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人工臓器部

2016年の業績

研究活動の概要

 人工臓器部では、平成28年度も従来に引き続いて、循環器系人工臓器に関する研究開発を進め、さらに研究開発促進のためのシステム構築についても推進した。患者を救命し社会復帰せしめるための循環器系治療系高リスク医療機器、とくに人工心臓や心肺補助装置などの開発・製品化・臨床応用を目指した活動を行った。実用化を最優先とし、学会・論文発表等の学術的業績のみにとらわれることなく、トランスレーショナルリサーチの成果を国際競争力のある医療機器として迅速に世の中に出し、製品として臨床現場に届けることに重点を置いた活動に注力した。

 具体的な研究開発としては、1) 超小型体内埋込式補助人工心臓(VAD)システムの開発、2) 体外設置型連続流VADシステムの開発、3) 次世代型ポータブル心肺補助(ECMO)システムの開発、4) 小児用体外設置型拍動流VADシステムの開発、5) 空気駆動VAD用携帯型駆動装置の開発、6) 生体内組織形成術による循環器系移植用自己組織体の開発、などを進めており、さらに7) 連続流型人工心臓の最適制御法の検討や8) 信頼性保証(QMS)非臨床試験システムの構築などについても継続的に取組んでいる。

 研究開発のフレームとしては、平成24年度までは先端医療開発特区設備整備事業(スーパー特区)「先端的循環器系治療機器の開発と臨床応用、製品化に関する横断的・統合的研究」を構成する4つのサブテーマの内の2つのサブテーマである「次世代呼吸循環補助システム」および「高機能体内埋め込み型補助人工心臓」について、分担研究者の巽がサブグループ長として担当し研究開発を加速・推進してきた。平成25〜28年度は、スーパー特区事業におけるNEDOの「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/次世代型高機能血液ポンプシステムの研究開発」(NEDO橋渡し研究)の代表的成果物である、世界初の動圧浮上方式の高耐久性遠心血液ポンプをコア技術とした「Bridge to Decision(BTD)目的の体外設置型連続流VADシステム」のトランスレーショナル開発研究について、これを中核シーズの1つとする厚生労働省の「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」およびかかる新規機器に対する評価ガイドライン作成などを主な研究課題とする「革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業」を通じて研究開発を推進した。

 このうち、平成23年度から始まった「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」では、採択5課題中で唯一「医療機器」を対象として当センターの提案が採択されており、リスクマネージメントやQMS体制の整備を進め、さらにアカデミアとして我が国初となる医療機器研究開発のISO13485については、平成26年度までに体制構築と書類整備、教育訓練等が完了して、平成27年8月にauditを経て正式に認証を取得した。これにより、当部で施行した非臨床試験のデータがそのまま薬事申請に使用可能なQMS試験となり、医療機器の迅速な開発を行う拠点としての整備が大きく前進した。これらを元に、中核シーズである「BTD目的の体外設置型連続流VADシステム」の非臨床試験を進めており、平成28年にはPMDA相談も開始し、現在平成29年度夏以降の医師主導治験の実施準備を進めつつある。

 また、平成24年度から開始された巽を総括研究代表者とする「革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業」では、26年度に「中長期間呼吸/循環補助(ECMO/PCPS)システムの評価ガイドライン(案)」を、27年度には「体外設置型連続流補助人工心臓システムの評価ガイドライン(案)」を策定して、厚生労働省およびPMDAに提出した。さらに平成28年度は、平成20年4月の厚労省通知「次世代型高機能人工心臓の臨床評価のための評価指標」の現状への適合性の検討と改定課題の抽出を行い、報告書としてPMDAに提出した。また、PMDAとの連携による相互人材交流(PMDA審査員2名による当部動物実験剖検の体験)や定期的意見交換会の実施、PMDAによるケーススタディ(当部ポータブルECMOシステムが題材)およびオープンセミナー(28年度は3回)なども行った。

 一方、平成26年度に採択されたAMED早期探索的・国際水準臨床研究事業「救急使用〜安全な長期使用が可能な世界最小・最軽量・最高性能の次世代型心肺補助システムの開発・臨床応用と製品化・世界展開」は平成28年度に最終年度を迎えたが、開発目標の装置はほぼ最終形が完成してPMDA相談も開始し、平成30年度の医師主導治験と製造承認申請を目指して慢性動物実験評価も含めた非臨床試験を進めている段階にある。

