[70]もやもや病って?
国立循環器病センター
脳神経外科
医師 大川 将和
医長 高橋 淳
変だと思ったら検診を
もくじ
- あたまの血管
- もやもや病とは
- この病気の頻度
- 症状は?
- 大人と子どもで、もやもや病はどう違う
- もやもや病が見つかったら?
- 治療法は?
- 脳出血はどうするのか?
- 手術に危険はないのでしょうか?
- 遺伝するのか?
- この病気は特定疾患です
- 日常生活で気をつけることは
- 最後に
あたまの血管
もやもや病がどんな病気かを理解するために、まず、頭(脳)の血管がどうなっているか見てみましょう。
<図1>をご覧ください。脳に栄養を与える太い血管は、首の前後左右に1本ずつ計4本あります。前側にあるのが内頚(ないけい)動脈、後ろ側にあるのが椎骨(ついこつ)動脈といい、それが左右一対ずつで4本になります。
内頚動脈は頭の中で2本に分かれます(前大脳動脈と中大脳動脈)。椎骨動脈は途中で1本の脳底動脈になり、そのあと、やはり2本に分かれて、左右の後大脳動脈になります。
前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈は左右一対ずつあり、それぞれ大脳の前、真ん中、後ろに栄養を与えています。これらの血管は、先の方に行くとさらに枝分かれして脳全体に行きわたります。<図2>に、脳のどの部分がどんな機能を担っているかを示しました。これらの機能は、頭に栄養を与える4本の太い血管によって支えられています。
この4本の血管は、頭の骨の中でお互いにつながっており、上から見ると輪のように見えるため、発見した人の名前を取ってウィリス動脈輪といいます<図3>。お互いにつながっているのは、脳が大事な臓器なので、血が足りない状態になりにくくしていると考えられます。
図1 脳の血管
図2 脳の機能
図3 ウィリス動脈輪の模式図
もやもや病とは
脳の太い血管が細くなったり、詰まったりしてしまう病気、それがもやもや病です。ただ、太い血管のどこでもそうなるのではなく、細くなる場所、詰まる場所は決まっています。そこは内頚動脈の終末部といって、内頚動脈が前大脳動脈と中大脳動脈に分かれる場所の近くに限られます。これを前から見るとTの字をしています(図1を再度、ご覧ください)。また進行すると後大脳動脈も細くなることがあります。
これらの血管が細くなると、どうなるのでしょう? 当然、脳に流れる血液の量が減ります。血液の量が一定以上ないと、脳細胞は栄養不足で死んでしまいます。血流が足りなくなって脳細胞が死ぬことを脳梗塞(こうそく)といいます。
ただ、脳も血流が減っていくのを黙って見てはいません。脳も血流の減少に対し自衛策を講じます。一つは、脳の細い血管をいっぱいに広げて血流量を保とうとします。すでに説明しましたように、病気になるのは太い血管です。比較的細い血管は正常なので、これらの血管が広がれば、血が流れやすくなり、ある程度血流量を保つことができます。
二つめは、お隣やご近所の血管から、少し血流を譲り受けることです。血流が正常であれば、少しくらい隣に分けてあげても、あまり困ることはありません。具体的には、後大脳動脈が前大脳動脈や中大脳動脈に血液を送ったり、硬膜といって脳を包んでいる膜が脳に血液を送ったりすることがしばしばあります。この譲り受ける血行を側副(そくふく)血行といいます。
三つめは、普段はそんなに使っていない細い血管の利用です。道路で例えるなら、日々使っている国道が何らかの原因で通行止めになって、やむなく細い田んぼ道を使うようなものです。この田んぼ道を「もやもや血管」<図4>といいます。つまり、もやもや血管の元は見えないくらい細い正常な血管で、流れている血液の量も少ないものです。しかし、もやもや病では、この田んぼ道に普段は通らないような車も通り、交通量が増えて(つまり血流量が増えて)見えるようになるのです<図5>。しかも田んぼ道なので入り組んでおり、脳血管造影検査では、たばこの煙のようなもやもやした感じに見えるため「もやもや血管」と名づけられました。これが「もやもや病」の名前の由来です。
もやもや血管は悪者ではなく、足りない血流を補うために出現しているのです。しかし、普段あまり車の通らない道ですから混雑すると事故が起こりやすくなります。この「事故」は、脳出血に相当します。いつもより多くの血流が細い血管に流れ込んで負担がかかり、ついには破れて出血することがあるのです。
図4 もやもや血管(脳血管造影)
図5 国道工事で田んぼ道へ。もやもや病による血流不足を補うため細い血管が使われるのは、この光景に似ている
この病気の頻度
もやもや病は欧米人よりもアジア人に約10倍多く、とくに日本、韓国に多いようです。2003年の調査では、患者数は日本全国で約7500名と推定されています。性別では女性が男性の1.8倍多く見つかっています。最近はMRI(あとで説明します)が比較的簡単に撮れるようになったので、主に大人で、無症状で見つかる人も増えているようです。
症状は?
