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小児循環器内科

医療関係者の皆様へ
不整脈の診断と治療

不整脈の診断と治療

当院では、胎児期から小児期の不整脈、先天性心疾患などの基質的心疾患に伴う不整脈の診療を行っています。
その治療としては、薬物治療、経皮的心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)、植込み型心臓電気デバイス治療(ペースメーカ、植込み型除細動器)があり、これらを組み合わせながら、患者さまの背景、血行動態を考慮して治療方針を決定しております。

1) 対象となる疾患

先天性心疾患合併不整脈

当院では開設以来、40年以上にわたり先天性心疾患の診療を進めてきました。そして、多くの先天性心疾患術後の患者さまを成人以降も継続的に診させて頂いております。先天性心疾患はその刺激伝導系の発生異常、特殊な血行動態、手術侵襲の影響などから、術前、術後ともに不整脈が起こりやすいという特徴があります。先天性心疾患術後の不整脈は難治性であることも多く、外科治療や心不全治療などの内科的治療による血行動態の改善と、カテーテルアブレーション・抗不整脈薬・植込み型心臓電気デバイスを組み合わせた治療を行っています。当院では、数多くの先天性心疾患術後の不整脈に対する治療を行っています。

胎児不整脈

当院では産婦人科と協力し、胎児不整脈の診療を行っています。胎児期の不整脈でも重症な場合には、救命のために胎児治療(母体に抗不整脈薬を投与し、経胎盤的に治療)を行うため、正確な診断が必須となります。当センターでは、広く用いられている胎児心エコー検査に加え、胎児心磁図と呼ばれる特殊な検査を行うことで、胎児頻拍だけでなく、先天性QT延長症候群などの不整脈も含め、高い精度での不整脈診断が可能となっています。

図1.胎児心磁図

遺伝性不整脈

心臓の細胞でカリウムやナトリウムなどの出入りを調節するイオンチャネルの遺伝子変異により不整脈が起こることがあり、遺伝性不整脈と呼ばれます。小児においては、先天性QT延長症候群が主な診療対象となりますが、他にカテコラミン誘発多形性心室頻拍、進行性心臓伝導障害、Brugada症候群、QT短縮症候群などがあります。稀な疾患ではありますが、若年性心臓突然死の原因となりえる疾患であり、正確な診断と治療が必要です。特に先天性QT延長症候群は遺伝子検査に基づく個別化医療(precision medicine)が最も進んでいる疾患の一つで、当センター内で遺伝子解析を行っています。家族集積性が高いため、不整脈科とも協力し、患者さまを診療させて頂いております。

図2.QT延長症候群

重症心不全

小児のおいても拡張型心筋症などの重症心不全において、心室内の同期不全を改善させる治療として、ペースメーカを用いた心臓再同期療法を行います。また、先天性心疾患においては心室内同期不全のみならず、心室間同期不全により心不全を来すことがあり、先天性心疾患術後症例に対しても、それぞれの症例に合わせた心臓再同期療法を実施しています。

2) 治療

カテーテルアブレーション

頻脈性不整脈に対し、電極カテーテルを用いて、心筋の一部を焼灼することで治療します。特に心疾患合併のない、小児の上室頻拍は薬物治療への反応も比較的良好ですが、カテーテルアブレーションにより根治を目指すことができます。WPW症候群に対しては、房室副伝導路を焼灼することで治療します。
先天性心疾患術後の頻拍は、心房粗動(心房内回帰性頻拍)や異所性心房頻拍が多く、複雑な頻拍回路を有することもあり、3Dマッピングシステムなどを併用し治療を行います。頻拍回路の一部を遮断するように連続的に焼灼したり、異常に早く興奮する心筋を焼灼することで治療します。

図1.カテーテルアブレーション治療、年次症例数

植込み型心臓電気デバイス

徐脈に対し、ペースメーカ治療を行います。成人では経静脈リードを用いたシステムを使用するのが一般的ですが、体格の小さな小児患者や、右左短絡のある先天性心疾患患者に対しては、外科的に開胸し心外膜にペーシングリードを留置しペースメーカ治療を行います。ペーシングする位置、タイミングにより心機能が大きく変わるため、一人ひとりに合わせた至適な設定とする必要があります。また、心室細動などの致死的な不整脈に対し、主に2次予防として植込み型除細動器(ICD)治療を行っています。

最終更新日:2021年10月08日

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