[73]子どもの心臓病
先天性心疾患の場合
国立循環器病センター
小児循環器診療部
部長 白石 公
家族みんなの笑顔と愛で
もくじ
- はじめに
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心臓のしくみ
- 先天性心疾患とは? その原因は?
- 先天性心疾患のタイプと症状
- 代表的な病気と治療
- 定期検診と検査
- 新生児期、乳幼児期の対応と注意点
- 幼稚園や学校生活での注意
- 成人になってからの問題
- おわりに
はじめに
子どもの心臓病は、大きく分けて三つのタイプがあります。
(1)生まれつき心臓の形と機能に異常のある「先天性心疾患」(2)主に乳幼児に発熱と発疹で始まり、心臓の冠動脈に病変を残す「川崎病」(3)学校検診でみつかる「不整脈」や「心筋症」などです。
お子さんが心臓病と診断されたとき、お母さん、お父さんは大変心配されると思います。どんな病気なのだろう? 原因は? 治療は? 元気になれるのか? 学校や運動は大丈夫だろうか? 子どもの心臓病の場合、お子さんの現在の状況だけでなく、一生にわたる「生活の質」が問題となってきます。
医学・医療の進歩で、幸いなことに多くの子どもの心臓病は薬や手術やカテーテルによって治療できるようになりました。治療後の「生活の質」も大変よくなり、多くの子どもたちが元気に学校生活を送っています。
このページでは子どもの心臓病のうち「先天性心疾患」の治療の最前線について説明し、ご両親やご家族が、心臓病のお子さんに日々どんな点に注意すべきか、心配りすべきかをまとめました。
心臓のしくみ
心臓の病気を解説する前に、正常な心臓はどのような構造で、どのように血液が流れているかを説明します<図1>。
心臓は四つの部屋からできています。それぞれの部屋の間には、血液が逆流しないようにするための弁があります。
全身から返ってくる酸素の少ない赤黒い静脈の血液は、まず右心房に集められ、三尖弁(さんせんべん)という大きな弁を経て右心室に入ります。右心室は力強く収縮して、血液を肺に送り出します。
肺を通って酸素をたくさん取り入れ、真っ赤になった動脈血は、いったん左心房に集められ、僧帽弁という大きな弁を通過して左心室に入ります。左心室は力強く収縮し、動脈の血液を全身の隅々まで送り出します。全身の筋肉や臓器で酸素を放出して、二酸化炭素を回収した血液は、静脈血となって再び心臓に戻ってきます。
図1 心臓の血液の流れ
先天性心疾患とは? その原因は?
生まれつき心臓の右と左を隔てている壁に穴があいていたり、弁が狭く血液の通りが悪くなっていたり、四つあるはずの心臓の部屋が二つしかなかったりするような病気、これが先天性心疾患です。小さな穴まで含めると、赤ちゃん100人に1人の割合で発症し、生まれつきの病気としては大変頻度の高いものです。
原因はなんでしょうか。
心臓は血液を一方向に送り出す単純な臓器ですが、赤ちゃんの生命がお母さんのおなかの中で宿った初めの頃に、たいへん複雑な過程を経てでき上がります。
まず胎生20日頃に心臓のもととなる1本の管ができあがり、ゆっくりと拍動を開始します。その管は徐々に赤ちゃんの体の右側に曲がるとともに、内部に血液が逆流しないようにするための弁(三尖弁、僧帽弁、肺動脈弁、大動脈弁)や、血液が混じり合わないようにするための壁(心室中隔、心房中隔)ができてきます。
さらに心臓の筋肉に血液を送る血管(冠動脈)や、心臓の電気信号を伝える細胞(刺激伝導系組織)が発達し、最終的に胎生50日頃に心臓は完成します。
この間に心臓の細胞では、遺伝子に書かれた設計図に基づいて次から次へと複雑な命令が出て、積み木でピラミッドを作るようにして心臓はできあがります。そのため赤ちゃんの遺伝子に少しでも異常があると、心臓は不完全な形となってしまいます。多くの先天性心疾患は、このような赤ちゃんの遺伝子の異常で起こると考えられています。
また、お母さん側の要因、つまりお母さんがたばこを吸ったり、お酒をたくさん飲んだり、おなかの赤ちゃんに害のある薬を服用したり、赤ちゃんに影響を及ぼす風疹などのウイルスに感染したりすると、同じように先天性心疾患が発症することがあります。
