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脳血管内科・脳神経内科

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脳血管内科(脳内Aグループ) 2013年 研究活動概要

脳血管内科(脳内Aグループ) 2013年 研究活動概要

(研究活動の概要)脳血管内科

脳血管内科は、脳血管障害を全身血管病として捉え、神経病学・循環器病学・救急医学・血栓止血学・画像診断学・リハビリテーション医学などの多角的な視点から研究活動を進めている。豊富な入院患者の綿密なデータベースに基づいて、脳血管障害の症候学・病態生理・診断・内科治療法などを解明する多くの研究を、連綿と発表し続けてきた。その活動実績を国内外で評価され、近年では脳血管障害研究の国際的中核機関と位置づけられている。

2013年は豊田が部長として4年目を迎え、10月より脳血管部門長を兼任した。上原が脳血管リハビリテーション医長の職務に専念するため病棟医長との併任を解かれ、尾原が4月より病棟医長に就いた。横田外来医長、古賀脳卒中集中治療科医長を含め、さらに有廣、早川、鈴木、佐藤の4名のスタッフ医師を加えた体制で、脳血管内科、脳卒中集中治療室(Stroke Care Unit: SCU)、脳血管リハビリテーションの運営を牽引した。このうち佐藤が、12月末までで当院を休職し、2014年1月より豪州シドニー大学ジョージ国際保健研究所神経学・精神保健部(Craig Anderson教授)に研究留学した。3月にレジデントの大﨑・重畠・田中弘二・松島・坂本と専門修練医の奥村が、6月にレジデントの板垣が、12月に専門修練医の宮城が研修を終え、同じく専門修練医の研修を終えた福田が、難関の米国ハーバード大学大学院Harvard School of Public Healthに合格して、7月より渡米した。4月に専門修練医の橋本・本間、レジデントの関・松木・松薗が研修を始めた。また国内から多くの短期・長期研修生を受け入れ、虎の門病院とは修練医の相互派遣交流を行った。

診療面では、脳神経内科と連携した診療体制の一層の強化と脳神経外科との診療連携やカンファレンスの活発化など、脳血管部門としての大きな枠組みでの活動が目立った。部門として共同して取り組む脳梗塞超急性期再開通治療は、遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA)静注治療、急性期血管内治療とも診療実績を順調に伸ばし、多職種で円滑な治療体制を構築した。放射線部と良好に連携して、治療に有用な灌流画像MRIなどの画像診断を強化した。この多職種連携の成果をレジデントの田中瑛次郎が2月の病院実績報告会(ベストプラクティス)で発表し、銀賞に輝いた。

国内レベルでの活動として、2012年の「rt-PA静注療法適正治療指針」改訂に引き続き、峰松副院長を委員長とする「経皮経管的脳血栓回収機器 適正使用指針」、「頭蓋内動脈ステント(動脈硬化症用)適正使用指針」が関連学会合同で作成され、当科メンバーも作成作業に貢献した。

多施設共同研究は、脳血管内科が長年とくに重視してきた、研究の主軸である。2013年は、峰松が主宰する厚生労働科学研究「脳卒中高リスク群の診断及び治療による循環器疾患制圧に関する研究」が第二年度を迎え、長年にわたる一過性脳虚血発作研究の成果として診療指針を策定し、また一過性脳虚血発作研究の国内多施設共同前向き観察研究を継続して行った。豊田が主宰する厚生労働科学研究「急性期脳卒中への内科複合治療の確立に関する研究」が第三(最終)年度を迎え、非弁膜症性心房細動を有した脳梗塞患者を対象とする前向き多施設共同SAMURAI-NVAF観察研究を継続するとともに、中間解析結果の発表を始めた。先行する研究であるSAMURAI-ICH研究、SAMURAI-NVAF研究からも、多くのサブ解析成果を発表した。

当施設は早期・探索臨床試験拠点整備事業に選定され、Medici Projectと名付けて研究開発に取り組んでいるが、当科は東京慈恵会医科大学等と共同での超音波血栓溶解療法の開発を継続して行った。循環器病研究開発費の助成を受けて峰松が主宰する「新しい脳卒中医療の開拓と均てん化のためのシステム構築に関する研究」が第四年度を迎え、小中学生を対象とした脳卒中啓発の研究成果を多く論文化し、また予防健診部宮本部長の研究班と共同で栃木県の中学生に脳卒中啓発を図るTochigi Projectを進めた。