どんな症状が出るのでしょうか。すでに触れましたが、症状の出方には2種類あり、(1)「脳に血流が足りないために起こる症状」と(2)「もやもや血管が長期間の負担に耐えられずに破れ、脳出血を起こすことによる症状」があります。(1)を虚血型、(2)を出血型といいます。
虚血型の場合
血流が足りない虚血型は、足りない場所によって症状が異なります。例えば、右の大脳の真ん中辺りの血が足りなければ、左手や左足がしびれたり、動かなくなったりします。左の前の方では、急にしゃべることができなくなったりします。それぞれの症状は、血が足りなくて困っている場所が担っている機能を反映しています<図2>。
また、脳梗塞になれば後遺症としてそれらが残ってしまうことが多いのですが、症状が出たのに数分から数十分で完全に治ってしまうことがあります。これを一過性脳虚血発作と呼び、いわば「脳梗塞が起こりそうだ」という警告のサインです。このサインは、今後脳梗塞が起こる可能性があることを表していますので、何らかの治療を必要とする場合が多いのです。
熱いもの、例えばラーメンやうどんをフーフーと吹きながら食べた時に一時的な手足の脱力が起こることがあります。これは、もやもや病の典型的な症状として有名です<図6>。
熱いものをフーフー吹き続けると、たくさん呼吸をした時と同じ状態になり、体の中の炭酸ガス(二酸化炭素)が減ります。炭酸ガスは脳の血管を広げる作用があるので、これが減ると脳の血管が少し細くなり、警告症状が出やすくなるのです。
体内の炭酸ガスを減らす行動には、熱いものを冷ます時のほか、激しい運動後や、音楽のリコーダーや鍵盤ハーモニカを吹いたときなどがあります。小さい子供では激しく泣き続けても炭酸ガスが減ります。
また、もやもや病で、後大脳動脈という脳の後ろに行く血管が細くなることがあります。脳の後ろは後頭葉という部分で、ここは目で見た情報を処理する場所です。そこに血の足りない警告のサインが出ると、一時的に物がゆがんで見えたり、見えにくくなったり、色がおかしく見えたりします。
図6 フーフー吹き続けると手足の脱力が起きることも
出血型の場合
次に出血を起こす出血型を説明します。こちらは突然、頭痛や意識障害が起こります。血が足りないときのような警告症状はありません。
脳出血は、多くの場合、脳梗塞を起こした時より重症になり、命に危険が及ぶこともあります。また、出血が幸い軽くすんだとしても再出血する可能性があります。確率は年間十数%といわれています。多くの場合、2回目の出血の方が1回目の出血よりひどくなります。あとで説明しますが、出血を起こすタイプは大多数が大人で、小児の出血はまれです。
また頭痛発作もしばしば見られます。もやもや病による頭痛は特徴的で、朝起床時に激しい頭痛があり、起きることができません。嘔吐(おうと)をすることもありますが、半日もたつと自然に治りケロッとしていることがほとんどです。この頭痛のメカニズムは分かっていませんが、痙攣(けいれん)を止める薬が効くことがあります。
他に、痙攣や舞踏病などの不随意運動を生じる人もいますし、もやもや病であっても無症状の方もいます。
大人と子どもで、もやもや病はどう違う
もやもや病はどの年齢でも見つかりますが5~10歳と40歳前後にピークがあります。どうしてそんな年齢分布になるのか分かっていませんが、大人と子どもでは病気の特徴が少し違っています。
一つは発症の仕方です。子どもでは脳出血で発症するケースがほとんどないのに、大人では半数が脳出血で発症します。もう一つは、子どもでは病状がどんどん進行することが多いのに、大人ではあまり進行しない例があります。ですから、治療を考えるうえで発症の年齢はとても重要です。
子どもは、多くの場合、進行しますし、脳が発達段階で必要な血の量が多いと考えられるので、ある程度、脳の血流が足りないときには手術が必要です。
大人ではあまり進行しない例も多いので、かなり血流が足りない状態でなければ、手術しないで様子を見る場合があります。また、大人では動脈硬化で血管が細くなってきて、あたかももやもや病のように見える人がいるので注意が必要です。
動脈硬化でもやもや病に似た状態になり、手術が必要な場合があります。この場合は手術だけでなく、コレステロールが高いとか、高血圧、糖尿病といった動脈硬化を進める病気に対しても治療が重要です。
もやもや病が見つかったら?