実際には遺伝子の異常も一つではなく、いくつかの異常が重なって病気が起こると考えられています。また遺伝子の異常に加え、おなかの中での赤ちゃんの環境も病気の原因になりうると考えられています。
先天性心疾患のタイプと症状
大きく分けて(1)心臓に穴があいていて大量の血液が心臓と肺の間を空回りするために心臓や肺に負担のかかる場合(非チアノーゼ性心疾患)と(2)酸素の少ない赤黒い静脈の血液が心臓の穴を通して大動脈から全身に流れるために唇や手足が紫色になる場合(チアノーゼ性心疾患)があります<図2>。
(1)の病気では、赤ちゃんは呼吸が速く苦しそうになり、汗をたくさんかき、ミルクがあまり飲めず、体重が増えない、などの症状が出てきます。風邪を引くと呼吸状態が
さらに悪くなることがあります。
(2)の病気では、体重の増加は比較的よいのですが、泣いたり、息んだり、熱を出したりしたときに全身が紫色になり、危険な状態になることがあります。
いずれの場合も、新生児期から乳児期の診断と治療が重要ですので、こまめに通院して専門医師の指示に従ってください。
図2 赤ちゃんの呼吸障害やチアノーゼ
代表的な病気と治療
次に代表的な先天性心疾患の説明をします。同じ病名であっても病気の程度と進行度合いはお子さん一人ひとり異なりますし、二つ以上の病気が重なっていることもしばしばあります。詳しい診断
内容や治療方針は、主治医の先生から聞いてください。
(1)心室中隔欠損
心臓から血液が送られるポンプの役割を果たしている左右の心室の間に穴があいている病気です<図3>。生まれてすぐは、心臓の雑音はないことが多いのですが、1週間くらいすると聴診器
で雑音が聞こえるようになります。小さい穴では1歳くらいまでに自然に閉じることがあります。
比較的大きな穴の場合、生まれて2~3か月たつと、穴を通過する血液の量が増えて心臓に負担がかかり(心不全)、肺が水っぽくなります(肺うっ血)。そのため、赤ちゃんの呼吸は速くなり、ミルクが思うように飲めなくなり、体重が増えなくなります。
こうした心不全や肺うっ血などの症状が重い場合や、肺の血管が傷んでいる兆候(肺高血圧)が検査でみられるときは、小児科で利尿剤や強心剤を出してもらい、心臓の動きを助け、肺の状態を改善するとともに1歳くらいまでに心臓外科手術を受ける必要があります。
たいていの場合、手術を無事に終えるとミルクがたくさん飲めるようになり、体重も増えて元気な体になります。学校生活や運動もほぼ普通通りできるようになります。
心室の壁の上の方に穴が空いている場合(漏斗部欠損)は、近くにある大動脈の弁が穴に吸い込まれて弁が逆流することがありますので、穴が小さくても手術が必要なことがあります。
図3 心室中隔欠損
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- (点線の部分)
(2)心房中隔欠損
左右の心房の間に穴があいている場合です<図4>。比較的大きな穴があいていても心臓の雑音や疲れやすいなどの症候はほとんどなく、小、中学校の検診で偶然に見つかることの多い病気です。
生まれてすぐに見つかる小さな穴(卵円孔(らんえんこう)開存)は、1歳くらいまでに自然に閉じることがあります。
最近は太ももの血管から入れる管(カテーテル)で、心房中隔欠損を治療することが可能になりました<図5>。折り畳み傘のような装置を穴の両側から挟み込んで閉じるという方法です。小学校中学年以上で、心房中隔の壁の真ん中に穴があいている患者さんの場合、この方法が可能です。穴が真ん中から大きくずれていたりすると、この方法では治すことができず、手術を受けなければなりません。
いずれにせよ治療後は学校生活や体育活動に支障はありません。
図4 心房中隔欠損
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- (点線の部分)
図5 心房中隔欠損のカテーテル治療
