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人工臓器部

2017年の業績

研究活動の概要

 人工臓器部では、平成29年度も従来に引き続いて、循環器系人工臓器に関する研究開発を進め、さらに研究開発促進のためのシステム構築についても推進した。患者を救命し社会復帰せしめるための循環器系治療系高リスク医療機器、とくに人工心臓や心肺補助装置などの開発・製品化・臨床応用を目指した活動を行った。実用化を最優先とし、学会・論文発表等の学術的業績のみにとらわれることなく、トランスレーショナルリサーチの成果を国際競争力のある医療機器として迅速に世の中に出し、製品として臨床現場に届けることに重点を置いた活動に注力した。
 具体的な研究開発としては、1) 超小型体内埋込式補助人工心臓(VAD)システムの開発、2) 体外設置型連続流VADシステムの開発、3) 次世代型ポータブル心肺補助(ECMO)システムの開発、4) 小児用体外設置型拍動流VADシステムの開発、5) 空気駆動VAD用携帯型駆動装置の開発、6) 生体内組織形成術による循環器系移植用自己組織体の開発、などを進めており、さらに7) 連続流型人工心臓の最適制御法の検討や8) 信頼性保証(QMS)非臨床試験システムの構築などについても継続的に取組んでいる。
 研究開発のフレームとしては、平成24年度までは先端医療開発特区設備整備事業(スーパー特区)「先端的循環器系治療機器の開発と臨床応用、製品化に関する横断的・統合的研究」を構成する4つのサブテーマの内の2つのサブテーマである「次世代呼吸循環補助システム」および「高機能体内埋め込み型補助人工心臓」について、分担研究者の巽がサブグループ長として担当し研究開発を加速・推進してきた。平成25〜28年度は、スーパー特区事業におけるNEDOの「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/次世代型高機能血液ポンプシステムの研究開発」(NEDO橋渡し研究)の代表的成果物である、世界初の動圧浮上方式の高耐久性遠心血液ポンプをコア技術とした「Bridge to Decision(BTD)目的の体外設置型連続流VADシステム」のトランスレーショナル開発研究について、これを中核シーズの1つとする厚生労働省の「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」およびかかる新規機器に対する評価ガイドライン作成などを主な研究課題とする「革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業」を通じて研究開発を推進した。そして平成29年度は、「BTD目的の体外設置型連続流VADシステム」については10月より当センター単施設での医師主導治験に入り、また「次世代型ポータブルECMOシステム」については、日本医療研究開発機構(AMED)の補助事業名である「医工連携事業化推進事業」に新たに採択され、平成30年度中の治験開始を目指した開発を継続した。

