先進医療・治験推進部には、〇治験推進室　〇CRC室　〇DM・統計室の３つの室があります。先進医療・治験推進部では、１．企業治験の受託、準備から実施にかかる業務（特に薬事法関連業務）の実施と治験責任医師の支援、２．医師主導治験の準備から実施にかかる支援、３．治験以外の自主臨床研究の準備から実施、解析にわたる幅広い支援、４．治験・臨床研究に関連する教育・啓発活動などを主として実施しています。また、国際共同臨床研究に円滑に参加するため、海外の臨床研究関連規制にも対応できる体制の構築を目指しています。

1. 治験・自主臨床研究の実施体制整備

H19年度から「治験活性化5カ年計画」の中核病院に、H23年度からは早期・探索的臨床試験拠点（全国で5施設）に選定され、治験および自主臨床研究の支援体制を強化してきました。具体的には、治験担当CRCと自主臨床研究担当CRCの確保と育成、認定CRCや上級者CRCの養成、治験関連事務手続きおよび契約手続きの効率化と迅速化、研究者及び院内職員の治験関連業務に対するインセンティブの付与等です。また、自主臨床研究を実施しようとする研究者に対する研究相談、統計相談、データマネジメント業務支援も充実させています。H24年度は医療機器のfirst-in-human試験を安全かつ適切に行えるための体制整備として、データマネジメント支援体制のGCP対応等にも着手しました。

2. 臨床研究に関する教育活動

臨床研究部と協力して、臨床研究セミナーを年に数回開催し、臨床研究についての基礎的知識から研究計画作成方法、統計解析方法等に関する教育を実施しています。H24年度からは同じく早期・探索的臨床試験拠点である大阪大学と協力して、クリニカルリサーチプロフェッショナル講座を開催しています。また、治験に関係する院内各部署に対して治験セミナーを開催しています。

3. 市民啓発活動

治験・臨床研究に関するリテラシー向上のため、様々な啓発活動を実施しています。具体的には外来患者やその付き添い家族等を対象とした治験啓発キャンペーン（年に1，2回開催）、国循が実施する市民公開講座における治験啓発ブースの出展などです。さらに、「臨床すすむ！プロジェクト」という治験・臨床研究啓発サイトを運営し、一般市民が治験や臨床研究に関する正しい知識を得られる機会を作っています。

4. 国際共同臨床試験への対応

治験および治験以外の国際共同臨床試験に参加するための種々の体制整備（国内事務局の立ち上げ、米国法規制への対応、国内参加施設の支援、国内参加施設のモニタリング実施体制整備等）を行った結果、NIH助成の大規模臨床試験であるATACH-Ⅱに2012年中に国内15施設が参加することができ、順調に被験者の組み入れを行っています。

また、国際共同試験対応のための英語教育プログラム開発のために、語学教育の専門家と協力して、CRCやDMを対象とした英語教育を実施しました。さらに、豪州の医療機関における治験・臨床試験研修にCRC2名が参加しました。

• 米国NIH助成の国際共同試験に米国および日本の両国の法規制を遵守しつつ参加するための国内施設支援の手法を検討（日本臨床試験研究会第4回学術集会において発表）
• 複数の自主臨床研究のデータマネジメント支援を効果的に行うためのプロジェクトマネジメントの手法を開発（日本臨床試験研究会第4回学術集会において発表）
• 臨床試験における割付プログラム（24時間自動稼働）の開発
• データマネジメントにおけるデータ加工・クエリ発行ツールの開発
• グローバル多施設共同試験におけるサイトモニタリング実施体制の検討

1. 佐藤 祥一郎, 山本 晴子, Qureshi Adnan I., Palesch Yuko Y., 豊田 一則. わが国におけるAntihypertensive Treatment of Acute Cerebra Hemorrhage(ATACH)-II試験の開始　デザインと国内研究体制の構築. 臨床神経学 52, 642-650, 2012.
2. 山本 晴子. 臨床研究のススメ　医療機器の開発と臨床試験. 最新医学 67, 2817-2820, 2012.
3. 山本 晴子, 宮田 茂樹. 【心原性脳塞栓症と心房細動】 急性期治療の問題点・合併症　HIT(heparin-induced thrombocytopenia). Clinical Neuroscience 30, 1280-1283, 2012.
4. 田中 智貴, 神吉 秀明, 山本 晴子, 豊田 一則, 宮田 敏行, 長束 一行. 脳卒中診療医における観血的処置時の抗血栓薬の休薬に関する多施設アンケート調査結果. 脳卒中 34, 147-155, 2012.