(3)肺動脈弁狭窄
肺動脈弁は右心室から肺に送られる血液が逆流するのを防いでいる弁です。生まれつきこの弁の開きが悪く、右心室が強い圧力をかけないと肺に十分血液を送れないのが、この病気です<図6>。中等度以上の狭窄がある場合、治療の対象になります。
最近は管(カテーテル)の先に付けた風船を膨らませて、狭い弁を広げる治療(バルーンカテーテルによる「肺動脈弁形成術」)が行われています<図7>。ただし、弁そのものが極端に小さい場合や、弁の上下に狭い部分がある場合は手術で治す必要があります。
図6 肺動脈弁狭窄
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- (点線の部分)
図7 バルーンカテーテルによる肺動脈弁裂開手術
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- (矢印の部分がバルーンカテーテル)
(4)動脈管開存
動脈管は、大動脈と肺動脈の間を結ぶバイパス役の血管で、赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる間には、血液の通り道として大変重要です。生まれて間もなく不要になり自然に閉じるのですが、閉じないとこの管を通してたくさんの血液が心臓と肺の間を空回りします<図8>。
管が小さなものでは症状はなく、自然に閉じることもあります。しかし太い動脈管開存で呼吸が早く体重が増えない場合には、利尿剤を処方したり外科手術で治療したりします。
症状が軽く、それほど太くない動脈管開存のお子さんは、2歳以降にカテーテル(コイル閉鎖)で治療することができます<図9>。いずれの場合も治療後は運動や学校生活に支障はありません。
図8 動脈管開存
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- (点線の部分)
図9 動脈管開存のカテーテル治療(コイル塞栓術)
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- カテーテルの先端に取り付けたコイルで開存部をふさぐ
(5)ファロー四徴症
右心室の出口から肺動脈にかけて細く(肺動脈狭窄(きょうさく))、心室の壁に大きな穴(心室中隔欠損)があり、大動脈が心室の壁に馬乗りのような状態になっており(大動脈騎乗)、その結果、右心室に負担がかかって壁が厚くなる(右室肥大)という病気です<図10>。
酸素の少ない静脈血が全身に回るため、体の酸素濃度が低くなり、唇が紫色になるチアノーゼ性心疾患の中では、最も頻度の高い病気です。生まれて間もなく心雑音が聞かれますが、生後1~2か月頃から泣いたりするとチアノーゼが見られ、だんだん目立ってきます。
チアノーゼの進行がそれほどでもなければ、小児科でβ遮断薬という薬で病状の悪化を予防し、1歳前後に外科で根治手術(狭い右心室の出口を広げて心室中隔の大きな穴を閉じる手術)を行います。
右心室の出口が極端に狭い赤ちゃんは、強く泣いたり、排便で息んだり、熱を出したときにチアノーゼがひどくなり急変すること(低酸素発作)がありますので、生まれて1~2か月頃に肺へ行く血液を増やす手術(鎖骨下動脈と肺動脈を人工血管でバイパスする手術)を行い、チアノーゼを軽くします。その後、1歳前後に同様に根治手術を行います。
手術後、チアノーゼはなくなって元気になります。多くのお子さんで学校生活や運動が可能ですが、中程度以上の肺動脈弁の狭窄や逆流が残っている場合は、激しい運動は控えた方がよいでしょう。
また、小児期には無症状であっても、成人期以降に右心室が弱ってきたり、不整脈が出たりすることがありますので、大人になっても定期検診が必要です。
図10 ファロー四徴症
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- (点線で囲んだ部分)
(6)完全大血管転移
