メニュー

脳血管内科・脳神経内科

さらに詳しく
脳血管内科(脳内Aグループ) 2014年 研究活動概要

脳血管内科(脳内Aグループ) 2014年 研究活動概要

(研究活動の概要)脳血管内科

脳血管内科は、脳血管障害を全身血管病として捉え、神経病学・循環器病学・救急医学・血栓止血学・画像診断学・リハビリテーション医学などの多角的な視点から研究活動を進めている。豊富な入院患者の綿密なデータベースに基づいて、脳血管障害の症候学・病態生理・診断・内科治療法などを解明する多くの研究を、連綿と発表し続けてきた。その活動実績を国内外で評価され、近年では脳血管障害研究の国際的中核機関と位置づけられている。

2014年は豊田が部長として5年目を迎えた。スタッフ医師の佐藤が、1月より豪州シドニー大学ジョージ国際保健研究所神経学・精神保健部(Craig Anderson教授)に研究留学した。4月に病棟医長の尾原が、京都府立医科大学神経内科(水野敏樹教授)に帰学した。後任として4月より早川が病棟医長に就き、吉村(福岡赤十字病院脳血管内科から)と宮﨑(湘南鎌倉総合病院脳卒中診療科から)がスタッフ医師として着任した。米国ハーバード大学大学院Harvard School of Public Healthに留学中であった福田が、公衆衛生修士号(MPH)を取得して8月に復職し、研究基盤センター先進医療・治験推進部に着任すると同時に、当科業務も兼務した。横田外来医長(医療安全対策室長兼務)、上原脳血管リハビリテーション科医長、古賀脳卒中集中治療科医長、有廣医師、鈴木医師を含めた体制で、OB/OGである峰松副院長、山本先進医療・治験推進部長(総長特任補佐)の協力を得て、科を運営した。3月末に専門修練医の石上、西村、レジデントの岡田、小林、下村、田中、濵、松薗が研修を終え、4月より専門修練医の泊、徳田、レジデントの石原、塩澤、日野、船津、森が研修を始めた。施設間交換研修制度を用いて、専門修練医の本間、レジデントの関が、兵庫医科大学脳神経外科(吉村紳一教授)で研修を行った。

診療面では、脳神経内科や脳神経外科と連携して、脳血管部門全体でチーム診療に取り組んだ。とくに静注血栓溶解療法、急性期血管内治療を含めた脳梗塞超急性期再開通治療の施行件数、治療成績を向上させるとともに、迅速で円滑な超急性期多職種チーム診療体制の構築と、その成果の情報発信に注力した。従来の主幹脳動脈病変患者の診療方針決定と治療、周術期管理の体制を見直し、3月より脳血管部門合同の週例カンファレンスを始めて全員の討議で診療方針を決め、経管的血行再建治療(頸動脈ステント挿入術など)に当科医師も参入した。放射線部との連携も強化した。新たな3 tesla MR装置の導入に伴って、予約検査、緊急検査件数を伸ばし、国産のMRI灌流画像解析ソフトであるperfusion mismatch analyzer (PMA)を他施設に先駆けて急性期脳卒中患者に臨床応用した。当科が関与したインシデント事例を契機に、MR撮影時の医療安全確認体制の刷新に寄与した。また入院患者画像検査枠のセミオープン化を放射線部と合意し、この新規枠を用いて短期検査入院枠を新たに設け、主幹動脈病変患者の長期追跡などに活用した。多職種連携の成功例として、専門修練医の石上が2月の病院実績報告会(ベストプラクティス)で嚥下チームの活動内容を発表し、銀賞に輝いた。

国内レベルでの活動として、2015年に公表予定の「日本脳卒中学会 脳卒中治療ガイドライン2015」の作成に多くの当科医師が貢献し、また2014年に改訂された「日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2014」や2015年改訂予定の「神経蘇生(神経救急・集中治療)ガイドライン2015」、「日本肥満学会 肥満症診療ガイドライン」、「4学会合同アセタゾラミド(ダイヤモックス注射用)適正使用指針」などの作成にも関与した。

