薬剤部
研究活動の概要

近年の医療において薬物療法の果たす役割は大きく、特に医薬品の適正使用は、治療に影響を与える重要な要因である。このような中、薬剤部では、医薬品の適正使用の推進を目的とし、調剤、製剤、医薬品管理等の基本的な薬剤業務に加え、薬剤管理指導、医薬品情報管理、副作用モニタリング、薬物血中濃度モニタリング等の業務を行ってきた。当センターの基本方針に従い、薬剤部における研究活動は、医薬品の適正使用や薬剤管理指導に加え、循環器用薬等の薬物動態や薬剤疫学に焦点を合わせた研究を中心に行っている。

具体的には以下のテーマに基づいた研究を実施している。

  1. 抗不整脈薬、免疫抑制剤、抗菌薬の薬物動態に関する研究
  2. 薬物血中濃度モニタリング(TDM)の臨床的有用性に関する研究
  3. 循環器用薬に関する薬剤疫学研究
  4. 副作用や相互作用に関する調査研究
  5. 薬剤業務に関連する調査研究

2015年の主な研究成果

ニカルジピン塩酸塩注射液は、ポリ塩化ビニル(PVC)ルートに吸着し、含量低下することが報告されているが、実際の臨床の場で使用されるPVC点滴ラインにおける吸着率は明らかではない。今回の研究で、PVCラインの長さ・内径・流速がニカルジピンのPVCに対する吸着率に影響を与えることが明らかになった。また、PVCルートを用いた場合、ニカルジピン点滴開始後1時間以内に残存率が85%となり、約3時間以内に飽和することも明らかとなった。これらのことから、ニカルジピン使用時はPVCフリーラインの使用が推奨されるが、PVCラインを用いた場合は、残存率の影響を十分予測して投与する必要があることが示唆された。

研究業績
  1. 小田 亮介. 非がん・高齢者疾患の緩和ケアチーム―国立循環器病研究センターの取り組み―. 月刊薬事. 57, 1993-1998, 2015.
  2. 稗田 道成, 和田 恭一 編. 処方 Q&A 循環器. 南山堂, 東京. , , 2015.
  3. 小原 直紘, 山下 大輔, 原田 和彦, 佐藤 友紀, 和田 恭一, 粉川 俊則, 早川 直樹, 桒原 健. ポリ塩化ビニル製点滴ラインに対するニカルジピンの吸着に関する検討. 日本病院薬剤師会雑誌. 51, 756-759, 2015.
  4. 桒原 健, 瀬戸 裕一, 佐藤 美和子, 轡 基治, 豊島 篤志, 森川 昭正, 佐々木 孝雄, 宍戸 稔聡, 安田 聡, . 被災地における保険薬剤師の活用に関する研究. 日本未病システム学会雑誌. 21, 72-78, 2015.