2017年の主な研究成果

 NEDO橋渡し研究のもとで開発を進めた、動圧浮上式非接触回転型連続流ポンプである高耐久性ディスポ遠心ポンプ(BIOFLOAT-NCVC)については、研究開発担当企業から製造販売担当医療機器メーカーの連携企業への技術移転が完了し、その連携企業から平成27年に体外循環用として薬事申請が行われ、平成28年には製造販売承認を取得した。これをコアパーツとして用いた「BTD目的の体外設置型連続流VADシステム」は「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」のシーズ研究として認定され、PMDA相談下で平成29年度には非臨床試験最終評価段階に入り、安全性試験や耐久性試験は全て完了し、長期in vivo評価も殆どのプロトコルを完了した上で、平成29年度は臨床治験と平行する形で追加的な超長期間試験(承認申請標榜使用期間30日に対して最長90日までのin vivo評価)を進めた。臨床治験に関しては、PMDAの治験相談を経て、10月より当センターでの単施設医師主導治験「体外設置型連続流補助人工心臓システム「BR16010」を用いた重症心不全患者に対する補助循環」として臨床治験を開始した。
 一方、次世代ECMOシステムに関する研究では、当部が開発した長期耐久性と抗血栓性に優れた革新的人工肺BIOCUBEと上記のBIOFLOAT-NCVC遠心ポンプを組み合わせて小型パッケージ化した持ち運び可能な高機能超小型ECMOシステムの開発を進めており、平成29年度に最終試作を完成させた。酸素ボンベを含めて総重量7kg以下の手荷物サイズのECMOシステムで、スタンドアローンで1~2時間の連続駆動が可能な革新的システムである。この開発に関して、平成26年度に採択されたAMED早期探索的・国際水準臨床研究事業「救急使用〜安全な長期使用が可能な世界最小・最軽量・最高性能の次世代型心肺補助システムの開発・臨床応用と製品化・世界展開」は平成28年度が最終年度であったが、平成29年度には新たに、臨床治験の計画も組込んだAMEDの補助事業である「医工連携事業化推進事業」で課題名「世界最小最軽量の高機能次世代型心肺補助システムの開発・事業化」として採択された。平成29年度中に開発目標の装置の最終形を完成するとともにPMDA相談も進め、慢性動物実験評価も含めた非臨床試験を進めるとともに、平成30年度中の医師主導治験の開始を見据えた当センター内での体制整備(人工臓器部、移植医療部、臨床試験推進センター、データサイエンス部、心臓血管外科、小児心臓血管外科)を進めた。
 さて、平成23〜27年度に実施した「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」では、採択5課題中で唯一「医療機器」を対象として当センターの提案が採択され、リスクマネージメントやQMS体制の整備を進め、さらにアカデミアとして我が国初となる医療機器研究開発のISO13485認証を平成27年8月に取得した。ISO13485の継続承認は維持経費拠出困難により平成29年度に入って一旦中断した状態となっているが、このプロセスで確立されたQMS体制は維持されており、当部で施行した非臨床試験のデータがそのまま薬事申請に使用可能なQMS試験となり、医療機器の迅速な開発を行う拠点としての整備が大きく前進した。これにより平成29年度も、「BTD目的の体外設置型連続流VADシステム」の医師主導型治験と平行して進めた長期in vivo評価を含む非臨床試験も確立したQMS体制下で進めることができた。また、「次世代型ポータブル心肺補助(ECMO)システム」についても、QMS下での長期in vivo評価を含む非臨床試験を、PMDA相談の元で平成30年度中の治験開始を前提として進めた。
 一方、平成24〜28年度に実施した「革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業(総括研究代表者:巽)」では、26年度に「中長期間呼吸/循環補助(ECMO/PCPS)システムの評価ガイドライン(案)」を、27年度には「体外設置型連続流補助人工心臓システムの評価ガイドライン(案)」を策定して、厚生労働省およびPMDAに提出した。また平成28年度は、平成20年4月の厚労省通知「次世代型高機能人工心臓の臨床評価のための評価指標」の現状への適合性の検討と改定課題の抽出を行い、報告書としてPMDAへの提出が完了している。これらのうち前2者のガイドラインは既にPMDAにより公開されており、これらは平成29年度に推進した「BTD目的の体外設置型連続流VADシステム」および「次世代型ポータブルECMOシステム」に関する非臨床試験および医師主導型治験における評価基準の根幹を形成する役割を果たした。

