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脳血管内科・脳神経内科

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脳血管内科(脳内Aグループ) 2015年 研究活動概要

脳血管内科(脳内Aグループ) 2015年 研究活動概要

(研究活動の概要)脳血管内科

脳血管内科は、脳血管障害を全身血管病として捉え、神経病学・循環器病学・救急医学・血栓止血学・画像診断学・リハビリテーション医学などの多角的な視点から研究活動を進めている。豊富な入院患者の綿密なデータベースに基づいて、脳血管障害の症候学・病態生理・診断・内科治療法などを解明する多くの研究を、連綿と発表し続けてきた。その活動実績を国内外で評価され、近年では脳血管障害研究の国際的中核機関と位置づけられている。

2015年は豊田が部長として6年目を迎えた。4月に有廣が福岡歯科大学内科学教室(大星博明教授)に、鈴木が杏林大学脳卒中医学教室(平野照之教授)に、それぞれ転任した。後任として4月より橋本と泊が専門修練医からスタッフ医師に昇任し、このうち橋本は10月に平成紫川会小倉記念病院神経内科に転任した。横田外来医長(医療安全対策室長兼務)、上原脳血管リハビリテーション科医長、古賀脳卒中集中治療科医長、早川外来医長、吉村医師、宮﨑医師、福田医師(先進医療・治験推進部との併任)を含めた体制で、OB/OGである峰松副院長、山本先進医療・治験推進部長(理事長特任補佐)の協力を得て、科を運営した。佐藤は、豪州シドニー大学ジョージ国際保健研究所神経学・精神保健部(Craig Anderson教授)での研究留学を継続した。また研究所分子病態部部長を定年退職された宮田敏行先生に、当科の特別研究員として研究活動のご指導をいただいた。3月末に専門修練医の本間、レジデントの大山、徳永が研修を終え、4月より専門修練医の山口、松原、レジデントの有水、井手、菊野、和田が研修を始めた。施設間交換研修制度を用いて、専門修練医の徳田が兵庫医科大学脳神経外科で、レジデントの石原が宇多野病院で、日野が虎の門病院で、塩澤が広南病院で、それぞれ研修を行った。

診療面では、脳神経内科や脳神経外科と連携して、脳血管部門全体でチーム診療に取り組んだ。とくに静注血栓溶解療法と急性期血管内治療を組み合わせた脳梗塞超急性期再開通治療のシステム構築に注力し、静注血栓溶解療法は初めて年間の施行件数が100件を超え(107件)、急性期血管内治療も前年より倍増以上の69件に達した。急性期診療の詳細は、SCUの活動概要に詳しい。またリハビリテーション、再発予防治療、家庭・社会復帰、無症候性脳血管障害診療などの診療にも、力を注いだ。

国際的研究活動として、企業主導治験である脳梗塞急性期抗血小板療法開発のためのSOCRATES試験のexecutive committeeを峰松が、また塞栓源不明脳梗塞患者への抗血栓療法開発のためのRESPECT-ESUS試験の国内調整委員を豊田がそれぞれ務め、両試験共に日本からの症例登録数が世界一、二位を競う実績を挙げた。米国NIHの助成を受けた研究者主導国際多施設共同第Ⅲ相試験Antihypertensive Treatment for Acute Cerebral Hemorrhage (ATACH) IIの運営に、先進医療・治験推進部や循環器病研究振興財団と連携して国内調整施設を務めた。ATACH IIは9月に症例登録を終了したが、世界全体での登録数1000例のうち、国内から288例が登録され、また施設毎の登録では当院(脳血管内科・脳神経内科)が79例と世界最多であった。豊田が主宰する循環器病研究開発費助成「脳血管領域における国際共同臨床試験の企画・運営のための基盤整備」が、ATACH II等をモデル事業として最終年度(5年目)の活動を行い、施設内の研究基盤整備を進めた。この基盤整備事業を発展させる形で、AMED委託研究「脳卒中急性期治療に関する国内臨床拠点施設を適切に活用した国際共同試験の円滑な企画・遂行を目指した基盤整備研究」の単年度の助成を受け、国内脳卒中臨床試験研究者ネットワークNetwork for Clinical Stroke Trials(NECST)の構築を進めた。

国内での医療政策に関わる活動として、峰松・豊田をはじめ多くの医師が、「脳卒中治療ガイドライン2015」、「JRC蘇生ガイドライン2015」、「経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第2版」、「アセタゾラミド(ダイヤモックス注射用)適正使用指針」の作成に、中核的に携わり、同じく峰松・豊田がPMDA専門委員として新規薬剤・医療機器承認に関わった。