すでに説明したような症状があって、この病気が疑われたら、病院で検査を受け、もやもや病かどうか診断してもらいましょう。診断にはカテーテル検査、もしくはMR血管造影(MRA)が必要です<図7>。
カテーテル検査は、カテーテルという細い管を手か足の動脈から入れ、その先端を首の辺りまで誘導します。そこから造影剤を流して、できた血管の影を見ます。この検査は、頭の血管がとてもよく見えますが、動脈に針を刺さなければならないので少し体への負担となります。
そこで最近はMRAを診断に使ってよいことになりました。MRIをご存知でしょうか。磁石の力を使って脳の中を見る機械ですが、その撮り方を少し変えると血管が見えるようになります。これがMRAです。痛くありませんし、体の負担にもなりません。
ただし、狭くてうるさいところに入ってじっとしていなければならないので、じっとできない子どもや狭いところが苦手な人(閉所恐怖症)では薬を使って眠ってもらう必要があります。またペースメーカーなど金属が体内に埋め込まれている場合は検査ができないことがあります。
もやもや病の診断がついた後は、手術をした方がよいかどうかが問題になります。それを確かめるため、脳の血流が足りているかどうかを調べます。血管が多少、細くなっているが、血流はまだ足りている状態では、手術は必要ありません。それを確かめるのに広く使われているのが、シングルフォトン・エミッションCT(SPECT)という検査です<図8>。
これは、まず微量の放射線を出す薬を注射します。その薬は血の流れに乗って体内を回ります。脳の血管を通る時、脳に取り込まれますが、脳の血流が多いほどたくさんの薬が取り込まれます。その薬の量を頭の外でキャッチし、脳の血流を測定するのが、この検査です。この検査で脳の血流が非常に足りない状態であれば手術が必要となります。
図7 MR血管造影
図8 SPECT
治療法は?
もやもや病の治療で、一番望ましいのは血管が細くならないようにするか、もしくは細くなった血管を元通り太くすることです。しかし、なぜ細くなるのかがまだ分からないので、今のところそういった治療法はありません。
脳血流が不足して症状が起こった患者さんには、まずアスピリンなどの「抗血小板薬」を処方します。血が固まって血栓ができるのを抑え、血管が詰まるのを防ぐ作用があり、脳梗塞が発生しにくくなります。しかし薬では脳への血流量は増えないので、脳血流不足が強い患者さんの場合、手術が必要です。
現在、最も有効とされているのは脳血管のバイパス手術です。これは外科手術によって、もともとの血管とは別の血液の流れ道を作る方法です。具体的には、頭の皮膚に行く血管や、頭の横の皮膚の下にある筋肉などから、脳に血が流れるようにします。手術方法は大きく分けて、直接バイパス術と間接バイパス術の二通りあります。
直接バイパス術
直接バイパス術は、頭の皮膚のみに栄養を与えている血管を、直接、脳の表面の血管と縫い合わせる手術です<図9>。頭の皮膚の血管は浅側頭動脈といって、耳の前のところを触るとドクドク拍動している血管です。脳の表面の血管は中大脳動脈の枝ですが、かなり末端のほうなので細くなっています。それらは径が1mmに満たず、血管同士の縫い合わせがとても細かい作業になるので手術用顕微鏡を使って手術します。特にもやもや病では受け手側の中大脳動脈の血管の壁が非常に薄くペラペラになっており、縫い合わせるには技術が必要です。
図9 直接バイパス(浅側頭動脈-中大脳動脈バイパス術)
間接バイパス術
一方、間接バイパス術は、筋肉や硬膜、血管といった血流が豊富な組織の位置をずらし、脳の表面に置きます。時間がたつと、それらと脳がくっついて、豊富な血流が脳自体にも行くようになります。これは必ずしも顕微鏡を必要としません。
それぞれの手術には長所と短所があります。直接バイパス術は、細かい作業で技術が要りますし、手術時間もかかります。しかし血管と血管を直接つなぎますので、脳の血流は早期から確実に改善します。
間接バイパス術は、手術時間が短くてすみ、比較的簡単です。しかし、脳と筋肉などがくっつき、うまく脳に血液を送ってくれるかどうかは個人差が大きく、不確実な面があります。また、脳の血流はすぐには改善せず、くっついて血を送るようになるまでに時間がかかります。
