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移植医療部

対象疾患・治療法

対象疾患

従来の治療法では救命ないし延命の期待が持てない以下の重症心疾患

  • 拡張型心筋症
  • 肥大型心筋症(拡張相肥大型心筋症)
  • 拘束型心筋症
  • 虚血性心疾患(広範囲梗塞後のいわゆる虚血性心筋症)
  • 急性心筋炎(劇症型心筋炎含む)
  • 心サルコイドーシス
  • 筋ジストロフィーに伴う2次性心筋症
  • その他の二次性心筋症(例:周産期心筋症・薬剤誘発性心筋症・不整脈原性右室心筋症・Danon病などの蓄積疾患に伴う心筋症など)
  • 修復不能で心不全を呈する先天性心疾患
  • 日本循環器学会心臓移植適応小委員会にて承認される心臓疾患
  • 上記各種疾患に対する心臓移植例

注)日本循環器学会 心臓移植委員会ホームページを参照ください。
http://www.j-circ.or.jp/hearttp/

治療法

心不全薬物治療全般

β遮断薬、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬、利尿剤、強心剤、PDE3阻害剤、カルペリチドといった基本的心不全薬物治療についても豊富な症例経験から、より適切な薬剤を選択し、治療を行います。

心不全に対する非薬物治療

心不全に対するペースメーカー治療(植込み型除細動器、心室再同期療法含む)やカテーテルによる弁膜症治療、外科的手術などの非薬物療法全般についてはそれぞれ専門分野の心臓血管内科、外科医師と連携し、適切な治療選択および実際の治療を行います(詳細はそれぞれの科のホームページをご覧ください)。

機械的補助循環治療(図4)

大動脈バルンパンピング(IABP)・経皮的心肺補助装置(PCPS)・補助循環用ポンプカテーテル(Impella)治療

心臓血管外科と連携し、IABPやPCPS、Impellaなどを用いて劇症型心筋炎や周産期心筋症、広範囲心筋梗塞などによる急性心原性ショック症例に対する急性期治療を行います。年齢や基礎疾患などにより心臓移植適応外と判断される症例であっても、これら機械的補助循環治療により自己心機能の回復が期待される場合には上記治療を行っています。また当院では補助人工心臓治療のバックアップがあるため、より積極的に上記治療を行うことができます。

急性心原性ショック症例に対する補助人工心臓治療(図5)


心臓血管外科と連携し、上記と同様の劇症型心筋炎や周産期心筋症、広範囲心筋梗塞などによる急性心原性ショック症例に対する補助人工心臓治療装着を行います。

これら急性心原性ショック症例に対して、従来本邦ではPCPSが主要な機械的循環補助装置として使用されてきました。しかしながらPCPSは下肢阻血や出血性合併症のリスクが高く、非生理的な血行動態による左室後負荷増大、酸素化血液の分布不均衡(North-South syndrome)といった様々な問題点が指摘されています。そのため当院では適切な時期でのPCPSから補助人工心臓治療への移行や、PCPSとImpellaの併用など、現在本邦で使用することのできるすべての機械的補助循環機器を駆使して治療を行っています。このような心原性ショック症例に対して使用する補助人工心臓は通常体外設置型といわれるものを使用しますが、現在当施設では当施設で研究開発された2機種の体外設置型補助人工心臓を使用しています。

心臓移植適応検討と心臓移植適応患者に対する植込型補助人工心臓治療(図6)

心不全が従来の内科的・外科的治療の限界の状態にあり、本人・家族が臓移植治療を希望する場合には各種検査、評価を行い、症例毎に心臓移植適応を検討します。心臓移植知慮を受けるにはその適応基準をクリアする必要があり、年齢(65歳未満)や様々な医学的条件、社会的条件を評価検討したうえで対処患者の心臓移植適応の有無を決定します。心臓移植適応が承認されると、日本臓器移植ネットワークへ心臓移植希望者として登録し、各症例の重症度に応じて心臓移植待機状態となります。当院ではすでに50症例以上の心臓移植を実施しているため、特殊な症例を除き、自施設の医学的臓器移植適応検討会で検討し、適応と判断されれば、直接患者を移植希望患者として登録することができます。

心臓移植待機症例は移植適応検討時点で高度の心不全状態であるため、長期の待機期間を安全に過ごすためには多くの症例で機械的循環補助が必要となります[2019年末までに心臓移植を受けた512例中480例(93.8%)が補助人工心臓を装着された症例でした]。現在本邦においては心臓移植待機のための植込型左室補助人工心臓が保険診療として認められており、植込型左室補助人工心臓装着下に在宅心臓移植待機が可能です。実際に在宅心臓移植待機を行うには家族の方と24時間同居していただくことが必要とはなりますが、一部の安定した症例では植込型左室補助人工心臓装着下に学校や職場への復帰も可能です。

心臓移植治療(図7)

ドナーからの臓器提供により心臓移植治療を受けることができます。心臓移植手術は当院心臓血管外科医が実施します。手術は全身麻酔下に実施され、自身の心臓を摘出した後にドナーの心臓を移植します。術後は集中治療室に入室し、術後急性期の加療を継続します。心臓移植直後より拒絶反応予防の免疫抑制剤を投与開始し、同時に感染症予防の治療も開始します。順調に経過すれば数日で集中治療室から移植・重症心不全病棟に移動し、クリーンルームに入室します。移植術後1週目、2週目、3週目、5週目、7週目とそれぞれ心臓カテーテル検査・心筋生検検査を受け、移植心の機能や拒絶反応の有無を確認します。

経過に問題がなければ心臓移植後5週目に退院が可能となりますが、退院後も移植後の各種治療や感染完全予防の生活習慣を継続する必要があります。当院では2021年6月の時点でこれまでに145人の心臓移植を実施しました。心臓移植を受けた患者さんの多くは定期的な通院と検査入院以外は健康な方とほぼ変わらない生活を送られており、就職が決まり社会復帰された方や、結婚し新たな家庭を築かれた方など、お元気に過ごされています。

Destination therapy(DT)

2021年5月より重症心不全患者に対する最終的な治療手段として心臓移植の適応に関係なく植込型左室補助人工心臓を装着することができるようになりました。実際に使用する補助人工心臓は心臓移植への橋渡し治療で使用するものと同じで、心臓移植適応から除外された症例であってもDT治療が適応となる可能性があります。心臓移植治療と同様に、DTが適応となるかどうかは当院にて各種検査を受け、その適応の有無を検討する必要があります。DTとして植込型左室補助人工心臓を装着された場合、心臓移植待機目的に植込型左室補助人工心臓を装着された方と生活はほとんどかわりませんが、退院から6か月間安定して過ごされた方では家族の方との24時間同居は必須ではなくなり、おひとりで過ごすことも可能となります。ただし自動車の運転は移植への橋渡し目的であっても、DTであっても許可されません。

最終更新日:2023年07月04日

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