ホーム > 広報活動 > プレスリリース > 難治性高コレステロール血症の新たな治療法について

難治性高コレステロール血症の新たな治療法について

平成24年5月16日

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:橋本信夫、略称:国循)研究所の斯波真理子 病態代謝特任部長、山本剛史 研究員らの研究グループは、大阪大学薬学科小比賀聡教授との共同研究で、難治性の高コレステロール血症マウスに対し、特定の遺伝子の発現を抑制する薬物療法(アンチセンス法)を用いて、悪玉コレステロールを低下させることに成功しました。将来的には、内服薬では治療困難な高コレステロール血症の患者に対する新しい治療法として期待されます。

本研究成果は、独立行政法人医薬基盤研究所による先駆的医薬品・医療機器研究発掘支援事業の支援を受けて行われたもので、米国の科学雑誌『Molecular Therapy-Nucleic Acids』に、2012年5月15日付オンライン版で発表されます。

アイコン 研究手法と成果

アンチセンス法とは、遺伝子の発現を抑える方法として開発されたもので、特定の遺伝子の配列に結合して、その発現を抑制する薬物(アンチセンス)を投与する技術です。アンチセンスは、遺伝子の配列がわかれば、簡単に作製できることから、細胞実験にはよく使用されていますが、生体内に投与した場合、①アンチセンスそのものが血液中の酵素によってすぐに壊され効果を発揮できないこと。②アンチセンスと、目的の遺伝子との結合が弱いことなどが原因で、治療への応用は困難だと考えられていました。

「PCSK9」は血液中に存在して、コレステロールを調節するLDL受容体を壊してしまうタンパク質です。遺伝的にPCSK9の血液濃度が高い人や、スタチンを服用することにより、PCSK9の血液濃度が上昇してしまう人などでは、スタチンが効きにくいことが解っています。

大阪大学薬学部と国循の研究グループは、従来のアンチセンスよりも血液中の酵素によっても壊れにくく、遺伝子発現に対する抑制効果がはるかに大きい「BNA」という新規アンチセンスを用いて、新しい治療法の開発を行ってきました。

今回、BNAをマウスに投与したところ、PCSK9の遺伝子発現が低下、LDL受容体が増加し、悪玉コレステロールの著明な低下を認めました。

アイコン 研究の背景

高コレステロール血症に対する治療法としては、スタチン等の薬剤が用いられていますが、薬剤に対して難治性の重症高コレステロール血症に対しては血漿交換療法しか方法がなく、副作用など患者には大きな負担となっています。

アイコン 今後の展望と課題

本研究成果に基づいて臨床応用まで持って行くことが可能であり、現在、内服薬では治療困難な高コレステロール血症の患者に対する新しい治療の開発が期待されます。また、この技術は、遺伝子の情報がわかれば、他の病気の原因に関わる遺伝子の発現を低下させることが出来るため、がんや感染症、自己免疫疾患などの難病への応用が可能である大変有用な治療法であり、本研究ではその基礎を築いた点で重要です。

最終更新日 2012年05月16日

ページ上部へ