多施設共同研究は、脳血管内科が長年とくに重視してきた、研究の主軸である。当施設は早期・探索臨床試験拠点整備事業に選定され、Medici Projectと名付けて研究開発に取り組んでいるが、当科は東京慈恵会医科大学等と共同での超音波血栓溶解療法の開発を継続して行った。峰松が主宰する厚生労働科学研究「脳卒中高リスク群の診断及び治療による循環器疾患制圧に関する研究」が最終年度(3年目)を迎え、一過性脳虚血発作研究の国内多施設共同前向き観察研究PROspective Multicenter registry to Identify Subsequent cardiovascular Events after TIA(Promise-TIA)の登録を終えて、研究成果を国内外の学会で発表した。循環器病研究開発費の助成を受けて峰松が主宰する「新しい脳卒中医療の開拓と均てん化のためのシステム構築に関する研究」が同じく最終年度(5年目)を迎え、小中学生を対象とした脳卒中啓発の研究成果をStrokeをはじめとする多くの英文誌に論文発表し、栃木県の中学生に脳卒中啓発を図るTochigi Project、兵庫県明石市の救急隊と共同で行うAkashi Projectを進めた。

新たな研究班として、厚生労働科学研究「発症時刻不明の脳梗塞患者に対する静注血栓溶解療法の適応拡大を目指した臨床研究」を豊田が主宰し、研究者主導国内多施設共同第Ⅲ相試験としてTHrombolysis for Acute Wake-up and unclear-onset Strokes with alteplase at 0.6 mg/kg (THAWS) 試験を始めた。試験開始にあたって本治療の先進医療Bの承認を得、また当施設内に先進医療・治験推進部(山本部長)らと合同で中央事務局を開いた。静注血栓溶解療法に関するわが国の国際的貢献を可視化するため、豊田・古賀がStroke Thrombolysis Trialistsの会合に出席を重ね、その成果として研究メンバーでLancetにメタ解析研究成果を発表した。また13th International Symposium on Thrombolysis, Thrombectomy and Acute Stroke Therapy (TTST 2016)の国内招致に成功し、東北大学高次機能障害学の森悦朗教授を会長、峰松副院長を副会長、当科を事務局として、2016年に神戸で開催すべく準備を始めた。

抗凝固療法は超急性期再開通治療と並ぶ、当科の長年に及ぶ研究主題である。豊田が主宰する、非弁膜症性心房細動を有した脳梗塞患者を対象とする前向き多施設共同Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement - nonvalvular atrial fibrillation(SAMURAI-NVAF)観察研究が1192例の患者登録を終え、登録時臨床情報の解析結果を英語論文発表(International Journal of Stroke)するとともに、2年間の追跡調査を継続した。先行する研究であるSAMURAI-ICH研究からも、多くのサブ解析成果を発表した。単施設でも非ビタミンK阻害経口抗凝固薬に関する研究に取り組み、研究所分子病態部(宮田敏行部長)と共同で脳卒中患者への同抗凝固薬の血中濃度と抗凝固能に関する研究成果を発表した(PLoS One)。

豊田が主宰する循環器病研究開発費助成「脳血管領域における国際共同臨床試験の企画・運営のための基盤整備」が4年目を迎え、モデル事業としてNIH助成を受けた研究者主導国際多施設共同第Ⅲ相試験Antihypertensive Treatment for Acute Cerebral Hemorrhage (ATACH) IIの国内旗艦施設としての研究支援基盤の構築に努めた。本試験は現在世界6か国で患者が登録されているが、日本は全体登録件数の3割弱、当施設は同じく1割弱と世界最多の登録施設の地位を保っている。ATACH II試験運営で培った米国との交友関係を活かし、先行する米国NIH StrokeNet<https://www.nihstrokenet.org/>と協調した国内脳卒中臨床試験ネットワークを、ATACH-II、THAWSの参加施設を中心に形成中である。4月の日米首脳会談に合わせて厚労省に企画を提案し、9月、11月に国内で米国NIH関係者との意見交換を行った。他にも多くの多施設研究に、当科メンバーが主要分担研究者として参加した。

単施設研究の充実にも努めた。脳神経内科と合同で運営している急性期患者連続登録をNCVC Stroke RegistryとしてClinicalTrials.govに登録し(NCT02251665)、このデータベースを用いた若手研究を奨励した。

