麻酔科
研究活動の概要

麻酔科として2014年は2400症例の全身麻酔管理をスタッフ9名、レジデント修練医8名の17名で管理しました。約半数は心臓血管手術管理であり、20%程度が緊急手術となっています。そのため、夜間祝祭日は麻酔科医3名体制で複数の緊急手術に対応できるように勤務態勢を組んでいます。大動脈解離、新生児緊急手術などが並列で夜間に施行されることも多くあります。また、心臓外科術後集中室管理に1-2名の麻酔科医を平日昼間は派遣してきました。

臨床研究では近赤外分光法装置での脳血流測定を機種ごとにどのように異なるかを研究しています。また、体性感覚誘発電位を利用した脊髄機能モニタリングでテータ蓄積をしております。フィブリノーゲン製剤やクリオプレシピテート製剤などの使用とその効果についてもローテムなどを使用して計測を行っています。

経食道心エコーのデータはほとんどの心臓大血管手術で収集してハードディスクにすべて保存しております。このデータからの解析により心不全症例での拡張心機能、右心機能などの解析を行っています。また、この多くのデータを利用してTEE講習会や、日本心エコー図学会などの講演をおこなっています。3D画像のデータから大動脈人工弁や僧帽弁人工リングの至適サイズを同定する研究も行っています。

2014年9月には日本心臓血管麻酔学会を主催し、日本全国の心臓麻酔医1000名以上に出席して頂きました。日本における心臓麻酔の中心的施設として活動できるように様々なシンポジウムを組みこみ、センターの心臓外科医を中心として多くの講演を発表して頂きました。心臓大血管手術もこの数年でステント手術、小切開手術、ロボット手術、カテーテル弁手術など大きく変遷してきました。心臓麻酔も追従して進歩していく必要があります。複数のハイブリッド手術室なども必要となるでしょう。

エコーガイド下神経ブロック、3D経食道心エコー、新しい脳脊髄モニタリング、新しい止血製剤など多くの機材、道具を有効に使用して適切かつ迅速な診断と治療をおこなえるよう対応していくことが重要となります。より多くの優秀な心臓麻酔科医を育成していくための研修プログラムの構築が大切だと考えています。

2014年の主な研究成果

近赤外線分光法装置数種類を利用して簡易的脳血流測定をおこないました。また、周術期TEEによる評価診断を精度よくおこなうため、大動脈弁狭窄、僧帽弁形成術における至適人工弁サイズ、人工リングサイズの計測を施行した。東京、札幌での麻酔科医を対象としたTEE講習会で講師2名を派遣して講演をおこないました。胸腹部大動脈瘤手術症例においてMEP測定、脊髄スパイナルドレナージの有無についての全国調査を現在行っております。

研究業績
  1. Kuwajima K, Yoshitani K, Kato S, Miyazaki A, Kamei M and Ohnishi Y. Deep hypothermic circulatory arrest for hemiarch replacement in a pediatric patient with moyamoya disease. Journal of Anesthesia. 28, 613-617, 2014.
  2. Maeda T, Yoshitani K, Inatomi Y and Ohnishi Y. Inaccuracy of the FloTrac/Vigileo (TM) System in Patients With Low Cardiac Index. Journal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesia. 28, 1521-1526, 2014.
  3. 桑島 謙. Ⅰ. ベッドサイド基本手技 1.救急蘇生処置. 脳神経外科プラクティス   2 脳神経外科の基本手技 . 2, 3-6, 2014.
  4. 吉谷 健司. Ⅰ. ベッドサイド基本手技 3. 全身麻酔の方法. 脳神経外科プラクティス   2 脳神経外科の基本手技 . 2, 13-17, 2014.
  5. 南 公人. Ⅰ. ベッドサイド基本手技 4.局所麻酔のかけ方. 脳神経外科プラクティス   2 脳神経外科の基本手技 . 2, 18-20, 2014.
  6. 稲冨 佑弦. Ⅰ. ベッドサイド基本手技 5.中心静脈穿刺. 脳神経外科プラクティス   2 脳神経外科の基本手技 . 2, 21-26, 2014.
  7. 加藤 真也. Ⅰ. ベッドサイド基本手技 9.動脈穿刺と動脈ラインの留置. 脳神経外科プラクティス   2 脳神経外科の基本手技 . 2, 39-42, 2014.
  8. 加藤 真也. Ⅰ. ベッドサイド基本手技 10.末梢静脈ライン確保とトラブルシューティング. 脳神経外科プラクティス   2 脳神経外科の基本手技 . 2, 43-46, 2014.
  9. 蓮輪 恭子, 吉谷 健司. 第9章 大血管手術での神経モニタリング 弓部大動脈手術. 術中神経モニタリングバイブル. , 317-322, 2014.
  10. 蓮輪 恭子, 吉谷 健司. 第9章 大血管手術での神経モニタリング 大動脈ステント手術. 術中神経モニタリングバイブル. , 329-336, 2014.