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血管外科

対象疾患
内臓動脈瘤

1. 内臓動脈瘤とは?

大動脈が横隔膜を貫いて、胸部大動脈から腹部大動脈と名前を変えると、肝臓・胃・脾臓・膵臓といった上腹部の内臓に血液を送る腹腔動脈、小腸と大腸の右半分に血液を送る上腸間膜動脈、左右の腎臓に血液を送る腎動脈の4本の血管が次々と枝分かれします。少し間をおいて左半分の大腸に血液を送る下腸間膜動脈が枝分かれします。
内臓動脈瘤とはこれらの動脈にできる瘤で、比較的稀な病気ですが、他の病気でCT検査などを受けた時に、偶然見つかることが増えています。ほとんどの場合、症状はありませんが、破裂による腹痛やショック状態で発見されることもあります。
瘤ができている動脈の名前に「瘤」を付けますが、最も多いのが腹腔動脈から枝分かれする脾動脈瘤で内臓動脈瘤の60%を占めると言われています。次いで腹腔動脈瘤から枝分かれする肝動脈瘤と腎動脈瘤がそれぞれ10%から20%みられ、腹腔動脈瘤や上腸間膜動脈瘤は5%前後と言われています。膵臓の周りの膵十二指腸動脈瘤や上腸間膜動脈から枝分かれする空腸動脈瘤などもありますが、極めて稀です。

2. 内臓動脈瘤と診断されたら

最近は、CT検査の精度が上がったので、小さな内臓動脈瘤も見つかるようになりましたが、一般的には、動脈瘤の径が2cm未満であれば、半年~一年ごとにCTや超音波による検査で経過を観察します。2cm以上になって、破裂する可能性が高くなると、手術適応になりますが、形や原因によっては2cm未満であっても治療することがあります。
内臓動脈瘤の治療では、瘤の破裂を防止するとともに内臓への血流を残さなければなりません。治療法には形や場所によって二つの方法があり、国立循環器病研究センターでは、内臓動脈瘤の治療は放射線科と協力して行っています。

1)カテーテルによる血管内治療

内臓の血管はお互いにネットワークを作っている(側副血行路)ので、閉塞させても他の血管から内臓への血流が保たれることがあります。脾動脈瘤や肝動脈瘤では動脈瘤と同時、前後の動脈をカテーテル治療により金属製のコイルなどで閉塞させても後遺症が残らないことが多いようです。(図1)また、動脈瘤が動脈から飛び出したような形(嚢状)の場合にも、飛び出た部分だけを金属製のコイルで固めてしまうことができます。(図2)

図1
図2

2)血行再建術

腎動脈瘤や上腸間膜動脈瘤などで、側副血行路が無いか不十分になるために、動脈瘤を切除した後に動脈の再建が必要な場合があります。主に足の静脈(大伏在静脈)を用いて再建します(図3)が、全身麻酔による開腹手術が必要です。

図3

3)臓器の摘出術

脾動脈瘤や腎動脈瘤が脾臓や腎臓のすぐ近くにある時には、側副血行路がなく、再建できない細い動脈に枝分かれしているために、脾臓摘出術や腎臓摘出術を行わざるを得ないことがあります。
動脈瘤が破裂して、治療を急ぐ場合にも、救命のために臓器を摘出して止血を図ることがありますが、最近は、血管内治療によって、止血することが増えています。

最終更新日:2021年10月08日

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