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創薬オミックス解析センター

研究について
致死性不整脈の原因心筋イオンチャネル遺伝子のVUSのハイスループット機能評価法の開発

最近、次世代シークエンサー(NGS)の普及にともない、これらの不整脈においても、臨床的意義づけができない低頻度のバリアント (VUS)が急激に増えています。一方、VUSの機能予測プログラムはいくつか開発されていますが、実験による機能分類に比べて信頼性は確立していません。我々はBrS患者に同定した55個のSCN5A変異のうち、予測プログラムで「病的」と推定された22個のバリアントの機能をパッチクランプで解析したところ、14個は正常機能でした (関連業績3,査読中)。これは、予測プロブラムに依存したVUSの解釈が、時として診断・治療・患者管理を誤った方向に導く危険性をもつことを示しており、VUSの機能を正確かつ効率よく検証する技術を確立することは、喫緊の課題だといえます。本研究では、我々がすでに解析した日本人LQTS・BrS患者のNGSデータを用いて1,2、3つの主要心筋イオンチャネル遺伝子のVUSを抽出し、その結果を治療・予防の現場に迅速にフィードバックできるゲノム医療の実現を目指します。

研究の概要

本研究は、致死性不整脈関連の3つの主要心筋イオンチャネル遺伝子(KCNQ1, KCNH2, SCN5A)に着目し、LQTS・BrSで同定されたVUSをハイスループットに解析して機能アノテーションを与え、致死性不整脈の機能検証データベースとして公開することを目的とします。

我々のグループが解析した日本人LQTS (約2,200人)とBrS(296人) 患者の4つのNGSデータから、ミスセンスVUS (MAF<0.1%)を抽出します。健常人500人のエクソームデータからも同様にVUSを抽出し、ToMMo健常日本人ゲノムデータベース(4.7K-JPN)とClinVar(LQTS・BrS患者)の登録VUSを参考にして、本研究で機能解析するLQTS・BrS関連VUSを決定します。

ORCでは、8 wellのパッチチップを用いて最大48細胞の全自動測定ができるオートパッチPatchliner(右図)を導入しました。オートパッチを用いたKCNQ1の測定条件はすでに確立しており、KCNH2とSCN5Aの条件設定を新たに行います。それぞれのVUSに関して電流密度・活性化・不活性化の特性を解析し、正常型と比較して「機能低下型変異」「無機能変異」のアノテーションを与え、「機能異常を伴わない良性の多型」と明白に区別します。このような機能アノテーションに加え、家系のあるVUSについては遺伝型-表現型のデータも加えた「致死性不整脈の統合的VUSデータベース」を作成し公開します。新たなVUSの解析依頼にも対応可能な致死性不整脈のプレシジョン医療の実現を目指します。

関連研究費

① AMED ゲノム創薬基盤推進研究事業(研究代表者 蒔田直昌、研究分担者 石川泰輔、R1~R3年度)「致死性不整脈の原因心筋イオンチャネル遺伝子に同定されるVUSのハイスループット機能評価法に関する研究開発」

関連業績

  1. Yamagata K, Makita N et al. Genotype-Phenotype Correlation of SCN5A Mutation for the Clinical and Electrocardiographic Characteristics of Probands With Brugada Syndrome: A Japanese Multicenter Registry. Circulation. 2017;135:2255-2270.
  2. Shimizu W, Ishikawa T, Makita N. et al. Association of Genetic and Clinical Aspects of Congenital Long QT Syndrome With Life-Threatening Arrhythmias in Japanese Patients. JAMA Cardiol. 2019;4:246-254.
  3. Ishikawa T, Makita N et al. Functional Validation of SCN5A Variants Allows Interpretation of Pathogenicity and Prediction of Lethal Events in Brugada Syndrome. (under review)

最終更新日:2021年09月21日

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