ホーム > 各部のご紹介 > 分子生理部 > 2017年業績

分子生理部

2017年の業績

研究活動の概要

 細胞分化・増殖・移動など多様な生命現象の組み合わせにより、複数の起源を有する前駆細胞から心臓・血管の発生・形態形成が行われ、多様な細胞群が協調して働く成熟機能システムが構築されるメカニズムは非常に複雑です。心血管発生・形態形成において働く分子機構は、その破綻が先天性心疾患・遺伝性血管病などの発症に直結するのみならず、成人の循環器疾患・脳血管疾患においても重要な意義を有します。また、血管機能異常や病的血管新生はあらゆる臓器に生ずる多様な病態に深く関与しています。
 この見地より、分子生理部では心臓と血管の発生・形態形成・成熟機能獲得に働く分子メカニズムの研究を行っています。特に、発生期に発現する転写調節因子やシグナル伝達分子に焦点を当て、遺伝子組換えによる実験モデルマウスの分子生物学・組織学解析と細胞生物学実験・生化学実験を組み合わせることによって研究を進めています。
 先天性心疾患・循環器疾患・脳血管疾患などに対する医学研究と先端医療を行うナショナルセンターの一員として、新しい発想・技術を取り入れた臨床的・社会的意義のある基礎医学・実験医学の推進を目指すとともに、心血管系の基礎医学研究を担う次世代研究者の育成にも注力しています。

2017年の主な研究成果

 Notchシグナル伝達系は心血管発生制御の根幹となり、その機能異常はAlagille症候群・CADASILをはじめとするヒト疾患の原因となります。私たちが同定したNotchシグナル下流転写調節因子Heyファミリーは心血管の発生・形態形成・成熟機能に必須の役割を有し、これら疾患の病態でも重要であると考えられます。本年の研究において、Hey遺伝子のconditionalノックアウトマウス系統を作出してHey分子機能の細胞・組織特異性を明らかにするとともに、CRISPR/Cas9遺伝子編集マウス・転写レポーターマウスを用いてHey遺伝子の発現制御に働くエンハンサーの同定と機能解析を行いました。
 一方、Hey遺伝子の発現はALK1受容体シグナルによっても制御されますが、このALK1系も遺伝性出血性末梢血管拡張症・肺動脈性肺高血圧症の病因・病態に深く関与する重要な血管シグナル伝達系です。本年の研究において、Serum/glucocorticoid-regulated kinase 1遺伝子がALK1シグナルの新しい下流遺伝子であることを報告し、その発現制御機構の解析を進めています。また胎生期血管内皮遺伝子Tmem100のALK1系および他のシグナル伝達系による発現制御機構を明らかにし、その病態生理的意義へと研究を進めています。
 これらに加え、ES細胞を用いた血管内皮分化系によるエピゲノム遺伝子発現制御機構の検討、マイクロCT・組織標本3D再構築を用いた心血管形成過程の立体観察技術の開発など、新しい実験技法の開発・導入にも取り組んでいます。

研究業績

  1. Asai R, Haneda Y, Seya D, Arima Y, Fukuda K, Kurihara Y, Miyagawa-Tomita S, Kurihara H. Amniogenic somatopleure: a novel origin of multiple cell lineages contributing to the cardiovascular system. Scientific Reports. 7, 8955, 2017.
  2. Nakamura TY, Nakao S, Nakajo Y, Takahashi JC, Wakabayashi S, Yanamoto H. Possible Signaling Pathways Mediating Neuronal Calcium Sensor-1-Dependent Spatial Learning and Memory in Mice. PLoS ONE. 12, e0170829, 2017.
  3. Tai-Nagara I, Yoshikawa Y, Numata N, Ando T, Okabe K, Sugiura Y, Ieda M, Takakura N, Nakagawa O, Zhou B, Okabayashi K, Suematsu M, Kitagawa Y, Bastmeyer M, Sato K, Klein R, Navankasattusas S, Li DY, Yamagishi S, Kubota Y. Placental labyrinth formation in mice requires endothelial FLRT2/UNC5B signaling. Development. 144, 2392-2401, 2017.
  4. Uemura A, Nakata M, Goya S, Fukayama T, Tanaka R. Effective new membrane for preventing postthoracotomy pleural adhesion by surface water induction technology. PLoS ONE. 12, e0179815, 2017.
  5. Watanabe Y, Miyasaka KY, Kubo A, Kida YS, Nakagawa O, Hirate Y, Sasaki H, Ogura T. Notch and Hippo signaling converge on Strawberry Notch 1 (Sbno1) to synergistically activate Cdx2 during specification of the trophectoderm. Scientific Reports. 7, 46135, 2017.
  6. 深山 俊治, 瀬谷 大貴, 井原 大, 川村 晃久, 渡邉 裕介, 中川 修. 心臓・大血管の形態形成と転写調節因子. 生体の科学. 68, 531-535, 2017.

最終更新日 2019年01月09日

ページ上部へ