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血管外科

急性動脈閉塞

1. 急性動脈閉塞とは?

急性動脈閉塞とは「急に動脈が詰まること」ですが、脳の血管が閉塞すると脳梗塞になり、心臓の冠動脈が閉塞すると急性心筋梗塞になります。
血管外科で治療している急性動脈閉塞は、主に、手や足の動脈の閉塞ですが、腹部内臓(肝臓、脾臓、小腸、大腸、腎臓など)に血液を送る内臓動脈の閉塞を治療することもあります。

急性動脈閉塞の原因は二つあります。

1)塞栓症

塞栓と呼ばれる物質が急に動脈を閉塞させることで、不整脈で心臓の中にできた血栓や大動脈の中にできた血栓が塞栓となることがほとんどです。
同じ原因で脳梗塞を起こした場合には、“心原性”脳梗塞とか、“大動脈原性”脳梗塞と呼ばれます。
血栓の他には、何らかの原因で動脈の中に空気が入ったり、大きな外傷で脂肪が動脈の中に入った場合に起こることがあります。
前触れなく、突然起こることが多いようです。

2)血栓症

動脈硬化で狭くなっていた動脈が、突然、完全に閉塞して、急に症状が悪化することです。
“血栓が塞栓症の原因”と言うことと、“血栓症”というのは、少しわかりにくいですが、違う状態のことです。
前触れとなる症状が有ることもあります。歩くと足が痛くなる(間欠性跛行)症状のあった人が、突然、足全体が冷たくなって激痛を伴う、というようなことが起こります。

2. 急性動脈閉塞の症状は?

激しい痛み(Pain)が急に発症し、脈が触れなくなって(Pulselessness)、冷たく蒼白(Pallor/Paleness)になり、知覚が鈍くなって(Paresthesia)、麻痺して動かなくなり(Paralysis/Paresis)ます。(5つのP)
知覚鈍麻や運動麻痺は動脈が閉塞してから時間が経過していることを意味する危険な症状です。

3. 急性動脈閉塞の治療は?

症状が進行してしまうと、切断を余儀なくされることがあるので、できるだけ早く、適切な治療を受けることが非常に重要となります。
細長い血管の中にある血栓を取り除く血栓除去術では、フォガティのバルーンと呼ばれるバルーンのついたカテーテル(図1)を、血栓より奥に差し込み、バルーンを膨らませて引き抜いて(図2)、血栓(図3)を掻き出します。
発症してから短時間で血栓が除去できた場合には軽症で済む場合が多いいのですが、動脈が閉塞してから時間が経過した症例では、しばらく血液が流れていなかった筋肉などに血液が流れ始めて、再灌流障害を起こします。
重い再灌流障害が起こると、強い浮腫や腫脹が起こるために皮膚を切開して減圧する(減張切開)必要があったり、障害を受けた細胞の細胞内の成分が流れ出して腎不全や不整脈を引き起こすため血液透析を必要とすることもあります。
また、原因となる塞栓がどこにあるのか検査する必要があり、動脈硬化による血管の病変の検査も必要になります。原因が分かると、心臓内の血栓の除去術、下肢動脈のバイパス術、抗凝固療法、などの治療を追加することもあります。

図1
図2(Rutherford's Vascular Surgery 8th ed.)
図3

最終更新日:2021年10月08日

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