研究業績

  1. Date K, Nishimura T, Arakawa M, Takewa Y, Kishimoto S, Umeki A, Ando M, Mizuno T, Tsukiya T, Ono M, Tatsumi E. Changing pulsatility by delaying the rotational speed phasing of a rotary left ventricular assist device. Journal of Artificial Organs. 20, 18-25, 2017.
  2. Fujii Y, Tanabe T, Yamashiro T, Shirai M, Takewa Y, Tatsumi E. Effect of Hydroxyethyl Starch Priming on the Systemic Inflammatory Response and Lung Edema after Cardiopulmonary Bypass in a Rat Model. ASAIO Journal. 63, 618-623, 2017.
  3. Iizuka K, Nishinaka T, Takewa Y, Yamazaki K, Tatsumi E. The influence of pump rotation speed on hemodynamics and myocardial oxygen metabolism in left ventricular assist device support with aortic valve regurgitation. Journal of Artificial Organs. 20, 194-199, 2017.
  4. Minematsu A, Hanaoka T, Takeshita D, Takada Y, Okuda S, Imagita H, Sakata S. Long-term wheel-running can prevent deterioration of bone properties in diabetes mellitus model rats. Journal of Musculoskeletal & Neuronal Interactions. 17, 433-443, 2017.
  5. Naito N, Nishimura T, Iizuka K, Fujii Y, Takewa Y, Umeki A, Ando M, Ono M, Tatsumi E. Novel Rotational Speed Modulation System Used With Venoarterial Extracorporeal Membrane Oxygenation. Annals of Thoracic Surgery. 104, 1488-1495, 2017.
  6. Nishida M, Kosaka R, Maruyama O, Yamane T, Shirasu A, Tatsumi E, Taenaka Y. Long-term durability test of axial-flow ventricular assist device under pulsatile flow. Journal of Artificial Organs. 20, 26-33, 2017.
  7. Sawa Y, Matsumiya G, Matsuda K, Tatsumi E, Abe T, Fukunaga K, Ichiba S, Kishida A, Kokubo K, Masuzawa T, Myoui A, Nishimura M, Nishimura T, Nishinaka T, Okamoto E, Tokunaga S, Tomo T, Tsukiya T, Yagi Y, Yamaoka T. Journal of Artificial Organs 2016: the year in review. Journal of Artificial Organs. 20, 1-7, 2017.
  8. Sukumaran V, Tsuchimochi H, Tatsumi E, Shirai M, Pearson JT. Azilsartan ameliorates diabetic cardiomyopathy in young db/db mice through the modulation of ACE-2/ANG 1-7/Mas receptor cascade. Biochemical Pharmacology. 144, 90-99, 2017.
  9. Iwai R, Haruki R, Nemoto Y, Nakayama Y. Induction of cell self-organization on weakly positively charged surfaces prepared by the deposition of polyion complex nanoparticles of thermoresponsive, zwitterionic copolymers. Journal of Biomedical Materials Research Part B: Applied Biomaterials. 105, 1009-1015, 2017.
  10. Yamano N, Kawasaki N, Ida S, Nakayama Y, Nakayama A. Biodegradation of polyamide 4 in vivo. Polymer Degradation and Stability. 137, 281-288, 2017.
  11. 中山 泰秀, 古越 真耶. Type Cバイオチューブがもたらす人工血管のイノベーション. 医工学治療. 29, 161-166, 2017.
  12. 佐藤 徹, 中山 泰秀, 坂井 信幸. 日本の機器開発 -NCVC-CS1. 頭蓋内動脈ステントのすべて. 130-140, 2017.
  13. 斎藤 拓也, 増澤 徹, 長 真啓, 巽 英介. 超小型磁気浮上式小児用人工心臓の開発. 日本AEM学会誌. 25, 198-204, 2017.
  14. 石井 大造, 圓見 純一郎, 飯田 秀博, 栗栖 薫, 中山 泰秀. 世界最小径人工血管(マイクロバイオチューブ)の開発 -ラットモデルでの完全6カ月開存-. 形成外科. 60, 341-345, 2017.
  15. 築谷 朋典. 心不全治療と人工心臓. 医療用バイオマテリアルの研究開発. 82-87, 2017.
  16. 築谷 朋典. 心不全治療と人工心臓. バイオインダストリー. 34, 23-29, 2017.
  17. 中山 泰秀. 生体内組織形成術(IBTA)による再生医療. 小児外科. 49, 513-518, 2017.
  18. 中山 泰秀. バスキュラーアクセスへの応用を目指して. 最新醫學. 72, 1693-1700, 2017.
  19. 東郷 好美, 藤井 豊, 武輪 能明, 片桐 伸将, 鎌田 和也, 巽 英介. 成人ECMO用ダブルルーメンカテーテルの大動物モデルにおける酸素化と脱炭酸ガス化評価. 体外循環技術. 44, 1-6, 2017.
  20. 東郷 好美. Impact of bypass flow rate and catheter position in veno-venous extracorporeal membrane oxygenation on gas exchaege in vivo. 人工臓器. 46, 14-16, 2017.
  21. 武輪 能明. 人工心臓(基礎). 人工臓器. 46, 133-137, 2017.
  22. 片桐 伸将. 呼吸ECMO用のデバイス. 人工臓器. 46, 202-207, 2017.

過去の業績

最終更新日 2019年01月09日

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