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治療エビデンスが確立した脳梗塞超急性期の再開通治療 ~アジアではどう対応すべきか~

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:橋本信夫、略称:国循)脳血管内科・脳神経内科の豊田一則部門長らの合同研究チームは、今年になって次々と発表された脳梗塞超急性期血管内治療臨床試験の成功を受けて、アジアという民族的特殊性を考慮した今後の急性期脳梗塞治療の展望を、発表しました。この総説は、米国心臓協会・米国脳卒中協会(American Heart Association / American Stroke Association)機関誌の「Stroke」6月号に設けられた特集企画のために執筆を求められたもので、同誌のオンライン版に平成27年5月6日午前5時(日本時間)に掲載予定です。

脳梗塞超急性期の脳血管内治療は、手技的複雑さや脳の脆弱さのために、冠動脈疾患における血管内治療と比べて開発が遅れていましたが、近年になり専門の脳動脈血栓回収機器が開発され、次第に治療効果を高めてきました。このうち「ステントリトリーバー」と呼ばれるステント型脳血栓回収機器を主に用いた臨床試験の成果が、最近相次いで報告されました。これは、ステント(網目の筒)を血栓にめり込ませ、血栓を網目に絡めつつ取り除く機器です。いずれの試験においても、一定の条件を有する脳梗塞患者に主にtPA静注による標準内科治療に追加して脳血管内治療を行うことで、内科治療のみと比較し3ヶ月後の患者転帰が大幅に改善しました。この結果を受け、国内の適正治療指針が2015年4月に改訂されたばかりです。

参考: http://www.jsts.gr.jp/img/noukessen.pdf

この総説ではアジアにおける脳卒中の特殊性が、「頭蓋内動脈硬化性病変が多い」「頭蓋内出血が多い」「独自の食生活や生活習慣」「遺伝学的背景」の4点に由来することから起稿し、次いで脳梗塞超急性期の再開通治療として静注血栓溶解療法(tPA静注)と脳血管内治療のアジアにおける現状を解説しています。アジアにおける医療は地域差が大きく、日中韓などの東アジアで再開通治療の普及や臨床研究が進んでいるのに対し、他地域ではtPA静注でさえ標準治療として定着していないことが少なくありません。また急性期脳血管内治療の問題点として、アジア人は頭蓋内動脈狭窄性病変が比較的多いために、「ステントリトリーバー」などの脳動脈血栓回収機器のみでは十分に再開通しない場合も少なくないであろう点を、詳しく考察しています。この場合、血栓回収に続けてバルーンでの脳動脈形成術ないしステント挿入術を組み合わせる必要も生じますが、これらの治療はエビデンスが確立しておらず、今後アジア発の臨床試験が必要かもしれません。さらに再開通治療や抗血小板薬、抗凝固薬などを用いた抗血栓療法における必然的な合併症である頭蓋内出血が、とくにアジア人に多い点も、今後の超急性期治療戦略の構築に影響を及ぼすでしょう。

脳梗塞治療における大きな転換点を迎え、今後国内でも再開通治療を円滑に行うためのさまざまな医療環境整備が求められます。脳梗塞を含めた脳卒中は、わが国の国民病であり、今後のさらなる治療法の進歩が強く望まれます。

※本研究は循環器病研究開発費(23-4-3)により支援されました。

最終更新日 2015年05月06日

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