高血圧・腎臓科は，高血圧および腎疾患に関する臨床研究を行っており，基礎的研究や他部門，他施設との共同研究も進めている。2012年には約40編の論文（うち英語論文11編）を発表し，約30題の学会発表を行った。研究課題は前年より継続しているものが多いが，新たに開始したものもある。以下に主な研究活動を示す。

1. 高血圧と遺伝子に関する研究
   厚生労働科学研究費による「ゲノム解析による原発性アルドステロン症の原因診断学の再構築」を分担し，原発性アルドステロン症患者の遺伝子を共同で解析した。また，循環器病研究開発費による「遺伝学的手法を用いた循環器疾患の病態解明に関する研究」を分担し，以前に遺伝子検査を行った症例の追跡調査を行った。
2. 高血圧と生活習慣に関する研究
   循環器病研究開発費による「コホート研究と非薬物介入研究による循環器疾患の新しい予防戦略に関する研究」を分担した。高血圧外来患者を対象として，夜間尿を用いた自己測定による食塩摂取量評価と減塩指導の効果について介入研究を行い，開始時の食塩摂取量による解析を行った。また，日本高血圧学会減塩委員会を主導し，減塩委員会報告をまとめた。
3. 震災被災地における生活習慣病に関する研究
   厚生労働科学研究費による「被災地における心不全患者の在宅医療に関する研究」を分担し，岩手県野田村における生活習慣および生活習慣病について，食塩摂取量や肥満，運動について調査した。また，減塩や運動の重要性について，現地において啓発，支援活動を行った。
4. 高血圧と血管・臓器障害に関する研究
   循環器病研究振興財団学術支援事業や循環器病研究開発費，日本動脈硬化予防研究基金の助成により，高血圧患者における心血管系の病態や臓器障害，家庭血圧，中心血圧，脈波速度，血管内皮機能について検討した。
5. 血管作動性物質やバイオマーカーに関する研究
   循環器病研究開発費による「循環器疾患の診断，予後予測マーカーの多面的探索と応用に関する研究」を分担し，動脈硬化性腎動脈狭窄の診断，治療，予後予測における尿中バイオマーカーの探索に関する研究を行った。
6. 腎と高血圧に関する研究
   高血圧患者における超音波（ドプラ）検査による腎内血行動態と臓器障害や腎予後，心血管予後との関係について，横断的および縦断的に検討，解析した。
7. 腎と循環器疾患に関する研究
   循環器病研究開発費による「循環器疾患患者における慢性腎臓病の実態と腎機能悪化予防方法の確立に関する研究」を総括し，症例登録を推進した。また，透析患者の心血管病変について，剖検者の病理所見を含めて検討した。

• 高血圧と遺伝子に関する研究では，降圧薬の効果に関するpharmacogenetic approachについての英文の総説論文を発表した。
• 高血圧と生活習慣に関する研究では，3つの論文からなる日本高血圧学会減塩委員会報告2012を出版した。また，食塩と高血圧，心血管疾患についての英文の総説論文を発表した。
• 震災被災地における生活習慣病に関する研究では，被災地支援の減塩，循環器病予防プロジェクトについての論文を発表した。また，気仙沼健康事業を支援し，減塩コラムを連載した。
• 高血圧と臓器障害や血圧モニタリングに関する研究では，分担執筆者として，自由行動下24時間血圧測定についての英文ガイドラインを日本循環器学会より，家庭血圧測定についての英文ガイドラインを日本高血圧学会より発表した。
• 高血圧の薬物療法に関する研究では，治療抵抗性高血圧への対処について総説論文を発表した。また，アンジオテンシン受容体拮抗薬（ARB）と利尿薬の合剤，ARBとカルシウム拮抗薬の合剤の効果について，原著論文を発表した。
• 腎と高血圧に関する研究では，腎内血行動態の指標であるresistive index (RI)と高血圧患者の臓器障害との関連を示した英文原著論文，およびRIと腎予後および心血管予後との関連を示した英文原著論文を発表した。
• 循環器疾患と腎に関する研究では，左心補助装置を装着した重症心不全患者における腎内血行動態の変化，および腎機能の変化と予後との関連について，2つの英文原著論文を発表した。また，高齢者の透析導入考慮時の脳心血管合併症についての原著論文や，慢性腎臓病と心不全についての総説論文を発表した。

1. Doi Y., Iwashima Y., Yoshihara F., Kamide K., Takata H., Fujii T., Kubota Y., Nakamura S., Horio T. and Kawano Y. Association of renal resistive index with target organ damage in essential hypertension. Am J Hypertens 25, 1292-8, 2012.