この二つはどちらがいいというわけではなく、個々の患者さんに応じて行います。小さい子どもは血管を新しく作る力が強いので、間接バイパス術でかなり血流が改善する場合が多いのですが、大人になると、間接バイパス術はあまり効かず、直接バイパス術が必要になります。
小児でも直接、間接の両バイパス術を同時に行う場合もしばしばあります。それぞれの患者さんに応じ、一番効果が上がると思われる手術をしています。
通常、もやもや病では、両側の血管が細くなるので左右の2回、手術をします。しかし、例えば、後ろの血管(後大脳動脈)が細くなったり、バイパス術をしたところから距離があって血が足りなくなったりした場合、もう一回手術が必要となります。
最初の手術は、横から見て脳の真ん中あたりで行います。その理由は、手足の運動や言語機能といった大事な機能がそのあたりに集まっているためです。
手術をして補った血流は、その周辺に行きわたりますが、遠い場所までは効果が及ばないことがあります。離れたところの血が足りない時、もしくは後から足りなくなってきてそれによる症状が起これば、時には3回目の手術をします。
何回も何回も手術するのはどうも……と、患者さんはためらいますが、血が足りないままでは、脳の発達が妨げられたり、新たに脳梗塞を起こして後遺症が残ったりする危険があります。だから、もやもや病の患者さんを多く治療している医師が「追加手術が必要」と判断した場合は、手術を積極的に考えるべきだと思います。
脳出血はどうするのか?
脳に血流が足りない状態は、これまでお話ししたバイパス手術でよくすることができます。問題は脳出血で困っている患者さんの治療です。脳出血は、血流を補うために発達したもやもや血管が長期の負担に耐えられず破れて起こると考えられており、いったん出血を起こすと何度も繰り返し、重症になる可能性があります。これを確実に食い止める方法はまだありません。
ただ以前から、脳血流不足の患者さんと同じバイパス手術をすると、再出血が起こりにくくなるのではないかと言われてきました。新しい太い血管の通り道を作ることでもやもや血管の負担が減るために、再出血が減るのかもしれません。
田んぼ道の話に戻ると、閉鎖された国道の近くに同じくらい太いバイパス道路ができて、みんながそっちを通るようになり、田んぼ道(もやもや血管)で事故が起こらなくなる、という理屈です。
子どもの時に適切なバイパス術を受けた患者さんは、大人になって出血することが非常に少ないという事実も手術の効果を示唆しています。しかし、バイパス手術の出血予防効果はまだきちんと証明されておらず、2001年から全国23の病院が協力して、本当にバイパス術で出血を減らせるのかどうかを検証する共同研究が行われています。
手術に危険はないのでしょうか?
100%安全な手術はこの世に存在しませんが、もやもや病のバイパス手術自体は、脳の深いところには触らず脳の表面で行いますから、十分な手術経験のある医師が行えば比較的安全な手術といえます。ただし、もともと血流不足で不安定な状態の脳なので、点滴を多くするなど万全の対策を講じて、手術前後に脳梗塞が起こらないよう十分に気を配ります。
直接バイパス術をした場合、今まで血があまり流れて来なかったところに急にたくさんの血が流れ込むため、しばらくはその血流の分配がうまくいかず、一時的に手足がしびれたり、言葉がしゃべれなくなったりすることがしばしばあります。これはたいてい1~2週間で治まり、後遺症を残すことはほとんどありません。
小さな子どもでは、手術のあとに痛みや不安で泣くことがあります。大泣きすると体の中の炭酸ガスが減って脳の血管が縮まり、脳梗塞を起こすことがあるので、術後、鎮静剤で眠ってもらうこともあります。
手術前に抗血小板薬を内服している場合は、少し血が止まりにくくなります。手術中は完全に血が止まっていても、術後に頭蓋骨の下や脳の表面で出血が起こることがまれにあり、脳への圧迫が進まないように外科処置が必要な場合もあります。
またバイパス手術は頭の皮膚の血管を使いますので、これがなくなった頭皮は一時的に少し血流不足となります。傷がくっつくのが遅れたり、傷が開いて縫い直しの処置が必要だったりすることが時々あります。
遺伝するのか?
