麻酔科
研究活動の概要

麻酔科は手術室、カテーテル室、ハイブリッド手術室での麻酔管理を主としています。2012年は麻酔科管理が2200症例を超えて最も多い件数となりました。また、昨年度より外科系集中治療室へも2-3名の麻酔科医師を平日日勤帯に派遣しております。

研究は臨床研究を中心におこなっており、ひとつは術中経食道心エコーによる評価診断の有用性について検討しています。リアルタイム3Dによる弁評価、心機能評価を中心に計測をおこなっています。現在は術前の計測により大動脈人工弁や僧帽弁人工リングの至適サイズを推定しています。精度良く計測できれば、術中にサイジングすることなく適切な人工弁(リング)を選択することも可能となります。また、3D画像を利用することで右室機能の正確な術中評価診断も試みています。術中の脳神経機能評価およびモニタリングも重要となります。脊髄機能に対しては運動誘発電位、脳モニタリングとして近赤外分校装置を利用して持続モニタリングを施行しています。最近は、インドシアニン・グリーンをボーラス投与することによる脳血流計測をおこない、手術操作や麻酔薬による影響などを中心に測定しています。また、肺高血圧症例などを対象として上下肢の加圧による虚血耐性プレコンディショニングの効果についても検討しています。また、心臓移植など重症心不全症例に対するNO吸入の効果についても検討中です。短時間作用性β遮断薬や短時間作用性麻薬の持続投与が心機能保持に有効かどうかも検討しています。

カテーテル治療、ハイブリッド手術の増加に対応するため、適切な体温管理や麻酔循環管理による早期覚醒、早期抜管についても検討しております。

2012年の主な研究成果

早期抜管をおこなう血管手術症例で、中枢温のモニタリングとして鼓膜温測定の有用性について検討した。また、体温保持にアンダーボディブランケットが有効となることを確認した。 ハイブリッド手術に対応した麻酔管理、チーム医療について検討をおこなった。

胸腹部大動脈手術および下行大動脈手術における体性感覚誘発電位による脊椎運動野モニタリングの体温による変化およびステント手術での変化について検討した。

研究業績
  1. Ohnishi Y. Assist Circulation. Transesophageal Echocardiography 2nd edition, 270-277, 2012.
  2. Shinzawa M., Yoshitani K., Minatoya K., Irie T. , Ogino H. and Ohnishi Y. Changes of motor evoked potentials during descending thoracic and thoracoabdominal aortic surgery with deep hypothermic circulatory arrest. J Anesth 26, 160-167, 2012.
  3. Maeda T., Yoshitani K., Sato S., Matsuda H., Inatomi Y. , Tomita Y., Ogino H. and Ohnishi Y. Spinal cord ischemia after endovascular aortic repair versus open surgical repair for descending thoracic and thoracoabdominal aortic aneurism. J Anesth 26, 805-811, 2012.
  4. Kusaka Y., Yoshitani K., Irie T., Inatomi Y. , Shinzawa M. and Ohnishi Y. Clinical comparison of an echocardiograph-derived versus pulse counter-derived cardiac output measurement in abdominal aortic aneurysm surgery. J Cardiothorac Vasc Anesth 26, 223-226, 2012.
  5. Sage PT., Varghese LM., Martinelli R. , Sciuto TE. , Kamei M., Dvorak AM., Springer TA., Sharpe AH. and Carman CV. Antigen recognition is facilitated by invadosome-like protrusions formed by memory/effector T cells. J Immunol 188, 3686-3699, 2012.
  6. 大西 佳彦. 心臓手術チームに必要な条件 必要とされる心臓麻酔科医とは 麻酔科医の立場から. Cardiovascular Anesthesia 16, 67-69, 2012.
  7. 鈴木 史子, 清水 智明, 北 貴志, 大西 佳彦, 佐々木 繁太. 両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)装着中の重症拡張型心筋症患者に対する頸椎椎弓形成術の麻酔経験. Cardiovascular Anesthesia 16, 77-79, 2013.
  8. 大西 佳彦. TEEビデオ問題集. TEEビデオ問題集, 1-295, 2012.
  9. 大西 佳彦. 特殊不整脈 状態と麻酔管理上の抗不整脈対策 (1)ブルガダ症候群/QTC延長とトルサデポアン. 周術期の危険な不整脈診断のポイントと抗不整脈薬の上手な使い方, 93-98, 2012.
  10. 大西 佳彦. 周術期の危険な不整脈診断のポイントと抗不整脈薬の上手な使い方(第2回) 臨床編 特殊不整脈・状態と麻酔管理上の抗不整脈対策 ブルガダ症候群 QTc延長とトルサデポアン. 日本臨床麻酔学会誌 32, 601-605, 2012.
  11. 大西 佳彦. 【カテーテルインターベンションと麻酔】 左室低形成症候群に対するカテーテル治療と外科的治療のハイブリッドアプローチ. 麻酔 61, 1216-1220, 2012.
  12. 田口 真也, 今井 洋介, 佐々木 誠, 三宅 絵里, 吉谷 健司, 大西 佳彦. 呼吸管理に難渋した重症慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の冠動脈バイパス術(CABG)の経験. 麻酔 61, 411-413, 2012.
  13. 菱沼 典正, 田中 聡, 川真田 樹人, 川口 昌彦, 吉谷 健司, 内野 博之, 垣花 学, 松本 美志也, 瀬尾 勝弘, 山田 芳嗣. 術中運動誘発電位モニタリングの現状 アンケート調査による検討. 麻酔 61, 1291-1298, 2012.
  14. 富田 有毅彦, 亀井 政孝, 重城 聡, 堀内 縁, 桂木 真司, 大西 佳彦. 帝王切開後に遺伝性血管性浮腫による顔面浮腫を来した1症例. 麻酔 61, 1376-1379, 2012.
  15. 出井 真史, 吉谷 健司, 前田 琢磨, 大西 佳彦. 腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術におけるアンダーボディブランケットによる温風式加温システムの有用性. 麻酔 61, 1230-1233, 2012.
  16. 富田 有毅彦, 亀井 政孝, 桑島 謙, 稲富 佑弦, 前田 琢磨, 大西 佳彦. 腹部大動脈瘤手術における連続測定型耳式体温計の有用性の検討. 麻酔 61, 1234-1238, 2012.