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血管生理学部

2015年の業績

研究活動の概要

血管生理学部では、血管新生・炎症に関わる増殖因子・サイトカインシグナルに焦点を当てて、循環器疾患の病態解明と新規の治療法開発を目指して研究を進めている。現在の研究テーマは以下の(1)~(5)の5つである。

  1. angiopoietin-1(Ang1)シグナルによる血管恒常性維持、血管新生の分子機構の解明
  2. 心筋細胞の分泌する血管内皮増殖(保護)因子の1つであるangiopoietin-1(Ang1)がが胎生期における冠静脈の発生に必須であることを報告している(Nat Commun. 2014 Jul 29; 5: 4552)。現在、心筋細胞由来Ang1、そして血管平滑筋細胞由来Ang1による血管恒常性維持の分子機構を明らかにする研究を進めている。
  3. 肺高血圧症の炎症シグナルによる病態形成機構の解明
  4. 低酸素誘発性肺高血圧症モデルマウスの系で炎症性サイトカインのIL-6が重要な役割を担うことを最近明らかにした。IL-6の下流では、主にTh17細胞が分泌するIL-21によって肺内のマクロファージがM2マクロファージへ極性化されて肺動脈平滑筋細胞の増殖が促進されて、肺高血圧の血管リモデリングが誘導されることを明らかにした(Proc Natl Acad Sci U S A. 112: E2677-86, 2015)。現在、肺高血圧症モデルラットの系でIL-6/IL-21シグナル軸の機能解明を進めている。
  5. 難治性高安動脈炎に対するIL-6阻害療法の可能性の検討
  6. 難治性経過を示す高安動脈炎患者に対する治療法の開発は重要な課題となっている。最近、我々は抗IL-6受容体抗体トシリズマブが難治性高安動脈炎の4症例で有効性を示すことをパイロットスタディで明らかにした(Int Heart J. 54, 406-411, 2013)。その後、合計11例の難治性経過を示す高安動脈炎患者に対してトシリズマブの長期投与の安全性、有効性を検討する臨床試験を進めている(投稿準備中)。上記の研究などを背景に、現在我が国で中外製薬による企業治験が高安動脈炎に対して進行中である。また、難治性血管炎調査班の調査研究として大型血管炎の疫学レジストリーも進めている。
  7. 心血管系におけるGabドッキング蛋白質の機能解明
  8. 心血管系においてGabドッキング蛋白質の機能解析をこれまで進めている。特に心筋特異的Gab1/Gab2二重欠損マウスが拡張型心筋症様の心不全を自然発症することから、Gab蛋白質が心臓の恒常性維持に重要であることを以前に報告している(J Clin Invest. 117: 1771-1781, 2007)。心筋特異的なGab1アイソフォームを我々は最近同定してneuregulin-1シグナルの下流で特異的なシグナル伝達を担うことを見出した。
  9. 突然変異で生じた心筋症ハムスターに関する研究
  10. 心筋症ハムスターには、BIO14.6と心拡大が著明でより重症なTO-2が存在する。両者に共通する遺伝的原因がジストロフィン結合タンパク質であるδ-サルコグリカンの欠損であることを我々は先に明らかにしたが、TO-2における重症化機構は不明であり、その解明を進めている。

2015年の主な研究成果

  1. 肺高血圧症の病態形成機構を低酸素誘発性肺高血圧症モデルマウスの系で進めた結果、炎症性サイトカインinterleukin-6(IL-6)が肺高血圧症の発症過程で重要な役割を担うことを見出した。特にIL-6の下流で主にTh17細胞が分泌するIL-21が重要で、IL-21依存性にマクロファージがM2に極性化する事で肺動脈平滑筋細胞の増殖が促進されることを報告した(Proc Natl Acad Sci U S A. 112(20): E2677-86, 2015)。
  2. 難治性高安動脈炎でトシリズマブによる抗IL-6療法施行症例で、トシリズマブを中止した際に再燃した症例で著明な抗サイトカイン血症を伴う症例に関する解析結果を報告した(Int J Cardiol. 187:319-321, 2015)。
  3. 心筋特異的Gab1アイソフォームの単離・同定に成功した。この心筋特異的Gab1はneuregulin-1(NRG-1)によって特異的にリン酸化を受けてNRG-1シグナルで重要な役割を担うことを明らかにした(投稿中)。