大動脈は左心室から、肺動脈は右心室から出ますが、これらの二つの血管が逆の位置から出ている場合を完全大血管転位といいます。赤黒い静脈の血液が右心室から大動脈を経て全身へ送られるために、生まれてまもなくから著しいチアノーゼが見られます。
心室中隔欠損のない1型<図11>、心室中隔欠損のある2型、心室中隔欠損と肺動脈狭窄を伴う3型に分けられています。
1型では生後10日くらいで、2型では生後1か月前後で大動脈と肺動脈を入れ替える手術(「動脈スイッチ手術」)をします。この際、心臓に血液を送る冠動脈を新しい大動脈の根元に付けかえる必要があります。
手術後はチアノーゼがなくなり、発育も良好となります。術後経過が順調なお子さんでは、学校生活や運動体育に大きな支障はありません。
ただしこの「動脈スイッチ術」ではなく、以前行われていた「心房間血流転換術」(マスタード手術、セニング手術)を受けた患者さんでは、構造的に弱い右心室から全身に血液が送られるために、手術後に不整脈や弁逆流が起こることがあり、大人になっても定期検診が必要です。
図11 完全大血管転移1型
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- (点線で囲んだ部分)
(7)単心室、三尖弁閉鎖、肺動脈閉鎖、左心低形成
いずれも、十分に機能する心室が一つしかない重い心臓病です。
- 1)単心室
- 左右あるうちのどちらか一方の心室が十分に大きくならなかった場合をこう呼びます<図12>。生まれつき内臓の左右の区別がつかない内臓錯位(脾臓(ひぞう)のない「無脾症」も含まれます)のお子さんにしばしば見られます。通常、心房も一つで、心房と心室の間には一つの大きな弁が見られます。肺動脈と大動脈が入れ替わったり、肺動脈が閉じたりするなど、大血管の異常もよく見られます。
- 2)三尖弁閉鎖
- 右心房と右心室の間の三尖弁が閉じているために右心室が大きくならず、ほとんど左心室の単心室の場合をこう呼びます。同じように肺動脈と大動脈に異常を伴うことが多いです。
- 3)肺動脈閉鎖
- 肺動脈が生まれつき閉じているために、右心室が小さくなってしまった病気です。左心室のみで、全身と動脈管を通って肺に血液が送られることになります。
- 4)左心低形成
- 左心房と左心室の間の僧帽弁、左心室の出口にある大動脈弁の両方が極端に狭いか、閉じているために、左心室がほとんどない右心室の単心室状態をこう呼びます。この病気は全身に血液を送り出す大動脈が細くなっており、外科治療を困難にしています。
1)から4)のいずれの病気も一度の手術で治すことはできません。一度目の手術では、肺への血液が足りない場合、肺動脈へのバイパス血管を作ったり、肺への血液が多すぎる場合には肺動脈を少し細くしたりします。左心低形成では「ノーウッド手術」という方法で新しい太い大動脈を作ります。
次に、上半身の静脈の血液を肺へ直接に流す「両方向性グレン手術」を行います。三度目の手術として残った下半身の血液を肺へ直接流す「フォンタン手術」を行います。
こうして段階的な手術が終わると、チアノーゼはなくなり、お子さんは元気になります。ただし左心低形成では、最初の「ノーウッド手術」が大変複雑で難しい手術ですので、現在でも手術を無事に乗り越えるお子さんは限られています。
これらの疾患では、心臓から血液を送り出す心室が一つしかなく、多くの患者さんでは構造的に弱い右心室から全身に血液が送られます。学校生活には大きな支障はなく、軽い体育活動はできますが、息が切れるような激しい運動は控えた方がよいでしょう。
また、フォンタン手術後のお子さんでは、静脈からゆっくりとした血液が肺に直接流れますので、血液が固まる血栓症が起こりやすくなります。そのため血液を固まりにくくする薬、心臓を保護する薬、利尿薬などを飲み続ける必要があります。
また、学校に通っている間は元気であっても、大人になると不整脈や弁の逆流をきっかけに心臓の動きが弱まることがあります。心臓検査を定期的に受けましょう。
図12 単心室
定期検診と検査
最近は、妊婦検診で行われる超音波検査でおなかの中の赤ちゃんの心臓の様子もある程度分かるようになってきました。
