[38]抗血栓療法の話
-抗血小板薬、抗凝固薬を飲んでいる方へ-
国立循環器病センター
輸血管理室
医長 宮田 茂樹
輸血管理室・薬剤部
高田 雅弘 (現 国立京都病院薬剤科)
薬は医師の指示通りに
もくじ
はじめに
循環器病の中で狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、深部静脈血栓症、肺梗塞など、体のいろいろな部分にかかわる病気があります<図1>。しかし、病気の起きた場所は違っても、これらに共通することがあります。それは「血栓」です。
この血栓が、心臓に栄養を与えている冠動脈、頭の中の脳動脈、足から血液を心臓に返す深部静脈などを詰まらせることによって、これらの疾患を引き起こします。これらの疾患を血栓症(血栓塞栓症)と総称することもあります。
ここでは医師の立場から血栓症とその仕組み、治療法などを解説し、薬剤師の立場から治療薬の服用にあたっての注意事項を説明します。
図1 おもな血栓症とその発症部位
血栓とはなにか
血栓はなぜできるのでしょうか。人間が呼吸をすると、肺で赤血球が体の中にたまった二酸化炭素を離し、酸素を手に入れます。この赤血球が動脈を通って、体の各組織に酸素を運び、代わりに二酸化炭素を受け取り、静脈を通って肺に運びます。
しかし、血管が傷つくと出血して血液が失われ、生命にかかわる可能性がありますから、血液の流出を防ぐ仕組みが働きます。これが「止血」と呼ばれるものです。
◆止血は2段階で
止血は基本的には二つの段階を経て起こります。まず、一次止血と呼ばれる機能が働きます。この中で、血液中の血小板が重要な働きをします。血小板が血管の傷ついた部分にくっつく(粘着する)ことで止血が始まります。次に血小板同士が集まって塊を作り、損傷部をふさぎます<図2>。これが一次止血です。
次にこの塊を強固にするため、血液中のもう一つ重要な因子である凝固因子が働きます。凝固因子は複雑に「カスケード」(連続する小滝の流れのようなもの)を作って、お互いに反応、制御しあって、最終的にはフィブリンという糊のようなものを作ります。
この凝固因子の反応が、血の塊を強固にし、出血を止めます。この血の塊を血栓と呼びます。血栓ができるには、血小板と凝固因子がとても重要な働きをしているのです。
◆止血に異常があるとき
血液中のこれらの因子に生まれつき異常を持っている方がおられます。血小板の働きが低下している血小板無力症、凝固因子の中で凝固第8因子(または凝固第9因子)が少ない血友病などが代表的です。これらの患者さんは血が止まりにくいという症状があります。つまり、血栓は本来、出血を止めるために重要な役割を果たしているのです。
図2 止血の過程
(1)健康な血管は血管内皮に覆われ、血栓はできない
(2)血管内皮に傷がつくと
(3)その部分に血小板がくっつく(粘着する)
(4)血小板同士が集まって塊を作り、血栓を形成する
血栓症とは
血栓が、なぜ病気を引き起こすのでしょう。人間は加齢とともに血管も元気がなくなってきます。さらに、食生活、喫煙、高血圧、糖尿病などの条件が重なると、動脈硬化が起こります。
血管の内側は、血管内皮という組織で覆われ、血栓ができない仕組みになっています。しかし、動脈硬化が起こっている部位では、血管壁にコレステロールがたまり、血管の内側を狭くするとともに、動脈硬化の部分が破れると内皮がはがれ落ち、血管が外傷で傷ついたのと同じような状態になります。傷ついた部分にしだいに血栓ができ、血液がその先に流れなくなるまで血栓が大きくなると血栓症として発症します。
血栓が血流に乗って流れ、その先の血管を詰めてしまうことがあります。これを、塞栓症と呼びます。ここまでの話は、主に動脈で血栓ができる過程です。
一方、静脈では、動脈に比べ血液の流れが遅く、血圧も弱いために、血液の流れに滞りができやすくなります。例えば、手術後に長い間ベッドに寝たままになっている場合などです。最近よく報道されるエコノミークラス症候群では、飛行機の狭い座席で長時間座ったままの状態が続くことで、血液の流れが滞り、血栓が発生します。心房細動で心臓の中での血液の流れが悪くなって血栓ができ、それが流れ出て脳梗塞が起こるのもこの例です。
このように、血栓症は動脈硬化によるものと、血液の流れが滞ることによるものがあることがおわかりいただけたと思います。では、二つの血栓症には、どんな違いがあるのでしょう。
◆「ずり応力」という抵抗力が深く関係
