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脳出血超急性期患者の降圧レベルと臨床転帰:
研究者主導国際試験 ATACH-2 からの解析

平成30年11月28日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(略称:国循)の豊田一則副院長、古賀政利脳血管内科部長、山本晴子臨床試験推進センター長らの研究チームが海外研究者と共同で行った急性期脳出血症例に対する降圧療法の効果を検証する臨床試験「Antihypertensive Treatment of Acute Cerebral Hemorrhage (ATACH)-2試験 (Clinical Trials.gov NCT01176565; UMIN000006526:注1)」に基づくサブ解析研究が、米国神経学会 (American Academy of Neurology)機関誌「Annals of Neurology」オンライン版に、平成30年11月12日に掲載されました。

背景

わが国において脳出血は脳卒中全体の約2割を占めます。急性期脳梗塞における救命率は、近年の血栓溶解療法や血管内血栓回収療法などの発展により飛躍的に向上しましたが、急性期脳出血に対してはそのように有効な急性期治療法は確立されていません。このため脳出血は死亡や機能障害につながりやすく、その経済的損失は脳卒中全体の75%を占める脳梗塞に匹敵するとの試算もあります。わが国における脳出血の発症率は欧米の数倍ともいわれており、急性期脳出血に対する早急な治療法の確立が求められています。

研究手法と成果

国循の研究チームは国内13施設の協力(表1)を得て、米国、中国、台湾、韓国、ドイツの研究者らとともにATACH-2試験に参加しました。

今回のサブ解析では、ATACH-2試験で降圧療法後の24時間に測定された収縮期血圧レベルの平均値(以下「到達収縮期血圧値」)を求め、この血圧レベルと3か月後死亡・高度機能障害や早期血腫拡大(変化量6 mL超)、7日以内の心血管系および腎臓系の有害事象(非軽症)との関連を調べました。ATACH-2試験に登録された1000例(うち日本人288例)の到達収縮期血圧値(中央値で129.8 mmHg)によって5群に分け、解析を行いました(図1)。

図2に、120~130 mmHg群を基準とした場合の、5群の3か月後死亡・高度障害、早期血腫拡大、7日以内の心・腎有害事象との関連を示します。死亡・高度障害は、140~150 mmHgが有意に高率を示しましたが(オッズ比 1.62、95%信頼区間1.02-2.58)、全体的に血圧との関連は不明瞭でした。血腫拡大は血圧レベルと正の相関関係を認め、とくに140 mmHg以上の2群で有意に高率に認めました。心・腎有害事象は血圧レベルと負の相関関係を認め、とくに140 mmHg以上の2群で有意に低い割合でした。

今後の展望・課題

脳出血急性期の積極的な降圧療法の科学的エビデンスはまだ十分といえません。2016年にNew England Journal of Medicineに掲載されたATACH-2試験の解析結果でも、死亡または高度機能障害の発生率は積極的な降圧療法を行った群と通常の降圧療法を行った群のどちらも38%程度であり、積極的降圧による転帰改善効果を認めませんでした。

今回のサブ研究で、脳出血超急性期に急激に血圧を下げることで後遺症につながる血腫の拡大は抑制されるものの、血圧が低くなるほど心・腎有害事象が増えるため、全体として死亡や高度障害を減らせない可能性が示されました。降圧に伴う全身循環の変化に十分に配慮して脳出血急性期治療を行う必要性が考えられました。

ATACH-2試験からは、他にも多くのサブグループ解析が計画され、国循の研究チームもその幾つかを担当しています。今後の更なる解析結果を経て、真に日本人に有効な急性期脳出血治療法が解明されてゆくことが期待されます。

※ 本試験は米国国立衛生研究所(NIH)の神経疾患・脳卒中部局であるNational Institute of Neurological Disorders and Strokeからの研究助成費(U01-NS062091、U01-NS061861)によって、運営されました。国内での試験遂行の一部は、国循循環器病研究開発費(H23-4-3、H28-4-1)により支援されました。

<図表>

(図1)無作為化後24時間以内に到達した収縮期血圧平均値の分布


(図2)到達した収縮期血圧平均値と臨床転帰の関係


(表1)国内参加施設一覧

施設名登録件数
国立循環器病研究センター79
神戸市立医療センター中央市民病院53
虎の門病院38
聖マリアンナ医科大学16
杏林大学16
岐阜大学14
中村記念病院13
東京都済生会中央病院12
広南病院11
聖マリアンナ医科大学東横病院10
NHO 九州医療センター10
NHO 名古屋医療センター8
慶應義塾大学7
川崎医科大学1

最終更新日 2018年11月28日

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