多施設共同研究は、脳血管内科が長年とくに重視してきた、研究の主軸である。当施設は早期・探索臨床試験拠点整備事業に選定され、Medici Projectと名付けて研究開発に取り組んでいるが、当科は東京慈恵会医科大学等と共同での超音波血栓溶解療法の開発を継続して行った。峰松が主宰する厚生労働科学研究「脳卒中高リスク群の診断及び治療による循環器疾患制圧に関する研究」が3月で研究助成期間を満了したが、この班で組織された一過性脳虚血発作の国内多施設共同前向き観察研究PROspective Multicenter registry to Identify Subsequent cardiovascular Events after TIA(Promise-TIA)からの多くの研究成果を国内外の学会で発表した。豊田が主宰した厚生労働科学研究(平成26年3月助成期間満了)にて組織された非弁膜症性心房細動を有した脳梗塞患者を対象とする国内多施設共同前向き観察研究Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement - non valvular atrial fibrillation(SAMURAI-NVAF)研究も、登録患者の追跡調査を続け、多くの成果発表を行った。厚生労働科学研究からAMED委託研究に移行した「発症時刻不明の脳梗塞患者に対する静注血栓溶解療法の適応拡大を目指した臨床研究」を豊田が主宰し、研究者主導国内多施設共同第Ⅲ相試験としてTHrombolysis for Acute Wake-up and unclear-onset Strokes with alteplase at 0.6 mg/kg (THAWS) 試験の患者登録を推進した。峰松が主宰しバイエル薬品株式会社の資金提供を受けて行われる、非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞発症後抗凝固療法開始時期を調べる医師主導国内多施設共同前向き観察研究RELAXEDの患者登録を進めた。山口名誉総長が主宰し大塚製薬株式会社の資金提供を受けて行われる、脳梗塞再発高リスク患者への抗血小板薬併用検討国内多施設共同前向き臨床試験CSPS.comにも峰松・豊田がコアメンバーで参加し、患者登録を進めた。

新たな研究班として、峰松が主宰するAMED委託研究「脳卒中を含む循環器病の診療情報の収集のためのシステムの開発に関する研究」が始まった。この研究は、4月に当院へ運営管理が移管された脳卒中データバンク事業の推進と並行して進められ、現在の医療事情に合致した新しい全国版データベースの構築作業を進めた。峰松が主宰する循環器病研究開発費助成「義務教育年代への効果的な脳卒中啓発法の確立に関する研究」が始まり、先行研究から継続して横田の企画のもとに、小中学生を対象とした脳卒中啓発研究(Tochigi Projectなど)、救急隊員と連携した啓発研究(Akashi Project)を遂行し、成果を発表した。豊田が主宰し、古賀が実質的に企画遂行する循環器病研究開発費助成「急性大動脈解離に合併する脳梗塞の診療指針検討」研究も始まり、単施設後ろ向き研究や国内施設アンケート調査を進めた。宮﨑を研究代表者とする国内多施設共同前向き観察研究EDUCATE ESUSでは、塞栓源不明脳梗塞患者における168時間連続心電図記録器を用いた発作性心房細動検出の有用性を調べた。日本脳神経血管内治療学会主導で頸動脈ステント挿入術に伴う過灌流症候群を調べるSTOP CHS研究に、早川が中核的に関与し、国内アンケート調査結果を纏めた。他にも多くの多施設共同研究に積極的に参加した。

単施設研究の充実にも努めた。脳神経内科と合同で運営している急性期患者連続登録NCVC Stroke Registryのデータベースを用いた若手研究が、多く結実した。他にも、移植部や放射線部など院内他科、研究所と連携した研究も行われた。

学会活動では米国NashvilleでのInternational Stroke Conference、英国GlasgowでのEuropean Stroke Organization Conferenceをはじめとする多くの国際学会、国内学会に、当科メンバーが運営委員ないし発表者として参加した。峰松が2017年に主宰する第42回日本脳卒中学会総会、第29回日本脳循環代謝学会総会の準備を進めた。13th International Symposium on Thrombolysis, Thrombectomy and Acute Stroke Therapy (TTST 2016)の運営事務局として、準備を進めた。

研究成果の速やかな英語論文化を全員に課し、皆が良く対応した。多くの英語論文が、peer reviewを受けてNeurology, Stroke, Circulationをはじめとする英文誌に採択された。豊田が英文教科書「New Insights in Intracerebral Hemorrhage」の共同編纂を行い、上梓した。峰松がStroke, International Journal of Stroke等の、豊田がStroke, PLoS One等のeditorial board memberを務め、多くの当科メンバーが英語論文査読業務に携わった。