最近、血栓症のできる過程が、実験的に詳しくわかるようになってきました。<図3>を見てください。これは、血管内の血液の流れを示したものですが、赤血球が血管の中心部を流れ、血小板を血管壁(血管内皮)に沿って移動しています。血流は血管の中心部に近いほど速くなり、血管壁に近いほど遅くなります。また、血液にはいろいろな成分が含まれているために粘つく性質(粘度)を持っています。
この速度の違いと血液の粘っこさが血管の中で「ずり応力」という力を生みます。難しい言葉ですが、流れる血球が受ける“抵抗力”と考えてください。血管壁の近くを移動している血小板はこの抵抗力にさらされます。その抵抗力(ずり応力)が、血栓ができるのに重要な働きを担っています。
◆血栓症の違い
抵抗力(ずり応力)は、血流の速い、血圧の高い動脈で大きく、血流の遅い、血圧の低い静脈で低い傾向があります。血栓ができる場合に、この「ずり応力」が強く影響します。「ずり応力」が高いところで血栓ができるには、血小板の働きが最も重要であり、その力が低い、血流が滞っているところでは、フィブリノーゲン、フィブリンをはじめとする凝固因子の働きが活発になることが重要となります。
だから、抵抗力(ずり応力)が高くなるような動脈で、動脈硬化が主体となる血栓症では、血小板の働きを抑えることが治療と予防に必要です。静脈で血液が滞ることが主体となる血栓症では、凝固因子の働きを抑えることが必要となります。ただし、血小板と凝固因子は、お互いに影響しあって血栓を作っていますので、両方の働きをはっきりと分けることが困難な場合もあります。
図3 血小板の働きに影響を与える「ずり応力」
・血液は血管の中心部ほど流れが速い
・血液はいろいろな成分が含まれ、粘つく性質(粘度)を持っている
・血液の速さの違いと血液の粘っこさが「ずり応力」を生む
・ずり応力とは流れる血球(血小板)が受ける「抵抗力」
凝固因子と血小板
血栓症を考えるときに重要な凝固因子と血小板について説明しましょう。この点を理解していただけば、抗凝固薬、抗血小板薬をなぜ飲んでいるのか、どのようなことに気をつければよいのかがわかるからです。
◆凝固因子
凝固因子は血液中に微量含まれ、連続的に反応して、最終的に糊のような働きをするフィブリンという物質を作ります。内因系と外因系の二つの経路があり、血栓症の引き金となるには外因系が重要といわれています。
血管内皮が障害を受けると組織因子が血中に現れ、凝固第7因子と結合することで外因系の反応が始まります。そしてプロトロンビン(凝固第2因子)という物質がトロンビンに変化し、最終的にはフィブリノーゲンという物質を糊のような働きをするフィブリンに変えます。
凝固第2、7因子(他に第9、10因子)はビタミンK依存性凝固因子と呼ばれ、肝臓で生成される時にビタミンKを必要とします。抗凝固薬としてよく使われるワルファリンは、ビタミンKの働きを抑えて、血液を固まりにくくします。
◆凝固阻止因子
血液中には凝固因子の働きを抑える物質も存在し、凝固阻止因子と呼ばれています。主なものはアンチトロンビンIII、プロテインC、プロテインSなどです。これらの物質の量や働きが、生まれつき少ないか低い方もいます。そうした方々は血栓症を起こしやすく、若い人でも血栓症を発症することがあります。
また、高ホモシステイン血症、抗リン脂質抗体症候群などの場合も血栓症を起こしやすいことが知られています。プロテインCが低下している方は、ワルファリンの投与開始時(特に高用量の場合)に、一時的に逆に血栓ができやすくなる可能性がありますから、注意が必要です。
◆血小板
血小板は、赤血球の1/10の容積(直径2~3μm)しかありません<図4>。しかし、血小板の表面には血液中や血管に存在するさまざまな物質(フィブリノーゲン、フォンウィルブランド因子、コラーゲンなど)と結合する受容体と呼ばれる分子が存在し、さまざまに反応しあって血小板が刺激を受け、働きや反応が活発になります。その結果、血小板から、さらに血小板の働きを活発にする物質が放出される一方、偽足と呼ばれる足を出し、円盤状に変形して、血管の傷ついた部分にくっつき、お互いが結合しあい、血栓を作っていきます<図5>。
抗血小板薬の代表的なアスピリンは、血小板の働きが活発化するのを抑え、血栓をできにくくします。
図4 血球の種類
図5 血小板血栓ができる過程
(1)
血小板が刺激を受けると、働きや反応が活発になり、血小板からさらに血小板の働きを活発にする物質が放出される一方、「偽足」を出し円盤状に変形する
(2) さらに血小板が血管の傷ついた部分にくっつく
(3) 血小板同士が結合しあい、血栓を作る
抗凝固薬と抗血小板薬
