肺循環科
研究活動の概要

肺循環科では研究として現在3つの柱を中心に行っています。肺動脈性肺高血圧症の病態と治療、そして慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する新規肺動脈カテーテル治療の確立、そして深部静脈血栓症の治療です。肺動脈性肺高血圧症は根本的治療がなく予後は不良ですが、そのメカニズムは不明であり機序解明が必須です。その発症メカニズムに関しては、研究所分子生物学部及び病理部と共に研究を行っています。現在のトピックスとして遺伝性肺動脈性肺高血圧症におけるTGF-β/BMPシグナルの関与と種々の肺動脈性肺高血圧症における肺静脈病変の関与に関する検討です。また慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する肺動脈カテーテル治療において治療効果と安全性の両方を満たす治療を行なえるよう研究を行い、2013年は飛躍的に安全性は確立し治療数も増加しています。

具体的には以下のテーマの研究を行っています。

  1. 膠原病関連肺動脈性肺高血圧症における肺静脈病変の関与
  2. 肺高血圧症を伴うCPFE(Combined pulmonary fibrosis and emphysema)における肺静脈病変の関与
  3. 特発性・遺伝性肺動脈性肺高血圧症におけるTGF-β/BMPシグナルの関与
  4. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症における肺動脈カテーテル治療の確立
  5. 深部静脈血栓症に対するカテーテル治療の効果
2013年の主な研究成果
  • 剖検標本より肺動脈性肺高血圧症において肺静脈病変の関与及び臨床パラメーターとの関与を明らかにした。
  • 特発性・遺伝性肺動脈性肺高血圧症におけるTGF-β/BMPシグナルの関与の研究においてSmad遺伝子変異の報告を行い、またプロスタサイクリンがTGF-β/BMPシグナルに影響を与えることを示した。
  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症においてCone-beam CTを用いて閉塞病変の画像化に成功した。
  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症における肺動脈カテーテル治療において合併症を少なく治療が可能な方法を確立している。
  • 深部静脈血栓症に対して安全で効果的な治療法の確立
研究業績
  1. Ogo T, Chowdhury HM, Yang J, Long L, Li XH, Cleuren YNT, Morrell NW, Schermuly RT, Trembath RC and Nasim MT. Inhibition of Overactive Transforming Growth Factor-beta Signaling by Prostacyclin Analogs in Pulmonary Arterial Hypertension. AMERICAN JOURNAL OF RESPIRATORY CELL AND MOLECULAR BIOLOGY. 48, 733-741, 2013.
  2. Mizuno A, Niwa K, Matsuo K, Kawada M, Miyazaki A, Mori Y, Nakanishi N, Ohuchi H, Watanabe M, Yao A and Inai K. Survey of Reoperation Indications in Tetralogy of Fallot in Japan . Circ J. 77, 2942-2947, 2013.
  3. 大郷 剛. 門脈性肺高血圧症などの治療. Heart View. 17 , 787-792, 2013.
  4. 中西 宣文. 内科診療にガイドラインを生かす 循環器疾患 肺高血圧症. medicina. 50, 81-85, 2013.
  5. 中西 宣文. CTEPH治療の新展開 - 肺高血圧症治療ガイドライン(2012年改訂版)を踏まえて. 医薬ジャーナル. 49, 2821-2825, 2013.
  6. 中西 宣文. 肺高血圧症へのアプローチ ニース分類を踏まえて. 呼吸と循環. 61, 1091-1096, 2013.
  7. 中西 宣文. サルコイドーシスと肺高血圧症. 呼吸器内科. 24, 292-296, 2013.
  8. 中西 宣文. 肺循環関連疾患の診断・治療の変遷、. 今日の循環器疾患治療指針. , 815-817, 2013.
  9. 大郷 剛. 新しい診断・治療法 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術の効果と安全性. 循環器病研究の進歩. 34, 30-36, 2013.
  10. 中西 宣文. 循環器薬の使い方. 肺高血圧症の最新治療. , 1397-1399, 2013.
  11. 大郷 剛. 右心カテーテル検査. 肺高血圧症の臨床. , 97-119, 2013.
  12. 大郷 剛. 肺動脈バルーン形成術の効果と安全性. 肺高血圧症の臨床. , 248-256, 2013.
  13. 大郷 剛. CTEPHに対するバルーン肺動脈形成術の適応とその効果. 肺高血圧症の臨床. 49 , 121-128, 2013.
  14. 中西 宣文. 肺高血圧症の定義. 肺高血圧症の臨床. , 14-18, 2013.
  15. 中西 宣文. 肺動脈性肺高血圧症. 別冊医学のあゆみ 呼吸器疾患. , 319-321, 2013.
  16. 中西 宣文. 肺高血圧症の臨床分類. 肺高血圧症の臨床. , 19-28, 2013.
  17. 中西 宣文. 肺高血圧症の診断/鑑別診断. 肺高血圧症の臨床. , 63-79, 2013.
  18. 中西 宣文. 特異的PAH治療薬の併用療法. 肺高血圧症の臨床. , 152-157, 2013.
  19. 中西 宣文. 突発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(IPAH/HPAH). 肺高血圧症の臨床. , 152-157, 2013.
  20. 中西 宣文. CTEPHと鑑別を要する疾患. 肺高血圧症の臨床. , 152-157, 2013.