ホーム > 各部のご紹介 > 分子薬理部 > 研究分野2 脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血を予防するための新規の診断法・治療法の創出

分子薬理部

1)脳動脈瘤研究の社会的重要性(なぜ脳動脈瘤研究を行うのか)

脳動脈瘤は脳血管分岐部に発生する嚢状の病変であり、くも膜下出血の主要な原因疾患となっている。医療技術の発達した現在でなお致死率50%に至る予後の悪いくも膜下出血の発症を予防するためには、未破裂の状態で発見される脳動脈瘤に対して破裂予防を目指した先制医療としての治療介入が必須である。しかし、未だに脳動脈瘤の進展を抑制する有効な薬物治療法は開発されていない。そのため、脳動脈瘤の病態形成機構を明らかとし、新規の治療法や診断法を開発することは社会的急務である。

2)現在までの我々の研究成果

当グループでは、脳動脈瘤を高率に発生する動物モデルを用い、それに遺伝子組み換え動物を供したり各種特異的薬物を使用することにより、脳動脈瘤の形成および増大機構の解析を行ってきた。その結果、脳動脈瘤発生増大に血管壁の慢性炎症反応が関与する事、それら炎症反応を担う分子に対しての特異的薬物により瘤発生増大の予防効果が認められる事を世界に先駆け報告した。そして、「脳動脈瘤は脳血管壁のマクロファージ依存的慢性炎症性疾患である」という現在広く認められる疾患概念を提唱した。さらに臨床応用の観点では、スタチン製剤の脳動脈瘤破裂予防効果を検証する観察研究を実施し、世界に先駆けてくも膜下出血発症予防のための薬物治療法開発の可能性を示した。  
これら我々の研究により脳動脈瘤病態形成機構の一端が解明されくも膜下出血予防のための薬物治療の可能性が示されたことは下記のように大きく報道された。我々は、さらに次項で示すような研究を進めることでクモ膜下出血の無い社会の実現を目指している。

3)現在の研究テーマ

① 脳動脈瘤破裂機構の解析
最近になり我々は既存の脳動脈瘤モデル動物を改変することで、高率に瘤の自然破裂によるくも膜下出血発症を再現可能なモデル動物を新規に樹立することに成功し報告した。そして、このモデル動物を使用することで脳動脈瘤の破裂に至る誘因として、血管壁でのVasa vasorumの誘導とそれを介した炎症細胞浸潤の重要性を示唆するデータを得た。本モデル動物での破裂機構をさらに詳細に解析することで、破裂機構を担う分子群を創薬標的として同定することを目指している。

② 脳動脈瘤に対する薬物治療法開発  
上述のモデル動物の開発により、脳動脈瘤の発生から増大そして破裂に至る全過程につきモデル動物で再現することが可能となった。よって、脳動脈瘤の病態解析をこれらモデル動物を使用し遂行することで、脳動脈瘤の発生や進展を予防するための新規の創薬標的の同定を進める。また、すでに炎症関連因子を中心にいくつかの創薬標的を同定しているため、臨床開発に向けそれらの標的に対する特異的薬物の治療薬としての可能性をモデル動物を用い検証する。

③ マクロファージを標的とした破裂危険性推定のための新規診断法開発
病変内の炎症反応が強く増大や破裂の危険性が高い病変を非侵襲的に選別するための診断法の開発を行っている。我々は、現在マクロファージイメージング法と呼んでいるMRIで脳動脈瘤壁内のマクロファージの存在を可視化する技術に使用するための新規造影剤の開発を進めている。 ④ 脳動脈瘤をモデル疾患とした生体の血流ストレス応答機構の解明 血管病の中でも特に脳動脈瘤では、その病態が血流ストレスの影響を強く受けることが明らかとなりつつある。一方で、血流ストレスという力学的な要素がどのように炎症などの生物学的な現象を惹起し病態形成を起こすのかについてはいまだ明らかでない部分が多い。そのために、脳動脈瘤をモデル疾患として、力学刺激がどのように炎症反応という生物学的反応に転換され病態形成を担うのかという普遍的命題の解明を目指している。


最終更新日 2019年08月05日

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