これまでの説明から、血栓症の予防には、活発になっている凝固因子や血小板の働きを抑える薬、つまり抗凝固薬と抗血小板薬が重要だとわかっていただけたと思います。
血栓症の発生に、動脈では血小板が、静脈など血液が滞るために起こる血栓症では凝固因子の働きが重要なことから、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など動脈で起こる血栓症では、主に抗血小板薬が使われ、人工弁置換術後、心房細動、深部静脈血栓症、肺梗塞など主に血流の乱れや鬱滞による血栓症では、抗凝固薬が主に使われます。
しかし、血栓は血小板と凝固因子が複雑に反応しあってできますから、はっきり分けることは難しく、患者さんの血栓症の背景を考えて、これらの薬を使い分け、場合によっては併用もします。それぞれの薬は、出血した際、血を止めるのに必要な血栓ができる過程も抑えますので、出血しやすい、また、出血したとき止まりにくいという副作用があります。主治医の指示をよく聞き、変わったことが起こった場合は、すぐに主治医に連絡してください。
◆抗凝固薬の種類
抗凝固薬と抗血小板薬に、どのようなものがあるかについて話を進めます。まず抗凝固薬ですが、注射薬はヘパリン、低分子ヘパリン、アルガトロバンが日本では主に使用されています。これらの薬は、患者さんが重篤になった場合、急変した場合に主に入院して使われます。使用に際しては主治医の指示をよく聞いてください。
ヘパリン(低分子ヘパリン)は、皮下注射でも投与できます。経口投与可能な抗凝固薬であるワルファリンは、妊娠時に服薬すると赤ちゃんに奇形が発生する恐れがあるため、妊婦さんなどに抗凝固薬が必要な場合にはヘパリンが使われることがあります。この場合は、主治医によって決められた用量と、指示された注意を必ず守ってください。
経口投与できる抗凝固薬は現在、ワルファリンという薬しかありません。ワルファリンは、ビタミンKの働きを抑えることで、ビタミンK依存性凝固因子の働きを抑え、血液を固まりにくくします。
この薬は飲み始めてから作用が安定するまでに時間がかかること、また、人によって効き方に違いがあり、同じ人でも体調などによって効き方が変わる可能性があります。ワルファリン服用中は、どの程度効いているのかを定期的に検査しながら量を調節する必要があります。
そのために、凝固検査のプロトロンビン時間(PT)検査が主に行われます。異なる病院でも評価できるように、最近は検査結果を国際標準化プロトロンビン比(INR)で表す病院が増えています。
日本人ではINRを1.5から3.0の間でコントロールされることが多いのですが、病気の種類、患者さんの背景などを考えて、治療の適正域が決められますから、主治医の指示に従ってください。
処置、手術が必要な場合、出血の副作用が起こった場合は、服用量を減らす、服薬をいったん中止するなどの調節が必要となります。緊急にワルファリンの作用を抑えるときは、ビタミンK、プロトロンビン複合体濃縮製剤などを使う場合もあります。
◆ヘパリン起因性血小板減少症
ヘパリン起因性血小板減少症はヘパリン(低分子ヘパリン)使用の際に注意すべき副作用です。体内にヘパリンと血小板第4因子という物質の複合体に対する「抗体」ができ、血小板の数が減少します。普通、血小板の数が減少すると出血しやすくなるのですが、この病気の場合は逆に血栓症を起こしやすくなります。重篤な血栓症を引き起こす可能性がありますので、この患者さんがヘパリンをもう一度使うことは、基本的に禁忌となります。抗凝固薬が必要な患者さんは、主治医の指示に従ってください。
◆新しい経口抗凝固薬
ワルファリンは、投与量を決めるために定期的な検査が必要です。食事などの影響も受けやすく、使う際には十分な注意が必要です。このため、定期的に薬の効果を確かめることなく、一定量で使うことができる経口凝固薬の開発が進んでいます。凝固因子のトロンビンという物質の働きを抑える薬で、臨床試験が進められています。近い将来、より使いやすい抗凝固薬が出てくる可能性があります。
◆抗血小板薬の種類
現在、日本で主に使用されている抗血小板薬にはアスピリン、チクロピジン、シロスタゾールなどがあります。
アスピリンは最もよく使われている抗血小板薬です。血小板の働きを活発化するのに必要なトロンボキサンA2を作るシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを抑えて、血小板同士の結合、血小板の働きを活発にする物質の放出を抑制します。
