薬剤部
研究活動の概要

近年の医療において薬物療法の果たす役割は大きく、特に医薬品の適正使用は、治療に影響を与える重要な要因である。このような中、薬剤部では、医薬品の適正使用の推進を目的とし、調剤、製剤、医薬品管理等の基本的な薬剤業務に加え、薬剤管理指導、医薬品情報管理、副作用モニタリング、薬物血中濃度モニタリング等の業務を行ってきた。当センターの基本方針に従い、薬剤部における研究活動は、医薬品の適正使用や薬剤管理指導に加え、循環器用薬等の薬物動態や薬剤疫学に焦点を合わせた研究を中心に行っている。

具体的には以下のテーマに基づいた研究を実施している。

  1. 抗不整脈薬、免疫抑制剤、抗菌薬の薬物動態に関する研究
  2. 薬物血中濃度モニタリング(TDM)の臨床的有用性に関する研究
  3. 循環器用薬に関する薬剤疫学研究
  4. 副作用や相互作用に関する調査研究
  5. 薬剤業務に関連する調査研究
2014年の主な研究成果
  • 全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome; SIRS)患者の病態を表すひとつの概念として、近年augmented renal clearance(ARC)が提唱されている。ARCとは炎症性反応により薬物などの腎クリアランスが増大する現象を指す。SIRS患者においてARCが発現した場合、通常の薬物投与量では期待する血中濃度が得られない可能性があるため、積極的なTDM実施と投与量の検討が必要である。
  • ヒト羊膜、絨網膜それぞれから形態、表面抗原発現パターン、多分化能について、類似した細胞を分離することができた。それぞれの組織から得られた細胞には、in vitroにおいて液性因子による細胞死抑制作用やT細胞抑制作用、in vivo(マウス)においては血流改善作用や急性移植片体宿主病の改善が認められた。以上のことから、羊膜および絨網膜由来細胞は再生医療における細胞ソースとして有用な可能性があると考えられた。
研究業績
  1. Yamahara K, Harada K, Ohshima M, Ishikane S, Ohnishi S, Tsuda H, Otani K, Taguchi A, Soma T, Ogawa H, Katsuragi S, Yoshimatsu J, Harada-Shiba M, Kangawa K and Ikeda T. Comparison of Angiogenic, Cytoprotective, and Immunosuppressive Properties of Human Amnion- and Chorion-Derived Mesenchymal Stem Cells. PLOS ONE. 9, , 2014.
  2. Yagura H, Shibata M, Kushida H, Yoshino M, Nakata I, Uehira T, Morita S, Shirasaka T, Teraoka R, Kuwahara T and Kitagawa S. Thermal Stability of Tenofovir Disoproxil Fumarate in Suspension. Japanese Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences. 40, 230-236, 2014.
  3. 日笠 聡, 小島 賢一, 桒原 健, 山元 泰之. HIV感染症治療のガイドラインと抗HIV薬の処方状況の変遷. 日本エイズ学会誌. 1, 4-11, 2014.
  4. 島本 裕子, 福田 剛史, 田中 一彦, 定光 大海. SIRS患者の薬物体内動態におけるARC- Augmented Renal Clearanceの影響:TDMの重要性. TDM研究. 31, 57-61, 2014.
  5. 和田 恭一. ケーススタディ「利尿薬」 薬学的管理のポイント. レシピ 2014年春号. 13, 138-142, 2014.
  6. 生駒 歌織, 和田 恭一. 抗不整脈薬を内服する患者への服薬指導のポイント. 調剤と情報. 20, 1714-1717, 2014.
  7. 和田 恭一. 心臓移植患者に対する薬剤師の役割. 医療. 68, 189-193, 2014.
  8. 岩澤 真紀子. 米国で生き残るための自発的な薬剤師育成. 薬事. 56, 2016-2021, 2014.
  9. 岩澤 真紀子. 米国の医療現場から学ぶディフェンス戦略. 医療の質・安全学会誌. 9, 56-62, 2014.