生まれる前に病気が分かると、出産前にお母さんが心臓の専門病院に転院したり、生まれてすぐに必要になる薬や治療の準備をすることができます。
赤ちゃんが先天性の心臓病だと分かれば、どの疾患も最初の診断と治療方針の決定が重要です。小児心臓の専門医のいる病院に通院し、心電図、胸部レントゲン、心エコーなどの検査を受けましょう。また、手術を受ける前には入院して心臓カテーテル検査が必要です。
この検査では、お子さんが麻酔で寝ている間にカテーテルを心臓の各部屋まで入れて血圧や酸素の濃度を測り、造影剤を管の先から吹き出して心臓内の血液の流れを動画として撮影します。この結果から、心臓のどこに、どれくらいの穴があいているのかなどを判断します。
病気は一人ひとり微妙に違いますので、多くの先天性心疾患で手術前にカテーテル検査が必要です。最近は一部の疾患で、断層心エコー検査やマルチスライスCTやMRI検査を併用して、カテーテル検査なしで手術を行うこともできるようになってきました。
新生児期、乳幼児期の対応と注意点
お子さんが心臓病だと告げられた時のお父さんお母さんの驚きと不安は大変なものです。しかし、すでに述べましたように、子どもの心臓病の診断と治療技術は目覚ましく進歩し、多くの赤ちゃんの心臓病を治療することができるようになりました。
一番大変なのは赤ちゃん本人ですので、「この子を守り、助けてあげるのは私たちなのだ」と気持ちを強く持ち、赤ちゃんには最高の笑顔で接し、安心させることが大切です。主治医の先生や看護師さんの説明をよく聞いて納得し、家族みんなで赤ちゃんを守ってあげましょう。
次に、日々ぜひ心がけてほしい一般的な注意を挙げておきます。
- 心臓病の赤ちゃんはミルクを飲むことが重労働となり、息を切らせることがあります。ミルクは一回の量をやや少ない目にし、こまめにあげるのも一つの手でしょう。
- チアノーゼのあるなしにかかわらず、赤ちゃんの状態が急に悪くなる原因の一つに、「風邪」によるせきや発熱があります。病状が落ち着くまでは、人ごみや子どもたちの多い保育所などに連れて行くのはできるだけ控えましょう。
- 心臓病のお子さんは、多かれ少なかれ全身への血液の流れがよくありません。手足が冷えるようなことは避けてください。
- 心室中隔欠損などで心不全の状態にあるお子さんでは、たくさん汗をかきます。体が冷えたり風邪を引いたりしないよう、汗をかいていたら、こまめに肌着をかえてあげてください。
- 主治医から処方された薬はきちんと飲ませましょう。ミルクの前に口に含ませたり、少量のミルクに溶いて先にあげたりして、薬が残らないように注意しましょう。
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心臓が悪い子は泣かせてはいけないと言われていますが、通常はある程度泣かせても問題はありません。おなかがすいたときや機嫌が悪いときに泣くのは、赤ちゃんの自己主張であり、運動でもあります。
ただし、ファロー四徴症などでチアノーゼが強い赤ちゃんでは、長い間大泣きした時や、排便で息んだ際に状態が悪くなる(低酸素発作)ことがあります。必要以上に長い間泣かせないようにすることや、普段から便秘にならないようにする注意も重要です。
- 予防接種は、手術を前提としない軽い心疾患の場合は、積極的に受けてよいのです。1か月以内に手術が控えているといった場合は、ワクチンなどの予防接種は控え、手術が終わって落ち着いてから受けるようにしましょう。
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ただし、手術終了後、しばらくは体の抵抗力が落ちますので、一定期間おいてから予防接種を受けるようにしましょう。どれくらいの期間をおくかは通院中の医師に確かめてください。
最近では、重い心臓病のお子さんにRSウィルスと呼ばれる冬の風邪に対する予防接種(シナジス)を受けることが可能になりました。2歳までの冬の間に毎月受けるのですが、お子さんが接種の対象となるかどうかは主治医に尋ねてください。