アスピリンを使う場合は「アスピリンジレンマ」という現象に注意してください。アスピリンは血小板の働きを抑えるとともに、血管内皮細胞の中で血小板が血栓を作るのを抑える働きを持つ物質の生成を抑制する働きも示し、高い濃度では、逆に血栓をできやすくする可能性があります。従って、一日あたり75mgから150mgという低用量で使用されることが多く、その有効性が確かめられています。
チクロピジンは、血小板同士の結合を引き起こす物質である「ADP」が血小板の表面にある受容体への結合することを抑えて、血小板の働きを抑制します。欧米では一日あたり500mgが使用されますが、日本では通常200mgです。アスピリンとチクロピジンでは、血小板に対する薬の効き方が違いますので、両方を合わせて使うことで、さらに有効な抗血小板療法ができる可能性があります。
シロスタゾールは日本で開発された薬で、血小板の働きを活発にするために必要なホスホジエステラーゼを抑えて血小板の働きを抑制します。これは、薬を止めてからその効果がなくなるまでの時間が短いという利点があります。また、よく似た作用を示すジピリダモールという薬があり、低用量アスピリンと併用して用いられることもあります。
◆血栓性血小板減少性紫斑病
チクロピジンの服用時の注意点として、血栓性血小板減少性紫斑病(発熱、貧血、血小板の数の低下、精神症状、腎機能が低下するなどの症状)、無顆粒球症(病気に対する抵抗力が弱くなる)、重篤な肝障害(肝臓の機能が低下する)など重大な副作用が主に投与開始後2か月以内に発現しているとして、厚生労働省が平成11年6月、平成14年7月の2回、緊急安全性情報を出しています。
このため投与開始後2か月間は副作用の初期症状に注意し、原則として2週に1回の血液と肝臓機能の検査を行い、その後も定期的な血液検査が必要です。主治医の指示した受診日や検査日を守っていただくようお願いします。発熱、倦怠感、紫斑(出血斑)などの出血症状、食欲不振や意識障害などの症状があります。普段と違う症状に気づかれたらすぐに主治医にご連絡ください。
副作用を少なくするため、チクロピジンと同じような効果を持ち、しかも副作用が少ないクロピドグレルという薬の臨床試験が進められています。
抗血小板薬と抗凝固薬を服薬する場合の注意点
薬剤師の高田から、抗血小板薬と抗凝固薬を飲む場合の具体的な注意事項をご説明します。
抗血栓療法は、症状を改善したり病気の再発を防いだりするために重要です。医者まかせにするのではなく、よく理解して自分から積極的に治療に参加することが大切です。
1.抗凝固薬
ワルファリンの投与量は、血液凝固検査で定期的に調べたうえで決められています。服用していただく錠数も患者さんによって異なりますので、必ず指示された錠数を服用してください。服用する錠数が毎日異なることもあります。十分確認しながら服用してください。もし服用を忘れた場合は、できる限り早く服用してください。翌日まで気づかなかった時は、忘れた分は抜き、その日の分だけを指示通りに服用してください。もしそれ以上の回数を飲み忘れたり、間違えて多く飲んでしまったりした場合、なにか普段と違う症状を感じられた場合は、すぐ主治医に相談してください。
◆副作用
ワルファリンの最も頻度が高い副作用は出血です。皮膚の内出血・鼻出血・歯ぐきからの出血・傷口からの多量の出血・月経過多・血痰・血尿・血便・立ちくらみやふらつきなどの症状が出ます。特に消化管・頭蓋内・腹腔内など見えないところでの出血は、発見が遅れれば大変危険な場合があります。気がつかないうちに打撲して皮下出血していないか、歯磨きの時に出血していないかなど、いつもと違う症状がないか、自己チェックすることが大切です。出血が続く場合や多量の出血の場合は直ちに主治医と連絡をとってください。
◆一緒に服用する場合に注意が必要な薬
ワルファリンは多くの種類の薬と飲みあわせ(相互作用)が考えられます。一緒に服用した他の薬の影響でワルファリンの効果が強く現れ、出血が起こったり、反対にワルファリンの効果が弱められたりして期待する治療効果が得られないことがあります。
相互作用を起こす代表的な薬は、作用を強めるものとして抗生物質・風邪薬・解熱鎮痛剤など、作用を弱めるものとしてビタミンKの含まれる薬(骨粗鬆症治療薬の一部)などがあります。このほか抗てんかん剤・精神神経用剤・高血圧用剤・不整脈用剤・利尿剤・高脂血症用剤・消化性潰瘍用剤・ホルモン剤・ビタミン剤・痛風治療剤・糖尿病用剤・抗がん剤・アレルギー用剤などの中にはワルファリンの作用に影響を与える可能性のある薬があります。