2016年の主な研究成果

    国循型体外設置方式拍動流VADに関しては、従来用いられていた人工弁が急に生産中止となったことに対応するため、新規の人工弁を組み込む改良を行って非臨床長期動物実験評価を実施し、そのデータを基に企業が一部変更申請して平成27年2月に承認を受ける事が出来た。これにより臨床現場から突然VADが姿を消すという事態は回避され、平成28年度もINTERMACS profile1および2の急性重症例を中心に、出荷数で150台(推定年間80例程度)に対して用いられている。このように、臨床現場で重要な役割を担う医療機器を守るために信頼性保証下での非臨床長期動物実験評価を迅速かつ確実に進めることも、我が国の中で当部しか果たすことが出来ないで重要な使命の一つあると考えている。また、小児用拍動流VADシステムに関しては、製造承認が得られている国循型M型VADを改良し、平成28年3月に終了した「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」のシーズ研究の認定の元で非臨床長期動物実験評価を完了して、現在PMDAへの薬事相談を進め早期の薬事承認を目指している。

    一方、NEDO橋渡し研究のもとで開発を進めてきた、恒久使用(Destination Therapy: DT)を目的とした動圧浮上式非接触回転型軸流ポンプである超小型軽量体内埋込式VADについては、平成27年度までに非臨床試験および耐久性試験を完了した。この研究開発も「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」のシーズ研究として認定され、PMDAの事前面談を受けるなどの非臨床試験最終評価段階に入り、研究開発担当企業から製造販売担当医療機器メーカーへの技術移転が完了した。また、同じ動圧浮上方式として開発を完了した高耐久性ディスポ遠心ポンプ(BIOFLOAT-NCVC)については、連携企業から平成27年に体外循環用として薬事申請が行われ、平成28年には製造販売承認を取得した。上述の如くBTD目的の体外設置型連続流VADシステムとして製品化の準備を進めており、平成28年からPMDA相談を開始して平成29年度夏以降の医師主導治験の実施を目指している。

    次世代ECMOシステムに関する研究では、当部が開発した長期耐久性と抗血栓性に優れた革新的人工肺BIOCUBEと上記のBIOFLOAT-NCVC遠心ポンプを組み合わせて小型パッケージ化した持ち運び可能な高機能超小型ECMOシステムの開発を進めており、平成28年度までにほぼ最終試作の段階に達した。酸素ボンベを含めて総重量7kg以下の手荷物サイズのECMOシステムで、スタンドアローンで1~2時間の連続駆動が可能な革新的システムである。平成28年度はセンサ類の改良を進め、回路内の抗血栓性を損なうこと無くドライバ組込型のセンサ付帯を実現している。上述の如く本装置も現在PMDAとの相談を開始しており、平成30年度の医師主導治験と製造承認申請を目指している。