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心臓病のお子さんの多くは、大きな手術を受けて入院期間が長くなり、発育(体重の増加)が遅れがちになります。手術後しばらくは、焦らずにゆっくりと体重の増加と成長を待ちましょう。
また同じ理由で、首の座り、おすわり、一人歩きなどの発達も遅れる傾向にあります。明らかに発達の遅れがみられる場合には、小児神経の専門家に診てもらい、発達訓練を受けることもあります。
幼稚園や学校生活での注意
連絡を緊密に
幼稚園や小学校に通うころになると、病状の落ち着いたお子さんが多いと思います。生活指導の内容は病気の種類や術後の状態で異なります。主治医の意見をよく聞き、また幼稚園や学校の担任や養護の先生とよく連絡を取り、楽しい幼稚園・学校生活が送れるように配慮しましょう。
特別扱いはしない
心臓の手術を受けたからといって、家庭や学校で特別扱いしたり、本人がそのことに甘えてしまったりすることがないようにする注意が必要です。
手術後で薬を飲んでいるお子さんでも、小学校の低学年までは無理をしない範囲で体育ができることがほとんどです。遠足も疲れない範囲であれば参加可能なことが多く、主治医と相談して積極的に学校行事に参加させてあげましょう。
ただし、小学校高学年や中学生になると、体育やクラブ活動で運動を無理強いされることがありますので、心臓に問題を残しているお子さんではある程度の運動制限が必要になってきます。
肥満の害
心臓病のお子さんで運動が制限されているからといって、運動不足から肥満になるのは最もいけないことです。肥満は心臓に大きな負担をかけます。(1)規則正しい生活(2)適切な食生活(3)適度な運動が、将来大人になっても健康な心臓を維持するために重要です。
成人になってからの問題
最近は、複雑な心臓手術を無事に乗り越え、成人になられた先天性心疾患の患者さんが増えてきました。かつては赤ちゃんの心臓を手術することができなかったのですから、大きな前進です。
多くの患者さんは元気に日常生活や社会生活を送っておられます。しかし、一部の複雑な病気の患者さんでは、大人になって入院退院を繰り返したり、新たな心臓手術が必要となったり、ペースメーカーを入れ替えたりすることがあります。
最近分かってきたことですが、先天性心疾患の患者さんが大人になると新たな問題が加わることがあります。
肥満や高血圧は弱い心臓に新たな負担をかけることになります。正しい食生活や体調に応じた適度な運動を行ってください。
女性では、妊娠した際にお母さんの心臓に大きな負担がかかります。妊娠中は心臓の機能を注意深く管理する必要があります。強いチアノーゼのある患者さん、肺高血圧のために手術ができない患者さん(アイゼンメンガー症候群)、フォンタン手術後で心機能の悪い患者さんなどでは、妊娠出産は避けるべきとされています。
また心臓の動きが悪い一部の患者さんでは、静脈に血栓ができたり、肝臓や腎臓が悪くなったり、胃腸から蛋白が漏れるなど合併症が出ることがあります。そのために複雑な外科治療を受けた患者さんでは、5年、10年、15年後など、ある一定期間ごとにカテーテル検査を行って、血液の流れに支障が出ていないかどうか詳しく検査する必要があります。
おわりに
先天性心疾患の代表的な病気を説明し、これらのかなりが治るようになったことを説明しました。大変すばらしいことです。
一方で、救命できない病気がまだあること、手術が成功しても病変が残ることがあること、大人になり新たな問題が生じることなど、解決しなければならないことがたくさんあるのも事実です。
生まれつきの心臓病を患うお子さんが、子どもの時期だけでなく、大人になっても元気ですばらしい生活を送っていただくには、ご家族と周囲の人たちの理解と協力が欠かせません。このページがそのガイドになるのを願っています。
私達も日常の診療を向上させるとともに、新しい診断法や治療法の開発に向けて努力を重ねたいと思っています。
[更新日: 2009年10月31日]