しかしこれらの薬は、症状によっては一緒に服用していただかなければならないこともあります。その場合、主治医は相互作用も考慮したうえでワルファリンの服用量を決めますから、指示通りに服用してください。主治医から指示されている薬を患者さんの自己判断で飲むのを止めたりすることは絶対にしないでください。
ほかの病院はもちろん、かかりつけの病院でも主治医以外の医師を受診するときは、必ずワルファリンを服用していることを告げてください。町の薬局で薬を買われる場合も、ワルファリンの服用を告げて、目的の薬が相互作用を起こさないか確認してもらってから購入してください。
この場合、薬剤師のいる基準薬局をかかりつけ薬局と決めて、複数の病院を受診されているときは、すべての院外処方箋を一か所の薬局で調剤してもらうようにすれば、相互作用のチェックが確実に行われます。
◆食物・嗜好品の3つの原則
医薬品による相互作用と同様に、食品・嗜好品にもワルファリンの作用を弱めたり、強めたりするものがあります。原則として次の三つのポイントを厳守してください。
- 納豆・クロレラ・ケール青汁は禁止です。<図6>
- 緑黄色野菜はとくに制限しなくてもよいのですが、一度に大量に摂取することは避けてください。
- 偏食や大量の飲酒は避けましょう。
納豆・クロレラ・ケール青汁には大量のビタミンKが含まれることがわかっています。納豆の豆に含まれるビタミンKはそんなに多くはありませんが、ネバネバに含まれる納豆菌が摂取後72時間ぐらいまで腸内でビタミンKを合成し続けるといわれています。ですから、たとえ少量でも納豆を摂取すると結果的に多量のビタミンKを摂取したことになります。納豆は厳禁と覚えてください。
◆その他の生活上の注意
歯科を受診する場合、ワルファリンを服用していることを歯科医師に話し、場合によっては主治医と連絡をとってもらい、ワルファリンの服用量を調整しながら歯科治療を受けてください。ワルファリンは胎児に点状軟骨異栄養症などの奇形や出血による胎児死亡などの影響を及ぼすことが知られています。特に妊娠3か月までの初期はそのリスクが高いですから、妊娠に気づいてからワルファリンの服用を中止するのでは遅いのです。妊娠を望まれるときは、あらかじめ主治医・産婦人科医と相談してください。
図6 ワルファリン服薬時の禁止食品
2.抗血小板薬
代表的なアスピリンについて説明します。出血の副作用についての注意事項は、抗凝固薬とほぼ同様と考えてください。抗血小板作用は個人差があまり大きくないので、抗凝固薬のように投与量のコントロールをするための血液検査は通常は行われません。しかし、自己判断で服用しなかったり多量に服用したりはしないで、必ず主治医の指示通りに服用してください。
バファリン81という抗血小板薬を服用されている方は、薬が不足した時に市販薬のバファリンを購入して服用することは避けてください。現在9種類のバファリンが市販されていますが、大半はアセトアミノフェンという解熱鎮痛成分を中心とした薬でアスピリンは含まれていません。
バファリンAとバファリン・プラスにだけアスピリンがそれぞれ330mgと250mg含まれていますが、アスピリンには先に説明しましたように「アスピリンジレンマ」といわれる不思議な特徴があります。量が多すぎると自らの抗血小板作用を打ち消してしまいます。ですから、市販のバファリンを服用しても抗血小板作用を期待できず、場合によっては症状の増悪を招くこともあります。十分注意してください。
◆副作用について
副作用は、一般的には抗凝固薬ほど注意する必要はありません。しかし、出血傾向などの普段と違う症状がないか自己チェックすることが大切です。異常を感じられたら、すぐに主治医に連絡してください。
アスピリン喘息(アスピリンアレルギー)や胃潰瘍など消化性潰瘍のある方は、症状を悪化させる可能性があります。事前に主治医にお申し出を。
◆一緒に服用する場合に注意が必要な薬
抗血小板薬には、ワルファリンとビタミンKのような特徴的な組み合わせはありませんが、一緒に服用する薬によって効果が増減することがあります。主治医が処方した以外の薬を服用する時には同様の注意が必要です。
3.最後に
抗血栓療法に使う薬は、重篤な副作用や食生活に注意すべきポイントが多く、不安感や煩わしさを感じられるかもしれません。しかし、正しく理解し、主治医や薬剤師の指導に従って服薬を続ければ、副作用を起こすことなく、治療効果をあげることができます。また、治療に関する内容は、家族や周りの方にも知らせて協力を得るのも大切なことです。
[更新日: 2009年10月10日]