豊田が主宰する循環器病研究開発費助成「脳血管領域における国際共同臨床試験の企画・運営のための基盤整備」が第三年度を迎え、モデル事業としてNIH助成を受けた研究者主導国際多施設共同第Ⅲ相試験Antihypertensive Treatment for Acute Cerebral Hemorrhage (ATACH) IIの国内旗艦施設としての研究支援基盤の構築に努めた。本試験は現在世界中で患者が登録されているが、当施設は全体登録件数の1割弱と、世界最多の登録施設の地位を保っている。またATACH IIで培ったノウハウを活かして、新たに研究者主導国内多施設共同第Ⅲ相試験として、THrombolysis for Acute Wake-up and unclear-onset Strokes with alteplase at 0.6 mg/kg (THAWS) 試験を企画し、試験開始への準備を行った。他にも多くの研究に主要分担研究者として参加した。一連の多施設共同研究の推進に、当科出身の研究開発基盤センター先進医療・治験推進部山本部長が大いに関与した。

学会活動では、10月に大阪で開かれた6th Korea-Japan Joint Stroke Conferenceや11月に東京で開かれたInternational TIA/ACVS Conferenceに峰松が運営委員として、5月にLondonで開かれたEuropean Stroke Conferenceに豊田が学術委員として、企画運営に加わり、これらを含む国際学会に当科から多くの発表を行った。国内の関連学会学術集会においても、多くの当科メンバーが、招請講演やシンポジウム発表をはじめ研究成果を発表した。

研究成果の速やかな英語論文化を全員に課し、皆が良く対応した。上述した多施設共同研究の成果報告に加えて、脳神経内科との脳卒中合同データベースを用いた単施設研究の論文化も相次いだ。また予防健診部に指導していただいた都市型住民疫学研究Suita Studyの解析、研究所分子病態部に指導していただいた新規抗凝固薬抗凝固能評価の研究など、センター内で連携した研究活動も盛んであった。2013年より2014年2月迄に掲載前(2014年名義)の論文を含めて50を超える英語論文が、peer reviewを受けて英文誌に採択された。

峰松が英文教科書「TIA as Acute Cerebrovascular Syndrome」や邦文教科書「脳梗塞rt-PA静注療法実践ガイド」の編纂を、豊田が英文教科書「Brain, Stroke and Kidney」や邦文教科書「心原性脳塞栓症と経口抗凝固薬」の編纂を行い、上梓した。峰松がStroke, European Journal of Neurology等の、豊田がStroke等のeditorial board memberを務め、多くの当科メンバーが英語論文査読業務に携わった。

(研究活動の概要)脳卒中集中治療室 SCU

古賀がSCU医長として4年目を迎え、4月より高尾師長が赴任した。SCU病棟は、主に内科系の脳卒中診療を行う脳血管内科と脳神経内科の医師、専門修練医、レジデント約38名(ローテーションや異動による変動あり)が緊急で入院する脳血管障害患者の急性期治療および管理を行う病棟として機能を果たした。脳神経外科と緊密に連携し、必要に応じて適切な血管内治療や開頭手術を行った。2013年は1300例を超える緊急入院を受け入れ、時間外緊急入院(土日祝日もしくは平日夜間の入院)が半数以上であった。前述(脳血管内科に記載)のATACH IIやSAMURAI-NVAF研究、その他の臨床研究や治験などに、この入院患者の多くを登録した。指導医師1名と専門修練医もしくはレジデント2-3名の計3-4名からなる診療チームが、担当となった全例の診療内容を毎日確認し治療方針を検討した。さらに、毎朝の全員SCUカンファレンス、火曜午後のSCU回診、木曜午後の脳血管内科回診と脳神経内科回診で、個々の症例の診断や治療方針、問題点などをディスカッションし、診療レベルの維持・向上に努めた。このシステムは、脳血管障害を診療する医師を育成するための教育に役立っている。2011年から開始しているSCU入院例を中心とした脳血管内科、脳神経内科の脳卒中合同データベースを維持・継続して運用しており、このデータベースが多くの研究や試験の基盤となっている。また、看護師、リハビリテーション科スタッフ、放射線科、検査科、栄養科などと協力して多職種による脳卒中診療を行っており、今後は各部門との共同での臨床研究を行うことも検討する。

(2013年の主な研究成果)

  • 海外施設(豪州ジョージ国際保健研究所、米国ハーバード大学大学院)への長期医師派遣
  • 国内多施設との人事交流
  • 脳血管部門としての脳梗塞超急性期再開通治療体制強化
  • 国内ガイドライン作成への貢献
  • 一過性脳虚血発作研究の推進
  • SAMURAI研究班の一連の研究活動
  • Medici Projectとして超音波血栓溶解療法の開発
  • NIH助成研究者主導国際多施設共同第Ⅲ相試験ATACH IIへの貢献
  • 研究者主導国内多施設共同第Ⅲ相試験THAWSの企画
  • 国際学会の運営への寄与
  • 当施設他科と協力し多くの単施設臨床研究を遂行
  • 掲載前(2014年名義)の論文を含めて50を超える英語論文が、peer reviewを受けて英文誌に採択
  • 英文・邦文教科書の作成

最終更新日:2021年10月08日

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