研究業績

  1. Naito N, Nishimura T, Takewa Y, Kishimoto S, Date K, Umeki A, Ando M, Ono M, Tatsumi E. What Is the Optimal Setting for a Continuous-Flow Left Ventricular Assist Device in Severe Mitral Regurgitation?. Artificial Organs. 40, 1039-1045, 2016.
  2. Naito N, Mizuno T, Nishimura T, Kishimoto S, Takewa Y, Eura Y, Kokame K, Miyata T, Date K, Umeki A, Ando M, Ono M, Tatsumi E. Influence of a Rotational Speed Modulation System Used With an Implantable Continuous-Flow Left Ventricular Assist Device on von Willebrand Factor Dynamics. Artificial Organs. 40, 877-883, 2016.
  3. Fujii Y, Shirai M, Takewa Y, Tatsumi E. Cardiopulmonary Bypass with Low- Versus High-Priming Volume: Comparison of Inflammatory Responses in a Rat Model. Asaio Journal. 62, 286-290, 2016.
  4. Maruyama O, Kosaka R, Nishida M, Yamane T, Tatsumi E, Taenaka Y. In vitro thrombogenesis resulting from decreased shear rate and blood coagulability. International Journal of Artificial Organs. 39, 194-199, 2016.
  5. Date K, Nishimura T, Takewa Y, Kishimoto S, Arakawa M, Umeki A, Ando M, Mizuno T, Tsukiya T, Ono M, Tatsumi E. Shifting the pulsatility by increasing the change in rotational speed for a rotary LVAD using a native heart load control system. Journal of Artificial Organs. 19, 315-321, 2016.
  6. Sumikura H, Nakayama Y, Ohnuma K, Takewa Y, Tatsumi E. Development of a stent-biovalve with round-shaped leaflets: in vitro hydrodynamic evaluation for transcatheter pulmonary valve implantation (TPVI). Journal of Artificial Organs. 19, 357-363, 2016.
  7. Date K, Kishimoto S, Fujii Y, Togo K, Kakuta Y, Mizuno T, Tsukiya T, Takewa Y, Nishimura T, Ono M, Tatsumi E. Effects of feeding state on anticoagulation in adult goats treated with warfarin. Journal of Artificial Organs. 19, 301-304, 2016.
  8. Arakawa M, Nishimura T, Takewa Y, Umeki A, Ando M, Kishimoto Y, Kishimoto S, Fujii Y, Date K, Kyo S, Adachi H, Tatsumi E. Pulsatile support using a rotary left ventricular assist device with an electrocardiography-synchronized rotational speed control mode for tracking heart rate variability. Journal of Artificial Organs. 19, 204-207, 2016.
  9. Nakayama Y, Kaneko Y, Takewa Y, Okumura N. Mechanical properties of human autologous tubular connective tissues (human biotubes) obtained from patients undergoing peritoneal dialysis. Journal of Biomedical Materials Research Part B-Applied Biomaterials. 104, 1431-1437, 2016.
  10. Sawa Y, Matsuda K, Tatsumi E, Matsumiya G, Tsukiya T, Abe T, Fukunaga K, Kishida A, Kokubo K, Masuzawa T, Myoui A, Nishimura M, Nishimura T, Nishinaka T, Okamoto E, Tokunaga S, Tomo T, Yagi Y, Yamaoka T. Journal of Artificial Organs 2015: the year in review : Journal of Artificial Organs Editorial Committee. Journal of Artificial Organs. 19, 1-7, 2016.
  11. Date K, Nishimura T, Arakawa M, Takewa Y, Kishimoto S, Umeki A, Ando M, Mizuno T, Tsukiya T, Ono M, Tatsumi E. Changing pulsatility by delaying the rotational speed phasing of a rotary left ventricular assist device. Journal of Artificial Organs. Epub, 2016.
  12. Nishida M, Kosaka R, Maruyama O, Yamane T, Shirasu A, Tatsumi E, Taenaka Y. Long-term durability test of axial-flow ventricular assist device under pulsatile flow. Journal of Artificial Organs. Epub, 2016.
  13. 巽 英介. 人工心臓. 日本体外循環技術医学会 教育セミナーテキスト. 76-83, 2016.
  14. 水野 敏秀. 補助人工心臓と von Willebrand 因子. 日本血栓止血学会誌. 27, 322-327, 2016.
  15. 武輪 能明. 非薬物療法. ここが知りたい 重症心不全の患者さんが来ました. 526-530, 2016.
  16. 中屋 貴子, 堀 由美子, 水野 敏秀, 松本 順彦, 福嶌 教偉. 重症患者の循環管理における特殊な医療関連機器圧迫創傷~植込型左心補助人工心臓のドライブライン皮膚貫通部圧迫創の管理~. WOC Nursing. 4, 78-88, 2016.
  17. 妙中 義之, 巽 英介, 武輪 能明, 水野 敏秀, 築谷 朋典, 柳園 宣紀, 一之瀬 高紀. 長期呼吸循環補助システムのための体外設置型遠心血液ポンプおよび専用コンソール. 人工臓器. 45, 25-26, 2016.
  18. 飯塚 慶, 水野 敏秀, 築谷 朋典, 武輪 能明, 巽 英介. 左室補助人工心臓補助下送血管角度および大動脈弁開放が大動脈弁逆流に与える影響についての検討. 人工臓器. 45, 29-30, 2016.
  19. 茂木 諒介, 本間 章彦, 住倉 博仁, 大沼 健太郎, 巽 英介, 荒船 龍彦, 大越 康晴, 福井 康裕. 人工心臓埋め込みの術前検討支援プログラムの開発. 人工臓器. 45, 38, 2016.
  20. 荒川 衛, 西村 隆, 武輪 能明, 巽 英介. Novel control system to prevent right ventricular failure induced by rotary blood pump. 人工臓器. 45, 21-22, 2016.
  21. 稲垣 悦子, 峰松 一夫, 山本 晴子, 巽 英介, 北風 政史, 赤川 英毅, 築谷 朋典, 武輪 能明, 水野 敏秀, 住倉 博仁, 畠中 祥美, 妙中 義之. 我が国アカデミア初の医療機器設計開発の品質マネジメントシステムISO13485の取得. 循環器病研究の進歩. 37, 4-14, 2016.
  22. 武輪 能明. 高い耐久性と抗血栓性を併せ持つ体外式動圧浮上型連続流補助人工心臓(VAD)システムの開発. 革新的医療技術創出拠点プロジェクト 平成27年度成果報告会講演録. 146-149, 2016.
  23. 水野 敏秀. 連続流血液ポンプ使用時におけるvon Willebrand factorの動態. 人工臓器. 45, 229-231, 2016.
  24. 築谷 朋典, 水野 敏秀, 武輪 能明, 住倉 博仁, 巽 英介, 妙中 義之. 世界初のディスポーザブル動圧軸受式遠心血液ポンプの開発と製品化. 循環器病研究の進歩. 37, 88-94, 2016.
  25. 築谷 朋典. 心不全治療と人工心臓. 医療用バイオマテリアルの研究開発. 82-87, 2016.

過去の業績

最終更新日 2017年08月21日

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