国立循環器病研究センター

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国循のLDLコレステロール測定法の精度について解析 世界基準である米国の指標とほぼ同レベルの正確性を有すると判明

平成26年4月18日

国立循環器病研究センター(略称:国循)予防健診部脂質基準分析室の中村雅一室長らの研究チームは、国循でLDLコレステロール値測定の精度評価に使用しているBeta Quantification 法(BQ法)を、米国の疾病対策センター(CDC)の過去15年間のLDLコレステロール標準化成績と比較し測定精度を解析した結果、国際的にも高レベルの精度で測定していたことを証明しました。BQ法は、血液を超遠心分離後に浮上するリポ蛋白を除去し、残りの部分のコレステロール値からHDLコレステロール値を差し引いたものをLDLコレステロール値とする分析法(直接測定法)で、HDLコレステロール・LDLコレステロールともに正確な目標となる基準値を求めることができます。本研究の成果は、平成26年4月20日発行の「Clinica Chimica Acta」に掲載されます。

LDLコレステロールは動脈硬化性疾患を引き起こし、数ある循環器疾患の危険因子の中で最も重要なものの一つです。これを正確に測定できると循環器病予防やメタボリック検診の推進にもつながると期待できます。日本でLDLコレステロール直接測定法の試薬開発を行う企業は6社以上と多く試験開発能力と技術力の高さを示す一方で、これら試薬の測定結果の正確性に問題があるとも指摘されています。このため、まず国内唯一のLDLコレステロール直接測定法の精度評価機関である国循の精度評価そのものが正確であるかどうか、長期間のデータをもとに検証する必要がありました。

本研究では、国循のBQ法により算出された標準化成績と世界基準となるCDCの標準化成績の差異を分析しました。その結果、HDLコレステロール値の差異は40mg/dLの診断基準値で国循の測定値はCDCより平均0.3mg/dL高く(図1)、LDLコレステロール値は140mg/dLの基準値で平均0.6mg/dL低く(図2)なりました。CDCの値から5mg/dL以内の乖離であれば正確であるところ、国循のBQ法はCDCと遜色ない正確性を有することが確認できました。

LDLコレステロールが高い、もしくはHDLコレステロールが低いほど動脈硬化性疾患の発生頻度が高くなることが各国の疫学調査研究で判明し、また日本でも生活習慣の欧米化に伴い心臓病を中心とする循環器病が増加する懸念があります。LDLコレステロール値の正確性を評価する基準分析法の測定精度を明らかにしたことで、今後は試験成績で指摘された問題点を改良した試薬を製造し、診断や治療、予防対策に活用できると期待されています。

【図1】CDCと国循の基準分析法におけるHDLコレステロールの差について
動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2012年版)による脂質異常症のスクリーニングのための診断基準値によりますと、HDLコレステロールが40 mg/dL以下の場合に、低HDLコレステロール血症と判定されます。国循のBQ法の平均値(黒い太線)は、CDC基準値から殆どずれておらず、各測定値(黒点)も5mg/dL未満の誤差を保っています。
【図1】CDCと国循の基準分析法におけるHDLコレステロールの差について

【図2】CDCと国循の基準分析法におけるLDLコレステロールの差について
動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2012年版)による脂質異常症のスクリーニングのための診断基準値によりますと、LDLコレステロールが140 mg/dL以上の場合に、高LDLコレステロール血症と診断されます。国循のBQ法の平均値(黒い太線)は、CDC基準値から殆どずれておらず、各測定値(黒点)も5mg/dL未満の誤差を保っています。
【図2】CDCと国循の基準分析法におけるLDLコレステロールの差について

最終更新日 2014年04月18日

最終更新日:2021年09月28日

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