ホーム > 診療科・部門のご案内 > 心臓血管外科部門 > 心臓外科 > TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)の適応と成績について

心臓外科

経カテーテル的大動脈弁置換術
(Transcatheter aortic valve implantation: TAVI)
(Transcatheter aortic valve replacement: TAVR)

重症大動脈弁狭窄症(Severe AS)に対する治療が必要であるが、標準治療である大動脈弁置換術(AVR)による死亡率や重大な合併症が起こる可能性が高いと判断された場合に経カテーテル的大動脈弁置換術が適応となります。

一般的には、超高齢者 (80-85歳以上)や自分では自力歩行が出来ないなどの体が弱った状態(「フレイル」といいます)、呼吸器合併症、基部--上行大動脈の石灰化、心臓再手術、免疫抑制剤投与状態などの患者さんが適応となります。

ヨーロッパから始まり、2013年より日本でも保険償還され、2016年5月時点においてEdwards社とMedtronic社のカテーテル生体弁システムが保険上使用可能です。当センターでも2011年より施行しています。

経カテーテル的大動脈弁置換術は、通常、胸骨正中切開や人工心肺使用下の心停止状態を必要としないため、通常の大動脈弁置換術に比べて手術ダメージがかなり低く、手術後の早期日常生活復帰を可能にします。


手術はハイブリッド手術室という特殊な手術室で行います。この部屋は心臓血管手術とカテーテル治療が同時に出来るように設計された手術室です (図6)。

カテーテル用に開発された生体弁 (カテーテル生体弁)を小さく折りたたんでカテーテルに装填し、このカテーテルを大動脈弁のところまで進め、カテーテル生体弁を広げます。結果的に患者さんの石の塊 (石灰化)になった大動脈弁は外側に押しつけられ、カテーテル生体弁がこの外側に押しつけられた大動脈弁に引っかかり固定されます (図7)。

カテーテルは主に鼠径部の血管 (大腿動脈)から挿入する方法 (大腿動脈アプローチ法)と、左前胸部を横切開して心臓の左心室先端から挿入する方法 (心尖部アプローチ法)、あるいは右前胸部横切開や胸骨正中部分切開などにより上行大動脈から挿入する方法 (大動脈アプローチ法)があります (図8)。

通常の大動脈弁置換術 (AVR)に比べ、傷は小さく、手術時間(1-2時間)も短いです。患者さんの体の負担は大動脈弁置換術 (AVR)に比べて極めて低くなります。そのため日常生活への早期復帰を可能とします。

ただし、カテーテル的大動脈弁置換術は、2016年5月時点では大動脈弁狭窄症に対する標準的な治療ではありません。なぜなら、経カテーテル的大動脈弁置換術にも様々な問題があり、リスクもあるからです。

手術中の問題としてはカテーテル生体弁が適正な場所に問題なく留置できるかという問題があります。大動脈弁置換術では石灰化した弁尖を切除して弁輪部に糸で人工弁を縫い付けます。ところが、カテーテル的大動脈弁置換術では弁尖を切除せずに、弁尖の内側からカテーテル生体弁を広げてひっかけるだけなので、弁をしっかり植え込むという確実性では大動脈弁置換術に劣ります。手術中に適切に植え込めない場合には、胸骨正中切開による大動脈弁置換術に移行することもあります。その他の合併症として、大動脈弁輪・基部破裂、不整脈の出現によるペースメーカー留置、カテーテル生体弁周囲逆流などが大動脈弁置換術よりも起こりやすいです。また新しい治療法のためカテーテル生体弁の5年以上の長期耐久性についてはまだ不明であるため、通常は比較的若い患者さん (80歳未満)は適応となりません。そのため、経カテーテル的大動脈弁置換術の適応に関しては、病院のハートチームという心臓外科・内科を中心としたチームで相談し決定されます。

図6
ハイブリッド手術室
右側にある大きなモニターに映し出されるX線透視映像をみながら手術を行う

図7
経カテーテル的大動脈弁置換 (SAPIEN XT弁、大腿動脈アプローチ法)
右図は実際のX線透視画像

図8
[左図] 大動脈弁置換術(AVR)の切開部位:胸部正中を縦切開し、その下にある胸骨を正中縦切開し心臓に到達する
[右図] 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)の切開部位:①~④のいずれかの切開部位からカテーテルを挿入する


最終更新日 2016年07月08日

ページ上部へ