筋細胞変性に関与する新しいチャネルの発見
筋ジストロフィー症および拡張型心筋症発症機構の解明と治療法の開発
循環分子生理部 岩田 裕子、片野坂 友紀
我々はジストロフィン関連蛋白質の異常で発病する筋ジストロフィー及び拡張型心筋症の発症メカニズムを解明し治療法を開発することを目指している。今回、これらの病態に新しいタイプのカルシウム流入チャネルの局在異常が関与することを明らかにした。
難病である筋ジストロフィー症は、ジストロフィンという蛋白質、又はこれと一緒になって複合体を作るいくつかの細胞蛋白質の遺伝子異常によって発病する。またこれらの蛋白質の異常は、やはり難病である拡張型心筋症などの心臓疾患を引き起こすことも知られている。しかしながら、これらの蛋白質の異常が病気を引き起こすメカニズムは不明であり、そのため、これらの病気を適切に治療する方法がないのが現状である。
我々は、心筋症モデル動物の筋細胞を用いた実験により、病気の細胞ではカルシウム透過性で伸展刺激感受性のチャネルが常時活性化状態にあり、このチャネルを介するカルシウムイオンの流入により、筋細胞変性が発生することを示してきた。
今回我々は、筋ジストロフィー症や心筋症のモデル動物の骨格筋と心筋、およびヒト患者からの骨格筋バイオプシーサンプルを用いて、これらの病態特異的に細胞膜へ局在変化するチャネルの同定に成功した。このチャネルは、transient receptor potential(TRP)ファミリーに属するGrowth factor regulated channel(GRC)であり、筋細胞膜を伸展した場合により強く活性化される性質を有していた。アンチセンスDNAの導入や薬剤などでこのチャネルの働きを抑えるとジストロフィー筋細胞で観察されるカルシウムイオン代謝異常や細胞障害の発生は抑えられた。また、GRCを正常のマウスの心筋細胞膜に過剰発現させると著明な心肥大、筋細胞壊死、繊維化等の心筋症病変を発症することが判明した(Iwata Y. Katanosaka Y. et al. J. Cell Biol. 161:957-967, 2003)。これらの結果は筋ジストロフィー症および拡張型心筋症の治療法解明への重要な第一歩となると考えられる。
図1 正常および心筋症ハムスター(BIO14.6)、正常および筋ジストロフィー(mdx)マウス心筋および骨格筋におけるGRCの局在 |
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図2 GRCを心筋細胞膜に過剰発現したマウス(TG19)心筋と正常マウス(WT)心筋 |
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[更新日: 2009年10月20日]