2. Iwashima Y., Yanase M., Horio T., Seguchi O., Murata Y., Fujita T., Toda K., Kawano Y. and Nakatani T. Serial Changes in Renal Function as a Prognostic Indicator in Advanced Heart Failure Patients With Left Ventricular Assist System. Annals of Thoracic Surgery 93, 816-824, 2012.
3. Iwashima Y., Yanase M., Horio T., Seguchi O., Murata Y., Fujita T., Toda K., Kawano Y. and Nakatani T. Effect of pulsatile left ventricular assist system implantation on Doppler measurements of renal hemodynamics in patients with advanced heart failure. Artif Organs 36, 353-8, 2012.
4. Klionsky DJ. , Hayashi S. and others and 1268. Guidelines for the use and interpretation of assays for monitoring autophagy. Autophagy 8, 445-544, 2012.
5. group) JCS Joint Working Group (Kawano Y as a member of the working. Guidelines for the clinical use of 24-hour ambulatory blood pressure monitoring (ABPM) (JCS 2010);. Circulation Journal 76, 508-519, 2012.
6. Doi Y., Iwashima Y., Yoshihara F., Kamide K., Hayashi S., Kubota Y., Nakamura S., Horio T. and Kawano Y. Renal resistive index and cardiovascular and renal outcomes in essential hypertension. Hypertension 60, 770-7, 2012.
7. Iwashima Y., Doi Y. and Kawano Y. Response to the prognostic significance of renal resistive index in essential hypertension. Hypertension 60, E37, 2012.
8. Imai Y., Kario K., Shimada K., Kawano Y., Hasebe N., Matsuura H., Tsuchihashi T., Ohkubo T., Kuwajima I., Miyakawa M. and Comm Japanese Soc Hypertension. The Japanese Society of Hypertension Guidelines for Self-monitoring of Blood Pressure at Home (Second Edition). Hypertension Research 35, 777-795, 2012.
9. Jesmin S., Zaedi S., Islam A. M. S., Sultana S. N., Iwashima Y., Wada T., Yamaguchi N., Hiroe M. and Gando S. Time-Dependent Alterations of VEGF and Its Signaling Molecules in Acute Lung Injury in a Rat Model of Sepsis. Inflammation 35, 484-500, 2012.
10. Tawada M., Hayashi S., Osada S., Nakashima S. and Yoshida K. Human gastric cancer organizes neighboring lymphatic vessels via recruitment of bone marrow-derived lymphatic endothelial progenitor cells. J Gastroenterol 47, 1057-60, 2012.
11. Kawano Y. Salt, hypertension, and cardiovascular diseases. Journal og the Korean Society of Hypertension 18, 53-62, 2012.
12. Kamide K., Kawano Y. and Rakugi H. Pharmacogenomic approaches to study the effects of antihypertensive drugs. Hypertens Res 35, 796-799, 2012.
13. 堀尾武史, 岩嶋義雄, 河野雄平. 降圧不十分例における種々の降圧薬からロサルタン/ヒドクロロチアジド配合例への切り替えによる降圧効果と降圧度に寄与する因子についての検討. 血圧 19, 497-503, 2012.
14. 河野 雄平, 高田 英明. 血圧設定:診察室血圧,家庭血圧,24時間血圧,ＡＩ,中心血圧. Ｄｉａｂｅｔｅｓ　Ｆｒｏｎｔｉｅｒ 23, 467-472, 2012.
15. 小久保 喜弘, 河野 雄平. 【あなたも名医!新しい経口抗凝固薬、どう使う?　心房細動を診るジェネラリストのために】 (第1章)抗凝固薬はなぜ必要?　薬剤処方の前に押さえておきたい発症機序と疫学　Framingham研究は何を教えてくれる?. jmed mook, 25-28, 2012.