(研究活動の概要)脳卒中集中治療室 SCU

古賀がSCU医長として6年目、高尾師長が3年目を迎えた。SCU病棟は、主に内科系の脳卒中診療を行う脳血管内科と脳神経内科の医師、専門修練医、レジデント約40人(ローテーションや異動による変動あり)が緊急で入院する脳血管障害患者の急性期治療および管理を行う病棟として機能を果たした。集中治療病床8床を含む全20床で運用し、看護師は日勤帯約15人、夜勤帯6人勤務した。医師と看護師を中心に放射線科や検査科と協力して積極的な緊急入院受け入れや、血栓溶解療法および血管内治療などの最先端の急性期治療を行った。日勤帯、夜間帯、土日祝日を問わずスタッフ医師(専門修練医)とレジデント(専門修練医)2-3名の緊急当番医や当直医が救急隊や近隣の医療施設と直接通話が出来るホットラインを使用して断らない脳卒中急性期医療を実践した。当院への患者搬送を促進するため脳神経内科が中心となって救急隊への啓発活動を行っている。脳神経外科と緊密に連携し、必要に応じた適切な血管内治療や開頭手術を行った。2015年も1350例を超える緊急入院を受け入れ、時間外緊急入院(土日祝日もしくは平日夜間の入院)が半数以上であった。そのうちTIA123例、急性期脳梗塞586例、急性期脳出血188例であった。アルテプラーゼによる静注血栓溶解療法は107例(前年72例)、緊急血管内治療は69例(前年29例)に行った。急性期脳出血では診断後の可及的早期からニカルジピン静注薬を使用して収縮期血圧140mmHg前後を目標に厳格な血圧管理をおこなった。急性期入院症例を複数の臨床研究や治験(ATACH II、THAWS試験、RESCUE-JAPAN Registry 2、その他)に多く登録した。指導医師1名と専門修練医もしくはレジデント2-3名の計3-4名からなる診療チームが入院時から診療を担当し、全例の診療内容を毎日確認し治療方針を検討した。日勤帯の緊急入院では担当になる診療チームが可能な限り初期からの対応に加わることで、緊急当番医の次の緊急対応を容易にしている。さらに、毎朝の全員SCUカンファレンス、火曜午後のSCU回診、木曜午後の脳血管内科回診と脳神経内科回診で、個々の症例の診断や治療方針、問題点などをディスカッションし、診療レベルの維持・向上に努めた。このシステムは、脳血管障害を診療する医師を育成するための教育に役立っている。看護師、リハビリテーション科スタッフ、放射線科、検査科、栄養科などと協力して多職種による脳卒中診療を行っている。脳卒中患者が入院した場合には入院日にリハビリテーションをオーダーし、入院当日もしくは翌日からリハビリテーションを受ける体制をとった。脳神経内科と脳血管内科医師が東北大学医学部神経内科や朝霞台中央総合病院で脳卒中に関連するてんかん診療に関する短期研修を受けた。この経験を活かしてSCUに長時間脳波モニター2台を設置し本格的な脳卒中関連てんかん診療と臨床研究を開始した。2011年から開始しているSCU入院例を中心とした脳血管内科、脳神経内科の脳卒中合同データベース(NCVC Stroke Registry)を維持・継続して運用しており登録症例数が8700例を超えた。このデータベースが多くの研究や試験の基盤となっている。現在、脳卒中データバンクと脳卒中合同データベースとの統合するための調整を行っている。心臓内科、血管外科、放射線科と協力してスタンフォードA型急性期大動脈解離に合併する脳梗塞の診療指針を検討するための共同臨床研究や、移植部と人工心臓患者に合併する脳血管障害に関する共同臨床研究を行っている。 

(2015年の主な研究成果)

  • 脳血管部門としての脳梗塞超急性期再開通治療実績が急増
  • 脳卒中データバンク事業の管理運営
  • NIH助成研究者主導国際多施設共同第Ⅲ相試験ATACH IIの国内多施設を調整
  • 国内脳卒中臨床試験研究者ネットワークNECSTの構築
  • 国内ガイドライン作成作成への貢献
  • Medici Projectとして超音波血栓溶解療法の開発
  • Promise-TIA、SAMURAI-NVAF研究の研究成果の公表
  • 研究者主導国内多施設共同第Ⅲ相試験THAWSの試験継続
  • 義務教育年代への効果的な脳卒中啓発法の確立に関する研究
  • スタンフォードA型急性期大動脈解離に合併する脳梗塞の診療指針を検討
  • 急性期患者連続登録NCVC Stroke Registryを用いた単施設研究の推進
  • 第42回日本脳卒中学会総会、第29回日本脳循環代謝学会総会、国際シンポジウムTTST 2016の開催準備
  • 海外施設(豪州ジョージ国際保健研究所)への長期医師派遣

最終更新日:2021年10月08日

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