肺循環科
研究活動の概要

肺循環科では研究として現在2つの柱を中心に行っています。肺動脈性肺高血圧症の病態と治療、そして慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する新規肺動脈カテーテル治療の確立です。肺動脈性肺高血圧症は根本的治療がなく予後は不良ですが、そのメカニズムは不明であり機序解明が必須です。その発症メカニズムに関しては、研究所分子生物学部及び病理部と共に研究を行っています。現在のトピックスとして遺伝性肺動脈性肺高血圧症におけるTGF-β/BMPシグナルの関与と種々の肺動脈性肺高血圧症における肺静脈病変の関与に関する検討です。また慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する肺動脈カテーテル治療を2010年より行なっておりますが、治療効果と安全性の両方を満たす治療を行なえるように研究を行っています。

具体的には以下のテーマの研究を行っています。

  1. 膠原病関連肺動脈性肺高血圧症における肺静脈病変の関与
  2. 肺高血圧症を伴うCPFE(Combined pulmonary fibrosis and emphysema)における肺静脈病変の関与
  3. 特発性・遺伝性肺動脈性肺高血圧症におけるTGF-β/BMPシグナルの関与
  4. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症における肺動脈カテーテル治療の確立
2012年の主な研究成果
  • 剖検標本より膠原病関連肺動脈性肺高血圧症において肺静脈病変の関与及び臨床パラメーターとの関与を明らかにした。
  • 特発性・遺伝性肺動脈性肺高血圧症におけるTGF-β/BMPシグナルの関与の研究においてSmad遺伝子変異の報告を行い、またプロスタサイクリンがTGF-β/BMPシグナルに影響を与えることを示した。
  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症においてCone-beam CTを用いて閉塞病変の画像化に成功した。
  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症における肺動脈カテーテル治療において合併症を少なく治療が可能な方法を確立している。
研究業績
  1. Katsuragi S., Yamanaka K., Neki R., Kamiya C., Sasaki Y., Osato K., Miyoshi T., Kawasaki K., Horiuchi C., Kobayashi Y., Ueda K., Yoshimatsu J., Niwa K., Takagi Y., Ogo T., Nakanishi N. and Ikeda T. Maternal outcome in pregnancy complicated with pulmonary arterial hypertension. Circ J 76, 2249-54, 2012.
  2. 岩上 直嗣, 高木 弥栄美, 出町 順, 大郷 剛, 宮地 克維, 中西 宣文. 【肺高血圧症最新薬物治療の実際-膠原病・肺疾患合併編-】 症例から学ぶ 膠原病性肺高血圧症の難治症例に挑む 急性肺血管反応試験陽性の強皮症合併肺高血圧症においてボセンタンが肺高血圧とレイノー現象の改善に対し有効であった1例. Modern Physician 32, 2-4, 2012.
  3. 高木 弥栄美, 中西 宣文. 【肺動脈性肺高血圧症の治療の新展開】 多剤併用療法の新展開. 炎症と免疫 20, 476-480, 2012.
  4. 大郷 恵子, 大郷 剛, 池田 善彦, 松山 高明, 橋村 宏美, 米本 由美子, 武藤 清佳, 高木 弥栄美, 中西 宣文, 植田 初江. 結合組織病性肺動脈性肺高血圧症の剖検肺における病理組織学的検討 特に肺静脈閉塞性病変合併の有無に関して. Therapeutic Research 33, 1493-1496, 2012.
  5. 大郷 剛, 大郷 恵子, 中村 一文, 辻 明宏, 高木 弥栄美, 出町 順, 森崎 裕子, 森崎 隆幸, 中西 宣文. 各種の肺高血圧症治療における診断のポイント 遺伝子変異検査は特発性肺動脈性肺高血圧症の治療に影響を与えるか?. Therapeutic Research 33, 1523-1525, 2012.
  6. 大郷 剛, 瀧原 圭子. 【肺高血圧診療の最前線】 遺伝性肺動脈性肺高血圧の病態と発症メカニズム. Pharma Medica 30, 13-16, 2012.
  7. 大郷 剛, 中西 宣文. 【外してならない循環器薬の使い方 2012】 循環器疾患に対する薬物療法の基本 肺高血圧. Medicina 49, 54-57, 2012.