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アキレス腱の超音波で家族性高コレステロール血症診断
動脈硬化重症度予想にも有用、ガイドラインへの応用期待

平成29年8月1日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(略称:国循)研究所病態代謝部の小倉正恒室長、斯波真理子部長、(株)関西超音波サービス 道倉雅仁代表取締役らの研究チームは、家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:以下「FH」)の診断基準であるアキレス腱の厚さを超音波で評価可能であることを明らかにしました。本研究成果は、日本循環器学会の専門誌「Circulation Journal」に平成29年8月1日(日本時間)に掲載されました。

背景

FHはLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の異常な増加を来す遺伝病です。FHではLDLコレステロールの増加により動脈硬化が進行し、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患を発症しやすく、また発症年齢も40~50代と、通常より20年程度早まる傾向があるので、早期発見・早期治療が非常に重要です。
FHはアキレス腱にもコレステロールがたまって厚くなる特徴があります。現在のガイドラインでは、FHの診断基準の1項目とされており、FHと診断する決め手になるものです。アキレス腱の厚さは、X線画像で最も厚い部分が9mm以上、あるいは触診で厚い場合にFHと定義されています。しかしながら、一般の医院にX線撮影装置が常備されていることが少なく、またX線画像では皮膚とアキレス腱の境界が不明瞭であるため測るべき場所がわかりにくいことから、一般の医院でFHの診断が困難なことが問題となっています。また、慣れていない場合に、触診で厚さを知ることが難しい場合も多いこと、さらにはアキレス腱の横幅を測るのに対し、X線では縦幅を測る(図B)ことの矛盾も指摘されてきました。
FHの診断率向上のためにも、アキレス腱の厚さを簡単に測る方法が確立されることが、期待されていました。

研究手法と成果

国循病態代謝部の研究チームは、実臨床においてFH患者に対し超音波を用いてアキレス腱の厚さを測定する方法の確立に取り組んできました。超音波画像(図A)からは、触診の指標である横幅(AT-W)だけでなく、ガイドラインでX線画像指標とされている縦幅(AT-T)さらには断面積(AT-A)も測ることができることが明らかになりました。本研究では、触診・レントゲン画像診断・超音波画像診断の結果を総合し、超音波画像から計測したAT-Tについて男性6mm以上、女性5.5mm以上でFHの可能性が高いとする基準値(カットオフ値)をわが国で初めて設定しました。
また、アキレス腱の厚さはLDLコレステロール高値の状態の蓄積を反映すると考えられるため、FH診断基準だけでなく冠動脈疾患のリスクマーカーにもなります。本研究では、アキレス腱の厚さは年齢や性別、高血圧、糖尿病、喫煙など他のリスクと独立して、冠動脈疾患および無症状の動脈硬化指標である頸動脈硬化の重症度に関係することも明らかにしました。

今後の展望と課題

超音波画像診断装置は広く様々な病院・医院にあり、かつ放射線被ばくの問題もないため、かかりつけ医においてアキレス腱の厚さを正確に測定して、FHの診断をすることが容易になり、FHの診断率の向上や早期治療開始も可能になることが期待できます。今後は、計測法の標準化が必要になります。

(図)アキレス腱の超音波画像(A)とX線画像(B)
ガイドラインでは、(B)のX線画像の、黄色い矢印間の距離からアキレス腱の厚さを測定することになっている。この距離は、超音波画像(A)においてAT-Tに相当する。超音波画像では、FH診断の基準となる指標であるAT-Tの他、AT-WおよびAT-Aも計測することができる。今後は機械を当てる位置や方向などの規則を決めて、誰が測定しても同じ値を得ることができるように測定手法を標準化する予定である。

アキレス腱の超音波画像X線画像

最終更新日 2017年08月01日

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