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不整脈科

対象疾患・治療法
エキシマーレーザーを使用した心臓植込み装置(デバイス)のリード抜去術が可能になりました

エキシマーレーザーを使用した心臓植込み装置(デバイス)のリード抜去術が 可能になりました

ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)などの心臓植込み装置の手術件数は年々増加していますが、一方で植え込み後の合併症が問題になってきています。感染症等の合併症の治療にどうしても植込んだリードを抜去することが必要な場合があります(質問. どんな時にリード抜去が必要か?を参照)。

これまで、単純に牽引して抜去できないリードの抜去には開心術が必要で、患者様への負担が大きく、なかなか有効な治療を行うことができませんでした。

しかし、新しい技術として、レーザーを用いたリード抜去の手術が2010年に保険診療として認められました。このリード抜去の手術は、開心術を必要としません。当院でもレーザーシステムを導入し、心臓植込み装置を植込まれた患者様に対する、治療のトータルマネージメントを目指して、このリード抜去術の治療を行っています。これまで当院では約100例の治療実績があります。

リード抜去を必要としている患者様がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。 

相談窓口: デバイス担当 和田暢・石橋耕平(不整脈科)

よくある質問と答え

質問.どんな時にリード抜去が必要か?

答え. 例えば、細菌感染を合併して発赤や発熱を生じた場合、抗生剤を投与しますが、その効果は一時的であり、再発することがほとんどです。さらにペースメーカーやICDの本体だけを取り除いても感染は完治しません。リードも含め、すべての異物を抜去する必要があるのです。

とはいえ、長期間植込まれていたリードを抜去することは容易ではありません。リードの先端は心筋に癒着していますし、静脈の壁にもリードは癒着します。このため、リードを単純に牽引しても癒着のために抜去できない場合、開心術を必要とすることもありました。

また、リードが断線し新しいリードを追加する必要が生じた場合、鎖骨下静脈が既に閉塞していてリードが追加できない場合もあります。この場合にも断線したリードを抜くことができれば、抜いたスペースに新しいリードを追加することが可能となります。

図1左は、感染により皮膚が嘴開しペースメーカーとリードが露出した症例です。図1右は既にペースメーカーを植込まれた患者さまの鎖骨下静脈造影です。図1右は、右側から流れてきた静脈が、↑部(黄色)で閉塞しており、周囲の静脈を迂回して中枢側(左側)の静脈に流れ込んでいるのがわかります。


図1


質問. レーザーはどうやって癒着をはがすのか?

答え. 心臓植込み装置が植込まれている部位の皮膚を切開し、植込み装置とリードの連結をはずします。抜去しようとするリードよりも少し太いシース(筒状の装置、レーザーシースと呼ばれています)を、本体との連結をはずしたリードに被せて使用します。このレーザーシースの先端には全周性にレーザーを発射する装置がついています。癒着の強いところで、先端からレーザーを発射し、癒着組織を破壊し剥がしてゆくことが可能になります。静脈に挿入されたリードを静脈経由で抜去する手術ですので、この手術でリードが抜去できれば、開心術を回避することができます。

図2はレーザーシースのイメージ図です。抜去しようとしているリードが周りの組織と癒着(黄色い部分)しています。


図2


レーザーシースの先端から全周性にレーザー(図3青白い部分)が照射され、癒着している組織にレーザーがあたり、リード周囲の癒着した組織を破壊し、リードに沿ってレーザーシースを進めてゆくことが可能となります。


図3


質問. 本当に安全か?

答え. もちろん100%安全というものではありません。欧米では10年以上の経験がありますが、レーザーシースを使用したリード抜去術の死亡率は約1%と報告されています。リードの癒着が強い部分、とくに静脈壁が裂けて多量に出血した場合、出血を止めるため即座に開胸術に切り替える必要がありますが、救命に間に合わなかったことが最も多い死亡の原因とされています。当院では死亡例は経験していませんが、緊急で開胸術を必要とした症例を5%に経験しています。

このような危険性を承知のうえで行う手術ですので、患者様にもよく理解して手術を受けるかどうかを決定していただく必要がありますし、当院では合併症が生じた場合でも可能な限り早急に対応できるように万全の体制をとって手術に臨んでいます。内科と外科の連携はもちろんのこと、麻酔科、看護師、臨床工学技士、放射線技師といった手術に関わるすべての部門が力を合わせ、チームとして手術に取り組んでいます。

最終更新日:2021年10月08日

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