16. 中村 敏子. 【心不全　実地医家は増加する高齢者心不全にどう対処するか】 セミナー/高齢者および超高齢者の心不全の実地診療　検査結果による対処の実際　連関疾患を考慮した診察のすすめかた　慢性腎臓病と心不全. Medical Practice 29, 274-278, 2012.
17. 河野 雄平. 【食塩感受性と高血圧】 Overview　高血圧患者における食塩摂取量の現状と課題. Progress in Medicine 32, 1003-1008, 2012.
18. 岩嶋 義雄, 河野 雄平. 腎動脈狭窄症. Vascular Lab 9;, 159-167, 2012.
19. 河野 雄平. 腎血管性高血圧. イヤーノート・ＴＯＰＩＣＳ（2013年度版）, 176-178, 2012.
20. 高木 洋子, 河野 雄平. 【高血圧のすべて2012-研究と診療の最前線】 最新のエビデンスに基づく高血圧診療2012　減塩はこうすればできる. 医学のあゆみ 241, 1218-1222, 2012.
21. 大田 祐子, 河野 雄平. 【家庭血圧測定の指針】 家庭血圧の測定装置と測定条件. 血圧 19, 607-610, 2012.
22. 河野 雄平. 【減塩プロジェクト】 日本高血圧学会の減塩活動. 血圧 19, 793-796, 2012.
23. 岩嶋 義雄, 林 真一郎, 堀尾 武史, 河野 雄平. コントロール不良高血圧患者を対象にしたオルメサルタン/アゼルニジピン配合錠と、カンデサルタン/アムロジピン配合錠の降圧効果に関する比較試験　家庭血圧による検討. 血圧 19, 634-639, 2012.
24. 河野 雄平. 【高血圧における生活習慣修正とエビデンス】 高血圧管理における節酒指導. 循環器内科 72, 183-187, 2012.
25. 岩嶋 義雄, 河野 雄平. 【治療抵抗性高血圧】 治療抵抗性高血圧への対処　二次性高血圧の診断と治療. 循環器内科 72, 474-481, 2012.
26. 岸本 一郎, 河野 雄平. 岩手県宮古市田老における市民公開講座-第2回講習会：岩手県宮古市. 循環器病研究の進歩（東日本大震災支援特別号）, 71-80, 2012.
27. 河野 雄平, 岸本 一郎, 横山 広行, 野々木 宏. 減塩,循環器病予防プロジェクト：プロジェクトの概要. 循環器病研究の進歩（東日本大震災支援特別号）, 50-55, 2012.
28. 安東 克之, 河原崎 宏雄, 三浦 克之, 松浦 秀夫, 渡辺 尚彦, 由田 克士, 川村 実, 日下 美穂, 甲斐 久史, 土橋 卓也, 河野 雄平. 食塩と高血圧・心血管疾患. 日本高血圧学会減塩委員会報告　2012, 1-25, 2012.
29. 三浦 克之, 安東 克之, 土橋 卓也, 由田 克士, 渡辺 尚彦, 河原 崎宏雄, 松浦 秀夫, 日下 美穂, 甲斐 久史, 川村 実, 河野 雄平. 高血圧管理における食塩制限の目標と方策. 日本高血圧学会減塩委員会報告2012, 27-37, 2012.
30. 土橋 卓也, 甲斐 久史, 日下 美穂, 川村 実, 松浦 秀夫, 三浦 克之, 安東 克之, 丸山 智美, 早渕 仁美, 高木 洋子, 中東 教江, 佐藤 敏子, 河野 雄平. 高血圧管理における食塩摂取量の評価と応用. 日本高血圧学会減塩委員会報告2012, 39-50, 2012.
31. 中村 敏子. 高齢者における透析導入考慮時の脳心血管合併症. 日本透析医会雑誌 27, 395-401, 2012.
32. 河野 雄平. 高血圧治療　治療抵抗性高血圧への対処. 日本内科学会雑誌 101, 707-711, 2012.
33. 河野 雄平. 循環器病の予防と国循の「減塩プロジェクト」. 美味しい！国立循環器病研究センターのかるしおレシピ, 108, 2012.
34. 河野 雄平. 日本高血圧学会減塩委員会の活動. 臨床栄養 121, 796-797, 2012.
35. 河野 雄平, 尾崎 達哉. 【配合薬時代の降圧薬療法の進め方】 ポリピルへの期待. Medicinal 2, 81-86, 2012.