学会活動では米国San DiegoでのInternational Stroke Conference、IstanbulでのWorld Stroke Congressをはじめとする多くの国際学会、国内学会に、当科メンバーが運営委員ないし発表者として参加した。峰松が、2017年の第42回日本脳卒中学会総会、第29回日本脳循環代謝学会総会の大会長に指名され、科をあげて準備を始めた。

研究成果の速やかな英語論文化を全員に課し、皆が良く対応した。1年間で40編を超える英語論文が、peer reviewを受けてLancet, Lancet Neurologyをはじめとする英文誌に採択された。豊田が邦文教科書「脳梗塞診療読本」の編纂を行い、上梓した。峰松がStroke, International Journal of Stroke等の、豊田がStroke, PLoS One等のeditorial board memberを務め、多くの当科メンバーが英語論文査読業務に携わった。

(研究活動の概要)脳卒中集中治療室 SCU

古賀がSCU医長として5年目、高尾師長が2年目を迎えた。SCU病棟は、主に内科系の脳卒中診療を行う脳血管内科と脳神経内科の医師、専門修練医、レジデント約40名(ローテーションや異動による変動あり)が緊急で入院する脳血管障害患者の急性期治療および管理を行う病棟として機能を果たした。脳神経外科と緊密に連携し、必要に応じて適切な血管内治療や開頭手術を行った。2014年は1350例を超える緊急入院を受け入れ、時間外緊急入院(土日祝日もしくは平日夜間の入院)が半数以上であった。また、12月末よりSCUの集中治療病床は6床から8床に増え、夜勤帯の看護師勤務人数が5名から6名に増えたことにより、より積極的な緊急入院受け入れや、血栓溶解療法および血管内治療などの最先端の急性期治療による対応が可能となってきた。前述(脳血管内科に記載)のATACH IIやSAMURAI-NVAF研究、THAWS試験、RESCUE-RCT、RESCUE-JAPAN Registry 2、その他の臨床研究や治験などに、この入院患者の多くを登録した。指導医師1名と専門修練医もしくはレジデント2-3名の計3-4名からなる診療チームが、担当となった全例の診療内容を毎日確認し治療方針を検討した。さらに、毎朝の全員SCUカンファレンス、火曜午後のSCU回診、木曜午後の脳血管内科回診と脳神経内科回診で、個々の症例の診断や治療方針、問題点などをディスカッションし、診療レベルの維持・向上に努めた。このシステムは、脳血管障害を診療する医師を育成するための教育に役立っている。2011年から開始しているSCU入院例を中心とした脳血管内科、脳神経内科の脳卒中合同データベース(NCVC Stroke Registry)を維持・継続して運用しており、このデータベースが多くの研究や試験の基盤となっている。また、今まで島根医科大学で運用されていた全国から症例が登録される脳卒中データバンクを当センターに移管することが決定し、SCU入院例の脳卒中合同データベースとの統合するための調整を行っている。また、看護師、リハビリテーション科スタッフ、放射線科、検査科、栄養科などと協力して多職種による脳卒中診療を行っており、今後は各部門との共同での臨床研究を行うことも検討する。

(2014年の主な研究成果)

  • 海外施設(豪州ジョージ国際保健研究所)への長期医師派遣
  • 脳血管部門としての脳梗塞超急性期再開通治療体制強化
  • 主幹脳動脈病変患者の診療方針決定と治療、周術期管理の体制の見直し
  • 放射線部との連携強化、perfusion mismatch analyzerの臨床応用
  • 国内ガイドライン作成への貢献
  • Medici Projectとして超音波血栓溶解療法の開発
  • Promise-TIA、SAMURAI-NVAF研究の患者登録終了と研究成果の公表
  • 新しい脳卒中医療の開拓と均てん化のためのシステム構築に関する研究の発展
  • 研究者主導国内多施設共同第Ⅲ相試験THAWSの試験開始
  • NIH助成研究者主導国際多施設共同第Ⅲ相試験ATACH IIへの貢献
  • 急性期患者連続登録NCVC Stroke Registryの整備
  • TTST 2016の国内招致成功
  • 40を超える英語論文が、peer reviewを受けてLancetなどの英文誌に掲載

最終更新日:2021年10月08日

設定メニュー