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脳血管内科・脳神経内科

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脳血管内科(脳内Aグループ) 2008年 研究活動概要

脳血管内科(脳内Aグループ) 2008年 研究活動概要

脳血管内科は、脳血管障害を全身血管病として捉え、神経病学・循環器病学・救急医学・血栓止血学・リハビリテーション医学などの多角的な視点から研究活動を進めている。豊富な入院患者の綿密なデータベースに基づいて、脳血管障害の症候学・病態生理・診断・内科治療などを解明する多くの研究を、連綿と発表し続けてきた。その活動実績を国内外で評価され、近年では脳血管障害研究の国際的中核機関と位置づけられるようになった。厚生労働省や日本脳卒中学会、日本脳卒中協会などの関連学術団体等と連携を密に取りながら、全国多施設と共同して大型臨床研究を主宰する機会も増えた。とくに急性期脳梗塞患者への遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA)静注療法の国内承認および承認後の全国規模の調査・研究で国内の諸施設を牽引し(J-ACT, J-ACT II, MELT-Japan, J-MARSなど)、近年の脳卒中急性期内科治療の発展に寄与する研究活動を続けている。海外からも国際共同臨床試験への参加を要請され、臨床研究開発部と共同で実行可能性を検討している。研究所やセンター外研究施設と連携したトランスレーショナル・リサーチの推進にも力を入れ、超音波血栓溶解療法の開発や超高速PETを用いた脳梗塞超急性期の脳循環代謝病態の分析などを行っている。

2008年に脳血管内科が主宰した多施設共同研究を、以下に列挙する。

  1. 厚生労働科学研究「脳卒中地域医療におけるインディケーターの選定と監査システム開発に関する研究」(主任研究者:峰松、研究最終年度)
  2. 循環器病委託費研究(18公-5)「脳血管解離の病態と治療法の開発(The Spontaneous Cervicocephalic Arterial Dissections Study: SCADS)」(主任研究者:峰松、研究最終年度)
  3. 厚生労働科学研究「わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究(The Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement Study: SAMURAI)」(主任研究者:豊田、初年度)

この他に、東京慈恵会医科大学の古幡博教授を主任研究者とする「急性期脳梗塞早期系統的治療のための分野横断的診断治療統合化低侵襲システムの開発」が産官学連携の国家研究プロジェクト「先端医療開発特区(スーパー特区)」に採択され、当科も中核施設の一つとして多面的な研究に着手した。

年間を通して多くの国際・国内学会で演題発表を行った。峰松は日本脳卒中学会医療向上社会保険委員会委員長(2007年就任)として、2008年度診療報酬改定における「超急性期脳卒中加算」新設に貢献した。また、世界脳卒中機構(World Stroke Organization, WSO)の理事の一人に峰松が選出された。日本神経学会第89回近畿地方会(2008年12月6日、豊中)で、峰松が会長を務めた。

脳血管リハビリテーション部門(理学療法・作業療法・言語聴覚療法)は2008年に作業療法士を配置した。これにより、脳血管疾患リハビリテーション料(I)を取得し、脳卒中早期リハビリテーションに対して高まる需要に対応できる体制を整えた。厚労科研インディケーター研究班のリハビリテーションに関する全国調査の企画立案に協力した。患者自立度の指標となるFunctional Independence Measureを患者評価に積極的に取り入れるとともに、多職種間での評価結果の差異を調べた。脳卒中患者の機能回復を妨げるPusher症候群出現に関連する臨床的特徴を究明した。

【主な研究成果】

  • 大先輩である緒方恂医博が、当センターの連続成人剖検例に基づく脳梗塞患者の心臓血管病理所見をまとめ、国内外で高い評価を得た(Ann Neurol 2008)。
  • 峰松が主宰した循環器病委託費15公-1研究「循環器疾患における抗血栓療法の問題点と対策」の中核研究である、抗血栓療法に伴う出血イベントの実体に関する全国多施設共同研究(Bleeding with Antithrombotic Therapy研究:BAT研究)の主研究の成果をまとめた(Toyoda: Stroke 2008)。
  • 厚労科研インディケーター研究班で行った脳卒中病期毎の患者診療状況に関する全国実態調査の成果をまとめた(古賀:脳卒中 2008)。
  • SCADS研究班で後ろ向き及び前向きの多施設共同登録研究を行い、日本人に特徴的な脳動脈解離の臨床像を明らかにして、国際学会で発表した。
  • 国立病院機構九州医療センターとの共同研究で、急性期脳出血患者の降圧レベルと転帰の関連を調べ、適切な降圧目標値を提唱した(Itabashi: J Hypertens 2008)。
  • 脳血管内科・脳神経内科の患者データベースを用いて、脳梗塞治療中のヘパリン起因性血小板減少症の臨床像(Kawano: Cerebrovasc Dis 2008)、頸動脈偏心性狭窄の臨床的意義(Ohara: AJNR 2008)、脳梗塞部位の違いによる脳卒中評価尺度の意義(Sato: Neurology 2008)など、多岐にわたる研究を遂行した。このうち脳梗塞急性期に発症したタコツボ心筋症の臨床像を連続例で示した吉村らの研究(Ann Neurol 2008)に対して、脳血管障害の少壮研究者1名のみが毎年選ばれる第33回日本心臓財団草野賞が贈られた(2009年)。
  • 日常診療での臨床的発見を症例報告として論文発表することに努めた。頸動脈解離症例の特異な頸口腔超音波検査所見など(Nagasawa: Circulation 2008)、興味深い症例を多く発表した。

最終更新日:2021年10月08日

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