研究業績

  1. Hashimoto-Kataoka T, Hosen N, Sonobe T, Arita Y, Yasui T, Masaki T, Minami M, Inagaki T, Miyagawa S, Sawa Y, Murakami M, Kumanogoh A, Yamauchi-Takihara K, Okumura M, Kishimoto T, Komuro I, Shirai M, Sakata Y, Nakaoka Y. Interleukin-6/interleukin-21 signaling axis is critical in the pathogenesis of pulmonary arterial hypertension. Proceedings of the National Academy of Sciences. 112, E2677-E2686, 2015.
  2. Arita Y, Nakaoka Y, Otsuki M, Higuchi K, Hashimoto-Kataoka T, Yasui T, Masaki T, Ohtani T, Kishimoto T, Yamaguchi-Takihara K, Komuro I, Sakata Y. Cytokine storm after cessation of tocilizumab in a patient with refractory Takayasu arteritis. International Journal of Cardiology. 187, 319-321, 2015.
  3. Cherif M, Caputo M, Nakaoka Y, Angelini G, Ghorbel M. Gabl Is Modulated by Chronic Hypoxia in Children with Cyanotic Congenital Heart Defect and Its Overexpression Reduces Apoptosis in Rat Neonatal Cardiomyocytes. BioMed Research International. 2015, 718492, 2015.
  4. Hashimoto-Kataoka T, Hosen N, Sonobe T, Arita Y, Yasui T, Masaki T, Minami M, Inagaki T, Miyagawa S, Sawa Y, Murakami M, Kumanogoh A, Yamauti-Takihara K, Okumura M, Kishimoto T, Komuro I, Shirai M, Sakata Y, Nakaoka Y. Interleukin-6/interleukin-21-signaling axis is critical in the pathogenesis of pulmonary arterial hypertension. Proceedings of theNational Academy of Science of the United States of America. 112, E2677-E2686, 2015.
  5. Kizu T, Yoshida Y, Furuta K, Ogura S, Egawa M, Chatani N, Hamano M, Takemura T, Ezaki H, Kamada Y, Nishida K, Nakaoka Y, Kiso S, Takehara T. Loss of Gabl adaptor protein in hepatocytes aggravates experimental liver fibrosis in mice. American Journal of Physiology Gastrointestinal and Liver Physiology. 308, G613-G624, 2015.
  6. Terao C, Matsumura T, Yoshifuji H, Mejima Y, Nakaoka Y, Takahashi M, Amiya E, Tamura N, Nakajima T, Origuchi T, Matsukura M, Kochi Y, Ogimoto A,Yamamoto M,Takahashi H,Nakaymada S,Saito K,Wada Y,Narita I,Kawaguchi Y,Yamanaka H,Omura K,Atsumi T,Tanemoto K,Miyata T,Kuwana M,Komura I,Tabara Y,Ueda A,Isobe M,Mimori T,Matsuda F. Takayasu arteritis and ulcerative colitis: high rate of co-occurrence and genetic overlap. Arthritis&Rheumatology. 67, 2226-2232, 2015.
  7. 中岡 良和. 高安動脈炎. 循環器内科. 78, 366-373, 2015.
  8. 中岡 良和. 高安動脈炎と抗IL-6受容体療法. 感染 炎症 免疫. 45, 262-265, 2015.
  9. 中岡 良和. IL-6による肺高血圧症の病態形成の分子機構. Pulmonary Hypertension Update. 1, 62-67, 2015.

最終更新日 2016年11月08日

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