もやもや病の患者さんは全国で約7500人と推定されています。うち同一家系内での発症が10%程度あります。従ってもやもや病に遺伝的な素因が関係していることは確かです。これについて研究が進められていますが、まだ遺伝形式や遺伝子の特定には至っていません。
この病気は特定疾患です
もやもや病は厚生労働省の特定疾患に指定されています。原因が不明で治療法がまだ確定しない病気で、重篤な後遺症を残す可能性が高いものを難病としています。その中で診断方法は確立しているが、患者数が少なく、国としてまとめて調査研究を行わないと原因の解明や治療法の開発がうまくいかないと考えられる疾患を「特定疾患」としています。
特定疾患に指定されているのは、もやもや病を含めて45疾患あり、治療費に公費が支出されます。
もやもや病と診断されたら、地域の保健所で届け出の用紙を受け取り、診断された病院でその用紙に記入してもらいます。診断の根拠となったMRAまたは血管造影写真とその書類を保健所に提出し、都道府県の審査で認定されると、補助が受けられます。
この調査の期限は1年間なので、1年ごとに更新手続きが必要です。
日常生活で気をつけることは
手術が終わり、十分脳血流が改善した場合、生活上の大きな制限はありません。子どもの場合、長期間にわたって学校の体育や音楽を禁止するのは将来を考えてもあまりよくないことです。治療後はほとんどの場合、体育やリコーダーなども徐々に始めてもらいます。
多くの例で、やがて水泳や長距離走も可能となります。頭の手術をしていますので、頭に強い衝撃を受けやすいスポーツ、例えばサッカーのヘディングやボクシングなどは当面避けたほうがよいでしょう。
スポーツをする際に適度の水分補給は必須です<図10>。高度の脱水状態になると血が固まりやすくなって、たとえ手術をしていても脳梗塞を起こすことがあります。
学生の運動部活動では自分だけが水を飲むことはためらいがちですが、体のことを考えると、そんなことを言ってはいられません。保護者の方は顧問の先生に事情を伝え、部活動中の水分補給について了承を得ておくのがよいと思います。
大人で好ましくないのは、たばこです。たばこの成分は脳の血管を収縮させますので、全くよいことがありません。
お酒は、飲みすぎなければ可能です。しかし、お酒は利尿作用があるので、お酒だけたくさん飲むと脱水になりやすくなります。飲みすぎの翌朝のどがカラカラになっていることがありませんか。お酒を飲む時には、お茶やソフトドリンクも一緒に飲む方がよいのです。過度の飲酒は、いずれにしてもよくありません。
あと、サウナは意図的に脱水状態を作り出す行為ですので、避けたほうがよいと思います。
以上、述べたことは一般的な注意で、患者さん一人一人が全部できるとは限りません。人によって改善の程度が異なっていたり、あとから進行する場合もあったりするからです。やっていいこと悪いこと、行っていい時期については、必ず担当の医師とよく相談しましょう。
また、もやもや病では、後から別の血管が細くなってくることがあるので、手術がうまくいったからといって、その後、放っておくと知らないうちに脳梗塞になってしまうことがあり、注意が必要です。手術後も定期的に検査を受けてください。
図10 スポーツには必ず水分補給を
最後に
もやもや病は珍しい病気で、原因もまだはっきりしていません。この病気は日本人に多い病気で、日本の研究が世界中で一番進んでいます。
MRIなどの診断技術の普及した現在、虚血型では警告症状のうちに発見して適切に治療を受ければ、多くの場合、普通の生活を送ることができます。手術治療以外にも日頃の脱水予防に気をつけたり、発作がないか注意したり、患者さん自身の気くばりも必要となりますが、定期的に医師の診察を受けておれば、必要以上に恐れて日常生活を制限する必要はありません。
出血型は、まだ問題が残っています。治療指針が確立されるにはもう少し時間がかかりそうですが、もやもや病の治療にあたる多くの医師が加わって再出血防止のための共同研究を進めています。
[更新日: 2009年10月10日]

