臨床栄養部
研究活動の概要

 臨床栄養部は、栄養管理部門とNST活動を統括している。
また、「かるしおレシピ」を始めとする国循食事業「かるしおプロジェクト」の中心的部門でもある。

 臨床栄養部は循環器疾患治療を目的に、塩分制限・脂質組成・エネルギー量等を考慮すると共に、嗜好的にも満足できる患者食に取り組み、かつ食品・経腸栄養製品・栄養補助食品等も駆使し患者の栄養管理を行っている。また、循環器病の専門病院としてワーファリン服用患者のワーファリンコントロールのための食事の選択のひとつとして低ビタミンK食提供対応も行っている。さらに、脳卒中後の咀嚼・嚥下障害に対応した嚥下訓練食も病状によりステップアップができるよう0~3および嚥下移行食の4段階を提供している。

 その他、チーム医療として、NST(Nutrition Support Team)では、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師を含む多職種共同で栄養状態の把握から適切な栄養投与に関する治療活動を進めている。その一環として、栄養評価を基に中長期腸管不使用による下痢の改善を図るための経口食の内容および投与法の検討、褥瘡者の栄養介入、薬効減弱の影響回避の食事内容の見直しを進めている。また、これらの成果を日本静脈経腸栄養学会で発表した。
臨床栄養部が参加しているチーム医療は他に褥瘡回診、嚥下回診、代謝回診、緩和回診、に参加している。

 栄養食事指導においては、栄養治療の重要性を認識してもらうべく入院・外来患者に個別栄養指導、糖尿病透析予防指導、集団指導として高血圧教室、腎臓病教室、糖尿尿病教室、心リハ教室を行っている。

 イベントとして、国循フェスタ、糖尿病ディー、腎臓病ディー、などにも積極的に参加している。

 その他、外来患者や家族を対象にした調理講習会も定期的に開催している。
また、家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia: FH)に対する治験にも関与している。

 栄養管理の重要性は、生活習慣が要因として起こる循環器病疾患の治療・予防策として広く認められているところである。当部は循環器病の専門病院の治療食の中心を担う責任部門として、研究・教育活動を進めている。これまで塩分やカロリーにも配慮した美味しい病院食を目指して作成してきた各種の治療食に関するコンテンツを、知的資産部と協力し国循の知的資産としての活用化に取組んでいる。その中で、病院食のコンセプトに基づく弁当作成やデジタルレシピの事業化を進めており、国循弁当の販売は、大阪、京都、東京、千葉と全国に広がっている。さらに、住友商事、阪急電鉄などの社員食堂でも国循食の提供がなされ、メディアでも取り上げられた。デジタルレシピは大阪市大、大阪府大と連携し、健康献立SORAとして糖尿病におけるカーボンコントロールや食育の面も充実させ、パソコンやスマートフォンによる一般者の利用も拡大した。さらに、患者はじめ多方面から要望のあった国循の食事をレシピ本にまとめた「国循の美味しいかるしおレシピ」シリーズも以下の実績を上げている。

  • かるしおレシピシリーズ累計発行部数:373,200部
  • 各シリーズ(計4冊):
    • 2012/12/19 「国循の美味しい!かるしおレシピ」
    • 2013/12/18 「続 国循の美味しい!かるしおレシピ」
    • 2014/04/10 「saita mook美味しい!かるしおレシピ春」
    • 2015/02/26 「1日1品から始める 国循のかるしおレシピ練習帖」
2015年4月15日のAmazon書籍販売では、専門料理部門の1~4位すべてをかるしおレシピシリーズが独占した。

 その他、循環器病予防のために、地域主導で循環器病予防に取り組む動きを支援するとともに、地産地消・地域振興にも貢献したいと考え各地の特産品(野菜、肉、魚等)を活用した「ご当地かるしおレシピ」を、平成25年度(平成26年1月23日に第1回S-1g(エス・ワン・グランプリ)大会を開催)に引き続き、平成27年3月7日に第2回を開催した。

 その他、循環器疾患の究明と克服に向け、「一人ひとりが健康でいられる社会をつくる」という願いを込めて、塩分やカロリーにも配慮し循環器疾患・予防への対応を考えた美味しい食事「かるしお」生活をひろげていくための新たな取り組みとして「かるしお認定」を行うこととし、主部門として活動している。