圧症、脳卒中、狭心症、心筋梗塞など循環器病を合併する危険が高まることがわかっています。無呼吸回数が多くなるにつれて、つまり重症になればなるほど、そのリスクは高くなります。
 しかし、一方で、この症候群の治療をきちんと受けると、長生きできる可能性があることもわかっています。
 いびきは無呼吸の前兆です。そのため、いびきは睡眠時無呼吸症候群の患者さんの多くに認められます。しかしこの症候群はいびき以外には自覚症状が出にくい病気です。昼間の眠気を自覚される方もいますが、それは半数程度で、なかなか自分だけではわかりにくい病気なのです。周りの人から寝ている時のいびきや無呼吸を指摘されている方は、是非専門医療機関を受診してください。そして、周りでいびきがひどい方や寝ている間に呼吸がしばしば止まる方がいたら、ぜひ受診を勧めてあげてください。
(2013年11月「知っておきたい循環器病あれこれ」第101号より)