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分子薬理部

部の業績
2016年業績

2016年の業績

研究活動の概要

分子薬理部では、循環器病の発症機序の解明、診断・治療法の開発と予防法の確立をめざして、心血管系の情報伝達や制御に重要なペプチド、タンパク質と脂質を主たる研究対象に、生理活性ペプチドの発見、ペプチドや脂質の作用機序、疾患関連タンパク質の探索、これらの病態生理的意義の解明に関する研究を実施している。研究成果の臨床応用を進めるため、臨床試料の収集、測定や診断法の開発に重点をおいている。

構造機能研究室では、心疾患などの原因となる高トリグリセリド血症の個々人にみあった予防法確立のため、開発した血清脂質代謝酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)、肝性トリグリセリドリパーゼ活性および蛋白測定法と遺伝子解析法を用い、LPL変異症例の集積を継続している。一方、重症心不全症例から見出された中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)は、細胞内トリグリセリド分解の第一段階を担う酵素である脂肪細胞トリグリセリドリパーゼ(ATGL)が遺伝的に欠損する原発性TGCVとATGL遺伝子に変異のない特発性TGCVに分類される。本症の病態解明、診断・治療法のマーカーとしてATGL活性測定系を開発し、臨床応用を進めている。

薬効代謝研究室では、核内受容体PPARの3つのサブタイプ(α、γ、δ)の中でリガンドが治療薬として実用化されていないPPARδに着目し、これを標的とした疾患予防治療方法の探索を行なっており、すでに見出している新規作用の再現性を確認した。また、循環器病・生活習慣病の克服の為に、より直接的、かつ実質的な貢献を可能とする研究課題・論点について調査研究および準備を実施した。

情報制御研究室では、質量分析を活用して生体内ペプチドの配列を体系的に解析するペプチドミクスを実施しており、並行して新規生理活性ペプチドの探索ならびに発見されたペプチドについて機能解析を進めている。解析の過程で、分泌タンパク質や膜タンパク質の細胞外プロセシング部位、膜タンパク質の膜内切断部位が同定できることを明らかにしており、より包括的な研究を実施している。

2016年の主な研究成果

  • TGCVの病態解明、診断・治療法のマーカーとして、開発に成功したATGLの活性測定系を用いて、臨床応用を開始し、ATGLは、原発性TGCVのみならず特発性TGCVにおいても 病態に関与していると考えられる結果を得た。
  • 核内受容体PPARの3つのサブタイプ(α、γ、δ)の中でリガンドが治療薬として実用化されていないPPARδに着目し、これを標的にした疾患予防治療方法の探索を行なっている。ヒト急性白血病患者由来の細胞に対して、新規の抗白血病性作用を示すことすでに見出しており、再現性を確認した。
  • 循環器病・生活習慣病の克服の為に、より直接的かつ実質的な貢献を遂行する為の課題・論点についての調査研究および検討を行なった。その結果、予防衛生、特に一次予防の推進手法の開発研究が急務であることが明確となり準備に着手した。
  • 細胞外または細胞膜内領域で特異的な切断を受ける膜タンパク質は、予想以上に多いことを示す所見を得るとともに、その切断部位を同定した。
  • 当部で発見された生理活性ペプチド NERP-1は、性腺刺激ホルモン産生細胞LβT2の系において、性腺刺激ホルモン放出ホルモンによってその分泌が刺激され、分泌されたNERP-1はオートクライン的に作用して卵胞刺激ホルモンに特異的なサブユニットの遺伝子発現を抑制していることを、マウントサイナイ・アイカーン医科大学との共同研究で明らかにした。

研究業績

  1. Choi SG, Wang Q, Jia JJ, Chikina M, Pincas H, Dolios G, Sasaki K, Wang R, Minamino N, Salton SRJ, Sealfon SC. Characterization of Gonadotrope Secretoproteome Identifies Neurosecretory Protein VGF-derived Peptide Suppression of Follicle-stimulating Hormone Gene Expression. Journal of Biological Chemistry. 291, 21322-21334, 2016.

最終更新日:2021年10月01日

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