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細胞生物学部

2016年の業績

研究活動の概要

循環器疾患の病態解明を主たる研究テーマとして、特に心臓再生・血管新生による循環調節の再構築を目指した新たな治療法・予防法の開発を目指す研究を展開している。「病態(pathobiology)は、分子の機能異常と細胞・組織間の制御異常、つまり細胞間・細胞内情報伝達破綻のために生じる」「再生は発生過程の情報伝達系を利用している」という考え方を基本として病態の解明と再生メカニズムの解明を目指している。このためには、生体内での心臓・血管の臓器全体と構成細胞の形態変化を捉えるとともに情報伝達の変化を生きたまま捉えることが重要と考えた。生体の情報伝達と形態変化を同時に観察することができるイメージングを研究手法の中心に据えて、「見ることから知ること、さらに治療・予防にまで発展させるべく」研究を行っている。
主な研究テーマは

  1. 血管新生における細胞骨格・形態変化を調節する情報伝達の解明(血管と臓器との相互作用も含む)
  2. 血管内皮細胞―細胞間接着機構の解明
  3. ゼブラフィッシュ心臓のWnt シグナルの意義
  4. 左右軸形成機構(心臓の左側化)の研究
  5. Shear stressによるYap1の転写調節機構の解明
  6. 骨膜由来の分泌性ペプチドOsteocrin (Ostn) による生体恒常性機構の解明―特に荷重と脂肪代謝の関係の骨形成と血圧制御機構の連関
  7. リンパ管の形成に重要な細胞外マトリックス分子Polydomについての研究である。

2016年の主な研究成果

  1. Hippo シグナルの最終標的分子の Yap1, Wwtr1 (Taz) 転写共役因子の心臓形成シグナルと血管形成維持に不可欠であることを明らかにした。
    1. すでに我々のこれまでの研究により、スフィンゴシン1-燐酸(S1P)シグナルが内胚葉維持機構に重要であり、特に内胚葉でのS1P2受容体を活性化によるYap1のこの核内移行が内胚葉維持に不可欠であることを突き止めていた。これを発展させ、Hippoシグナル分子Lat1/2 の欠損により、心房心筋細胞数が増加することから、Hippo シグナルが心筋細胞数を制限していることを解明した。この時の心房筋はsecond heart field (SHF) 由来であることが判ってので、HippoシグナルがSHFで機能していることが推察された。
    2. 血管では、心臓の拍動開始により血流が始まり、この血流によるshear stressがYap1の血管内皮細胞での核内移行を促進することで血管内皮細胞が安定化することを先行研究で明らかにしていた。この研究をさらに発展させて、Yap1 の核局在には、disturbed flow も重要であることを見出した。
    3. 左右軸を決定する仕組みとしてマウスのノードに相当するKupffer's vesicle (KV)がゼブラフィッシュでは一時的に形成される。このKV の形成にS1P→Yap1/Taz が重要であることを見つけた。
  2. ゼブラフィッシュOstn は、心筋細胞から分泌され膜性骨化・内軟骨骨化の促進因子として 作用することを明らかにした。OstnがNa 利尿ペプチド (NP) のクリアランス受容体NPR3 に結合することによりNPファミリーの増加をもたらし生理作用を示すことがわかった。骨形成では特にCNPがYap1/Taz の核外移行を促進するが、Ostnはこの作用を増強させることがわかった。
  3. ゼブラフィッシュ心筋細胞から分泌されるペプチドOsteocrin (Ostn) がゼブラフィッシュでは心筋細胞増殖効果があることを見出した。Ostnは分裂心筋細胞特異的に分泌されており、静止期 (G0/G1) の心筋細胞では発現が殆どみられないことがわかった。
  4. Ostnのマウスでの発現と生理作用を調べた。Ostnは骨膜細胞特異的に発現しており、これまでに報告されていないPeriosteokineとしての機能を有することが示唆された。Ostnが心房性利尿ペプチド受容体NPR3 (clearance 受容体)に結合するとの報告もあり、NPR3 の占有によるNP 分子のNPR1, NPR2 を介した機能の増強作用があることを、脂肪・骨組織で突き止めた。
  5. 臓器位置を決定する左右軸の成立にはゼブラフィッシュでは Kupffer's vesicle (KV, マウスのノードに該当)が必要である。このKVを構成するdorsal forunner cell とこれらの細胞に発現する繊毛の回転による流れが重要である。我々は、KVの成立過程にHippo シグナルの重要性を見出した。

研究業績

  1. Jimenez-Amilburu V, Rasouli SJ, Staudt DW, Nakajima H, Chiba A, Mochizuki N, Stainier DYR. In Vivo Visualization of Cardiomyocyte Apicobasal Polarity Reveals Epithelial to Mesenchymal-like Transition during Cardiac Trabeculation. Cell Reports. 17, 2687-2699, 2016.
  2. Ando K, Fukuhara S, Izumi N, Nakajima H, Fukui H, Kelsh RN, Mochizuki N. Clarification of mural cell coverage of vascular endothelial cells by live imaging of zebrafish. Development. 143, 1328-1339, 2016.
  3. Chavez-Vargas L, Adame-Garcia SR, Cervantes-Villagrana RD, Castillo-Kauil A, Bruystens JGH, Fukuhara S, Taylor SS, Mochizuki N, Reyes-Cruz G, Vazquez-Prado J. Protein Kinase A (PKA) Type I Interacts with P-Rex1, a Rac Guanine Nucleotide Exchange Factor: EFFECT ON PKA LOCALIZATION AND P-Rex1 SIGNALING. Journal of Biological Chemistry. 291, 6182-6199, 2016.
  4. Ito S, Asakura M, Liao YL, Min KD, Takahashi A, Shindo K, Yamazaki S, Tsukamoto O, Asanuma H, Mogi M, Horiuchi M, Asano Y, Sanada S, Minamino T, Takashima S, Mochizuki N, Kitakaze M. Identification of the Mtus1 Splice Variant as a Novel Inhibitory Factor Against Cardiac Hypertrophy. Journal of the American Heart Association. 5, e003521, 2016.
  5. Gebala V, Collins R, Geudens I, Phng LK, Gerhardt H. Blood flow drives lumen formation by inverse membrane blebbing during angiogenesis in vivo. Nature Cell Biology. 18, 443-450, 2016.
  6. Fukuda H, Suwa H, Nakano A, Sakamoto M, Imazu M, Hasegawa T, Takahama H, Amaki M, Kanzaki H, Anzai T, Mochizuki N, Ishii A, Asanuma H, Asakura M, Washio T, Kitakaze M. Non-linear Equation using Plasma Brain Natriuretic Peptide Levels to Predict Cardiovascular Outcomes in Patients with Heart Failure. Scientific Reports. 6, 37073, 2016.

過去の業績

最終更新日 2017年08月21日

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